2018.09.21
近年、日本のRPA市場が急速に成長していることは言うまでもない事実ですが、
今回のコラムでは、中国のRPA市場発展を紹介していきたいと思います。
この数年間の中国では、モバイル決済、シェア経済などを始めた
「インタネットプラス」産業が急速に発展し、
いくつかの業界から言うと世界のトップランクになっていると言っても過言ではありません。
Tencent、Baidu、アリババ、Huaweiなどの企業は
最近盛り上がっているAIとビッグデータにも力を入れています。
こんなITが好調に成長している環境のなか、RPAはどのようになっているでしょう。
本文は近年中国国内RPAに関するビッグニュースを基に、中国RPA発展の外観をみていきます。
中国南方航空(以下「南方航空」)は国営大手航空会社です。
2016年の売上は約1148億元(約1.8兆円)、運輸人数は約1.1億人でした。
近年LCCなどの格安航空の参入や燃料費上昇に伴い、コスト削減が大きい問題になっています。
そして、南方航空がRPAに目を付けました。
2018年6月前後から、その第一弾として、Ernst & Youngとコラボをし、
車内の財務システムをRPA化することを図りました。
Ernst & Youngはまず南方航空の財務業務を分析し、重要度の高い業務を180個洗いだしました。
続きまして、最もRPA化に向いている業務を13個選出し、
費用対効果で評価した上で、試験として4つの業務に絞りました。
つまり、「国内昇降費精算」、「銀行決済」、「コスト月報」と「食事費用精算」
を先行業務として開発をし、実装すると同時にその効果を検証していったのです。
具体的な業務内容は公開されていないですが、
南方航空は業務を選定した理由については推測できるでしょう。
航空会社は分社や子会社がとても多いため、財務試算や精算する際に、
各グループ会社のデータを集めて、フォーマット変換などをし、
最終的に社内の会計システムに取り込みます。
作業の量が多く、必要時間が長いです。
銀行決済、食事費用精算なども似たような特徴があります。
当然、これらの業務は費用対効果が大きく、
RPA開発も比較的にしやすいとErnst & Youngが判断したのでしょう。
そして、試験段階の結果について、Ernst & Youngが目安結果を公開して、下記表1になります:
効果は極めて大きいと言えるでしょう。
南方航空は中国航空会社の中ではRPA導入の一番手として、今後とも他の業務をRPA化する予定です。
2018年6月の「CIFI中国保険財務革新会議」では、デロイトは参加者として、
自社の金融・保険会社向けRPAソリューション「小勤人」を披露しました。
デロイトの講演では、自社がRPA導入に成長したA、B、C三社の事例を中心に説明をしました。
大手金融サービス企業A社はデロイトのRPAソリューションを利用し、
ネットバンキング突合業務を自動化しています。
内容として、RPAが毎日ネットバンキングから取引履歴をダウンロードし、
自社会計システムとの履歴を突後します。
とても単純な業務ですが、量が極めて多く、膨大な時間が使われています。
このシステムの導入により、A社グループ全体で約200人の従業員がこの業務から解放されました。
大手外資保険会社B社は近年中国での業務量が急増しているため、
契約書処理と賠償データ処理業務も多くなっています。
それを解消するために、RPAを導入しました。
RPAのメインの業務は新規契約書入力と賠償データ更新になります。
業務内容についてデロイト詳しく語っていなかったですが、
主にシステムの間の転記、または突合業務になります。
それ以外、契約書の標準用語チェックもRPAが実行し、
間違っている言葉が使われたら自動で治すことが可能になっています。
結果として、今まで従業員10名が必要となる作業はRPAが代わりに行い、
処理時間も70%短縮されました。
企業Cは中国国内大手上場保険会社であり、人事業務においてデロイトのRPAシステムを導入しました。
主に新入社員の情報確認などについてつかわれています。
例えば、
