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医療業界におけるBPR機会とRPA活用(製薬業界)<3>

2018.06.07

今回のコラムは、前回の内容を受け、製薬業界のBPR施策における4領域のうち後半の残り2つについて説明していきます。前回コラムを参照したい方は、下記のリンクをご覧ください。

 

医療業界におけるBPR機会とRPA活用(製薬業界)<2>

 

前回コラムからの復習になりますが、BPRの施策は大別すると以下の方向性に整理できます。

  • Consolidation(集約化)
  • Simplification(簡素化)
  • Standardization(標準化)
  • Automation(自動化)

 

BPR(業務改善)の方向性

 

 

前回コラムでは、シェアードサービスやサプライヤー集約化を扱った「Consolidation」とフローや会議体の簡省力化を扱った「Simplification」を取り上げましたが、今回のコラムでは各組織/個人間でばらつきのあった業務内容を統一化する「Standardization」と、RPAを含めたITの力が発揮される「Automation」について事例を含めて詳述していきます。

 

 

Standardization(標準化)

製薬業界は、前々回コラムで述べた事業背景から、事業部ごとやローカル拠点ごとに独自の業務手順・ルールが残りやすい傾向があります。また、中途採用が多い企業では、各社員が前職の会社のやり方を引きずっており、同じ部署内であっても個人間で業務の仕方が異なることもあります。このよう事業背景から、主要な業務については企業としてSOPを始め業務マニュアルの作成の実施を徹底していることが多いと思います。ただ、このSOP/業務マニュアルで対象となるのは、企業にとってコアとなる業務であることが多く、バックオフィス業務の中でも特に微細な事務作業、例えば営業事務や購買、サプライチェーン回りについてはその業務の全てがマニュアル化されているわけではないと思います。

また、仮にグローバルで定義された業務フローであっても、実際にローカルの拠点では全く異なるフローがまかり通っているケースも散見されます。これは各国の法規制上やむを得ない場合ももちろんあり得ますが、ただ単に慣習でそのような状態のままになっている可能性もあります。グローバル展開している製薬企業については、一度グローバルSOPとローカル業務のギャップ分析をすることをお勧めします。その結果明らかとなった業務フローの違いを一つ一つ精査し、やむを得ない事象かそうでなく標準化の余地があるのかを判断していくと、大きな改善機会が見つかると思われます。

また、この標準化の取り組みは、他の領域の施策を行う上での前提条件となります。前回コラムで取り上げたシェアードサービスによる集約化施策や、後程述べるITによる自動化施策を展開するには、まず既存SOP/マニュアルの陽が当たっていない隠れた業務までしっかりと分析・整理する必要があります。そして、現状の業務のばらつき度合いを詳らかにし、会社として目指すべき標準フローを定める「地ならし」が必要です。その工程を経なければ、仮にシェアードサービスの部門を立ち上げたとしても効率化は図れませんし、RPAITシステムを導入したとしても一部の人しか使えない残念な結果となります。

更に、この標準化の取り組みを発展させるとベストプラクティスの適用まで視野に入ります。先ほどまでの「標準化」は各組織/個人間の「ばらつきを抑える」ことに焦点を当てていましたが、ベストプラクティスの場合、「業務効率/生産性の底上げを図る」ことが主目的となります。これはバックオフィス業務であれば、例えばエクセルのマクロや計算式に強い社員が作成した帳票を共有することや、会議報告用のパワーポイントフォーマットを優れた社員の方のものに統一する等、色々とアイデアはでてくるかと思います。例えば、各医療機関の製剤需要予測において、過去の実績記録を活用し精度の高い予測をしている社員の知見を形式知化して、他の社員にも敷衍させるといったケースが挙げられます。そうすることで、全社的により少ない在庫で、効率の良い製剤供給を狙えます。

 

このような標準化の取り組みですが、具体的な施策としては、一般的には業務マニュアル/SOPの作成・再設計と周知のためのトレーニングセッションの実施が行われます。但し、例え新しい業務マニュアルを作ったとしてもそれを短期間で広範囲の社員に普及させるのは至難の技であることは、実際にこの分野の業務に携わったことのある方なら皆感じる事でしょう。

そこで、半ば標準フローを強制させる仕組みとして、ワークフローシステムを使うという手があります。医療業界では主要でクリティカルな業務については各社既に頑健たるワークフローシステムはお持ちだと思いますが、周辺の事務作業についてはフォローしきれていないケースもあるかと思います。そのような周辺業務こそが手順・ルールのばらつきを生む温床となっています。それを半ば強制的に標準化してしまう為には、申請・承認プロセスをワークフローシステムで一元化することが求められます。例外は基本的には認めない方針をとります。業務上のコミュニケーションにおいて、口頭やメールだけでのやりとりを残してしまうと、自然と例外対応に追われることになります。その誘惑を抑え、標準化を徹底するにはシステムに責任を負わせるのが一番です。ワークフローシステムを導入することで、事業部側に対しても「そういうシステムになってしまったので融通が利かなくなった」と言う弁明が使えます。このような標準化の取り組みは必ずユーザーサイドで反発が出てくるものですから、予めその標準化初期の不具合・負担増加の責をシステムに押し付ける事は、卑怯かもしれませんが円滑に標準化を進める上ではクレバーなやり方ではあります。

