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医療業界におけるBPR機会とRPA活用(製薬業界)<2>

2018.06.06

今回のコラムは、前回の内容を受け、主に製薬業界についてのBPR施策の方向性を事例と一緒に挙げていこうと思います。前回コラムについては下記のリンクをご参照ください。

 

医療業界におけるBPR機会とRPA活用(製薬業界)<1>

 

まず概略から入りますが、業務改善、つまりBPRの施策というものは方向性として以下4つのカテゴリーに集約されます。近年話題になっているRPAは、この中の「自動化」の一施策という位置づけになります。本コラムではこの4つのうち最初の2つについて、具体的な取り組みを順次述べていこうと思います。

BPR(業務改善)の方向性

 

Consolidation(集約化)
前回のコラムでも述べた通り、製薬業界は各事業部の独立性が尊重されやすい傾向にあります。従って、事業部ごとに事務作業をするスタッフを雇用しており、それぞれ独自の業務手順・ルールを敷いているケースが散見されます。そこで、ヘルスケアの業界でBPRをする場合、まず効果的な施策として出て来るのが社内シェアードサービス部門の立ち上げになります。シェアードサービスの概念は古くからあるものですが、要約すると、「各事業部の類似の定型業務を引き剥がし、物理的に一か所に集まっている部門に集約させる」ことにあります。このシェアードサービスの仕方として、事業部側との連携の必要性から、シェアードサービス要員を個々バラバラに事業部フロアに張り付かせるケースもありますが、それはあまりお勧めしません。効率化をまず突き詰めたいのであれば、半ば強制的にシェアードサービス部門を別フロアの一か所に集めるべきです。これにより、今まで馴れ合いで個人間の関係値で行っていた仕事に標準化のメスが入り、かつシェアードサービス要員内でのベストプラクティスの共有(例えばエクセルのマクロによる自動化など)が行われやすくなります。おそらく、それでもどうしても事業部側の近くですべき業務というのが残るかもしれません。そうであれば、一旦集約した後に振り返りを行い、事業部側に業務を戻すか、例外的にシェアードサービス要員を派遣する手立てを講じます。繰り返しになりますが、まず大事なのは、業務整理を行った後、半ば強制的に物理的に一か所にシェアードサービス要員を集めてしまうことです。効果を狙うのであれば、これに尽きます。
それでは、具体的にどのような業務が製薬業界においてシェアードサービス化の対象となるでしょうか。まず一つ挙げられるのは諸々のドキュメンテーション業務です。社内システムの情報から行政への提出資料のフォーマットに合わせて加工する作業であったり、あるシステムから別システムへのデータ加工も入ります。また、グローバル展開している製薬会社の場合、翻訳のドラフト作成業務も入ってくるかもしれません。このような定型業務の多くが実は、各事業部のコア人材の方々、つまり単価の高い方々が行っていたりしています。最終チェックは事業部側に残る可能性はありますが、比較的ノンコアな定型のドキュメンテーション業務は正にシェアードサービス化するのに打ってつけであると言えます。
次にシェアードサービス化の候補としてあるのは、主要取引先との窓口業務です。SMOやCRO、そして各種ベンダーについては既に窓口が集約されている所が多いと思いますが、特に対医療機関についてはまだ事業部側が主導しているケースが多いかと思います。確かに、事業部ごとに対象疾病が異なるため、同じ医療機関であっても診療科や医師は異なり、おいそれと集約化できる領域では無いと思われるかもしれません。しかし、肝となるコミュニケーションが終わった後の、事務的な契約書手続き等は、集約化できると思われます。このような医療機関との窓口業務については、事業部ごとにバラバラにコミュニケーションをとるのではなく、重要アカウントとなる病院ごとに担当者を明確にすべきです。そのように医療機関ごとに担当を集約させてしまったほうが、手続き漏れや記入漏れ、そして個別医療機関ごとの特殊性も配慮も徹底できる等、医療機関側からの信用も増すことも期待できるのです。

集約化の観点で次に挙げられるのは、サプライヤー管理の領域です。製薬会社では、SMOやCROだけでなく様々な協力会社を必要とします。梱包、在庫保管や割付、そして配送等のロジ回りもあり、また投薬に使う機器、什器等多岐に渡ります。それらのサプライヤーが事業部個々の論理により決められているとしたら、其処に潜んでいる効率化機会は非常に大きいと言えます。具体的な取り組みとしては優先サプライヤーリストをコーポレート側で策定し、基本的に各事業部にはその中でサプライヤーを選ばせるようにするか、もしくは購買部側に決定権限を委譲する等考えられます。
このサプライヤーの集約化は、「業務の効率化」以上の効果を期待できます。つまり、それは「コストの低減」に直結するということです。サプライヤーを集約することで、交渉力が増し、ボリュームディスカウントを狙えますし、全社の過去の購買量履歴を抑えることで、単発の発注でなく、年間契約等のより長期的で製薬会社側に有利な条件の締結が望めます。このようなサプライヤーの集約化は非常に経営インパクトの大きい施策ですので、M&Aの後にまだ本格的に取り組めていない企業は優先して検討することをお勧めします。

 

Simplification (簡素化)
このSimplification(簡素化)とは、不必要に複雑であったり、無駄に人的リソースを消費する業務を省力化することを狙った施策になります。この一大分野として、チェック/承認フローの簡素化が挙げられます。製薬業界ではGCP等の規定や、過去のM&A前の個別会社の慣習、そしてグローバルとローカルのフローの混在からか、「よくよく考えるとこんなにチェックを行う必要があるかしら」というケースが散見されます。治験で求められるプロトコル作成等は、確かに何度も修正が発生しがちな業務ではありますが、今一度不必要な確認作業がないか、検討は必要です。また単純な記入チェック等についてはエクセルのマクロやRPA等で自動化してしまうことも考えられます。
実際に、筆者の経験では、製薬開発の承認フローにおいて、治験薬概要書(IB)やプロトコル、同意説明書(ICF)、治験計画といったドキュメントそれぞれにおいて膨大な社内ステークホルダーに対して承認プロセスが発生していました。それらの承認プロセスおよび対象者を一つ一つ紐解いて、必要承認者を厳密に規定することで、不要な承認業務の削減に繋がった例もあります。
次に、この簡素化の施策に入るのが、会議体参加メンバーの限定です。先述の承認フローにも関わりますが、仮に何かの承認のための会議体があったとして、果たして、この場にいる全員が必要なのか、最後の会議体に参加するだけで良い人もいるのではないか、といった視点は重要です。また逆に参加必須のステークホルダーの参加がバラバラで、2回会議体を持たないといけないケースもできれば避けたいところです。出張中が多いのであれば遠隔会議システムを使う等して、会議体の回数低減に努めるべきです

今回のコラムでは、製薬業界におけるBPR主要4方針のうちConsolidation(集約化)とSimplification(簡素化)の2つを取り上げました。次コラムでは、ベストプラクティス分析も含めたStandardization(標準化)と、まさにRPAの対象となるAutomation(自動化)の領域に焦点を当てて、詳述していきたいと思います。乞うご期待ください。

 

医療業界におけるBPR機会とRPA活用(製薬業界)<3>

 

 

 

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