政府のサイトに身分証明書ID(マイナンバー相当なもの)により新入社員の個人情報取得や
医療保険番号により医療保険情報の取得
などです。
導入により、該当業務の効率は50%向上しました。
デロイトのRPA「小勤人」はデータ収集、入力、システム間の接続などに得意し、
さらにAIと組み合わせ、データ分析することも可能だと言われます。
アリババは中国ECサイト運営会社最大手として、近年世界中でも活躍しています。
会社が1999年設立以来、高速成長をし、2017年の売上は3.77兆元(約61兆円)に達しました。
規模が大きくなるとともに、各部署の業務量も急増しています。
対策として、2016年にアリババがRPAにたどり着き、自動化によって効率向上を図りました。
最初は問い合わせ対応(チャットボックス)ロボットを実装しました。
お客様から問い合わせがあれば一回ロボットがキーワード検索とナビの形で対応し、
対応しきれない場合従業員に振るという形でした。
実際の効果はとてもよく、アリババ傘下の各グループの各業務に普及してきました。
それが最終的に「アリクラウドRPA」(使用RPAソフトの種類は未公開)となり、
2016年から2017年の間で他社にサービス提供し始めました。
現在アリクラウドRPAはカスタマーサービス以外に、
財務、文書処理などにも対応できるようになり、汎用性の高いロボットを開発しています。
小売、IT、金融、証券以外、自社既存のネットワーク
(地方政府がアリババのクラウドソリューションを採用しているところが多い)を生かし、
政府機関に「アリクラウドRPA」を導入しています。
また、アリババは2018年に中国RPA市場規模が急成長し、60%以上の増加率と信じています。
i-SEARCH(芸賽旗)は2011年上海に設立されたITベンチャー企業です。
主にビッグデータなどのデータ分析に注力しています。
2018年1月、世界中にRPAが好調だという背景に、
i-SEARCHは「国内初のRPA総合ソリューション」とアピールポイントとし、
「iS-RPA」( i-Search Robotic Process Automation)を発表しました。
「iS-RPA」は開発言語Python3.0をベースにしたRPAソフトです。
レコーディング操作、UI情報読み取り、
デスクアプリ対応、OCRなど主流RPAソフトの機能は一通り揃っています。
中国大手コールセンターは既に「iS-RPA」に基づいたソリューションを実装しています。
従業員の電話対応時間短縮をメインの目的として、
「iS-RPA」は総合的なソリューションを提供しています。
まず、インタネットからのチャットボックス問い合わせはまずRPAナビに繋がり、
お客様の問い合わせ内容により割り振りをします。
そして人間が対応する段階になると、チャットする間にチャット内容をモニタリングをし、
特定なキーワードがチャット内容の中に現れるとRPAがそれに関連する情報を担当者に勧めます。
これにより、従業員がキーワードを検索する時間を短縮します。
また、電話対応するときもRPAによる「ワンタッチ業務」ロボットが実装され、
特定なUI操作をマウスクリックだけでバックグラウンドで実行されます。
「iS-RPA」のコールセンターソリューションは完全な「無人化」することではないですが、
問い合わせ対応の時間を平均15%短縮することができました。
中国のRPA市場は後発ではありますが、海外大手会計事務のリードやローカル企業の台頭により、
市場がどんどん拡大しています。
ざっくり分けると、中国のRPAベンダーは3種類があるように見えます:
また、今回の事例では、RPAを導入した企業のいずれも大手でした。
原因として、人件費による可能性が高いです。
近年中国の平均人件費は高くなっているとはいえ、日本に比べまだ低いです。
賃金の高い上海でも、現在の最低賃金は4万円弱/月になります。
この環境では、大きい規模でなければ、費用対効果はあまり良くない可能性もあります。
勿論、一概にはいえないですが、これは原因の一つだと考えられます。
逆に言うと、人件費が高い日本では、RPA導入がより多くの中小企業にも有効でしょう。