また、ワークフローシステムの導入と並行して、使用する帳票/書類を、標準フォーマットに統一することも非常に有効です。特にエクセル帳票においては後で集計しやすい形に予め設計しておくことが、後工程の業務負荷を軽減する上で重要になってきます。エクセルの操作技術は、社員のリテラシー度合いによって大きく変わります。端的なケースですが、Vlookupを知っていれば、一瞬でできる作業であっても、習熟していないが故に、不毛なコピー&ペーストをしている社員も少なくありません。社内ベストプラクティスとして、効率性/生産性の高いエクセル作りをしている社員の帳票を、皆で共有していく観点が重要になります

 

 

 

Automation (自動化)

自動化の取り組みについては、主にITシステム・ツールが活躍する領域です。近年、多くの企業で導入が進められているRPAもこの分野に入る取り組みとなっています。このコラムではITシステムに括られる一般的なパッケージソフトウェアやSaaS型サービスおよび自社専用にスクラッチ開発したシステムについては割愛し、主にRPAによって、製薬企業のどのような業務分野で自動化が進められるかを述べていきたいと思います。

まず、これは製薬業界に限らずヘルスケア業界全般の事例となりますが、UiPATHでこの業界への取り組みが紹介されています。

 

UiPATHUse Cases for Healthcare Automation: Revenue Cycle Management

 

 

このUiPATHからのRPA事例紹介によると、まず医療機関側での活用事例として「日次のレポーティング/モニタリング業務」といった典型的なバックオフィス業務の自動化による効率化がある一方、収益や患者満足度への貢献もできることを謳っています

例えば、RPAを使うことで、患者の診察予約を滞りなく受付け、かつ現状の医師リソースを最大限活かすことで収益の改善が見込めると述べています。RPAロボットにより、診察受付の電子データをいち早く院内の担当者に伝え、コールセンターと患者の間の仲介業務の一部を自動化・迅速化できたようです。

また、患者退院後における経過観察期間において、対患者とのコミュニケーションをRPAロボットにより代替するアイデアも挙げられています。慢性疾患の場合、退院後の経過観察、つまり患者の状態モニタリングは欠かせません。患者が退院後も定期的に投薬を続けているか、診察訪問の予約を入れているか等について、ロボットがタイムリーに患者に対してリマインド連絡をする事例が紹介されています。

 

こちらの上記UiPATHの記事は、「医療機関側」でのRPA活用事例になりましたが、同様のアイデアは「製薬業企業側」にも敷衍できるのではないでしょうか。例えば、病院側からの注文受付をする担当者様を支援する形で、受注データ(EDI)を迅速に在庫やデリバリーシステムに繋げられるようにする。または、対病院に対して、必要となる定期的なコミュニケーション/リマインド業務をRPAロボットで代用する等考えられます。

もちろん、これらの「収益増加」や「顧客満足度向上」を目指したRPAの活用は発展系であり、RPAの基本用途はあくまでも「効率化」だとは思います。先のコラムでも述べました通り、製薬業界は社内に複数かつ非連携のシステムが混在しているケースが多く、「システムtoシステム」や「システムtoエクセル」といった領域でのRPA活用がまず事例としては圧倒的主流になっています。ただ、これらの業務効率化を狙った活動と同時に、サプライチェーン周りを改善することでリードタイムを減らすることで収益増加を狙うことや、他競合と比べてより手厚い病院フォローをすることで満足度の向上を狙うといった使い方も同時に検討する価値は大いにありうるのではないでしょうか。

 

 

 

以上で製薬業界におけるBPRおよびRPA機会の事例紹介は終わりになります。今回のコラムでは、前回の続きということで製薬業界におけるBPR主要4方針のうちStandardization(標準化)とAutomation(自動化)の2つを取り上げました。特にこの「自動化」の分野では、RPAという新しい技術の台頭により、通常のシステム開発に比べて低コストでかつクイック・ウィンな取り組みが可能となりました。この技術により、今まで「システム開発するには些末すぎて手作業で行っていた作業」も自動化の恩恵に浴することができるようになります。医療業界に従事されている方は、今一度この新しいRPAという技術について学び、自社の業務の何に適用できるか一度考察されてみてはいかがでしょうか。

 

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