2018.06.04
今回のコラムでは、最近、特に取り組みが活発化している地方自治体におけるRPA活用事例をご報告していきたいと思います。
自治体におけるRPA活用は、近年各RPAベンダーが注力して取り組んでいる領域であり、様々な取り組みがプレスリリースやその他公表情報により報告されています。
自治体の場合、予算厳守の文化でもありますので、
首長が即断でRPA導入を促すことはなく、他のシステムと同様、
来年度予算の中に入れられるかが重要になります。
2017年に金融を始め大手民間企業での導入事例が新聞雑誌等で脚光を浴びましたが、
その影響を受け地方自治体側では次年度つまり2018年度の取り組みとしてRPA導入を挙げてくる自治体が出てきております。
この傾向は、2018年度、2019年度と年を経るにつれ大きなトレンドとなる可能性を秘めています。
今回はその中でも先駆けてRPAの取り組みを公表している代表的な自治体事例を紹介していきたいと思います。
まず、「地方自治体におけるRPA活用」と言って真っ先に思い浮かべるのが、
自治体庁舎内における自動化の取り組みです。
これはRPAと呼ばれる技術が特に定型のデスクワークに向いていることから、
非常に相性の良い組み合わせであることは、関係者からすると容易に想像できると思います。
自治体のお仕事は実際には多岐にも及んではいますが、
住民からの住所変更や出産・児童手当、確定申告など、諸々の申請処理であったり、
法人に対しても登録処理や事業税手続き、補助金申請処理など様々な定型業務を行っています。
これらの業務については基本的にルールやワークフローは明確に存在しており、
RPAをインストールするための下地は出来上がっていると言えます。
実例で見ると、まず有名な例としてつくば市の取り組みが挙げられるでしょう。
茨城県つくば市では、NTTデータ、クニエ、日本電子計算(JIP)といった民間企業と一緒にRPA導入の共同研究を行うことを2018年1月に発表しています。
RPAツールとしては、NTTデータの「WinActor/WinDirector」を使用、
RPA開発前の業務精査・ロボット対象の抽出等のコンサル部分をクニエが、
その後のRPA開発および既存システムとの連携等にNTTデータとJIPが関わっているようです。
つくば市におけるRPA対象業務についてですが、
市では以下の業務を現状課題として挙げており、
おそらくこれらの領域を先ずは中心にRPA化の取り組みが行われると推測されます。
いずれにしても、RPAが最も効力を発揮する電子データからシステムへの変換だけでなく、
紙や画像データといったOCRを絡めた取り組みも見据えているようです。
OCRは未だ精度の問題が残っている技術ではありますが、
自治体の申請書はその中でも比較的高精度の読み込みが期待できる分野です。
OCRの精度を高めるには、OCRが読み込みやすいように帳票を再設計する必要があります。
これは例えば記入欄をマスで区切り、一マス一文字にするようにするとか、
網目を使わない、帳票上の固定の場所に固定の情報を置くようにする(備考欄のようなものに重要な情報を列挙するのは避ける)といった工夫を凝らす必要があるのです。
企業が扱う、外部からの請求書や名刺といったものはそのフォーマットを企業側はコントロールできないために、
OCRで読み込もうとすると精度問題がついて回るのですが、
こと自治体の帳票に関していえば、
自治体自身が帳票フォーマットを自主的に改変できるという強みがあります。
まさしくこの行政分野において本来はOCRの導入は真っ先に取り組むべきであります。
次の事例として、NTTデータが支援した京都府の取り組みが挙げられます。
RPAの利用が適していた業務として以下の領域を挙げています。
まず、ポータルサイトへのアップデート業務についてですが、
以下のフローをRPAとExcelのマクロを使い自動化したようです。
次に補助金の実績確認業務ですが、これは府が補助金を交付した市町村に対して、
その効果・実績を確認する業務を指します。
府では、その確認項目が39もあったのですが、それらをRPAにより自動化させ業務負荷を軽減、
更に人的ミスもなくなったとのことです。
この京都府の場合もやはり、システムおよび定型の電子データを扱った業務がRPAの一大機会となっているようです。
印刷物形式の統計データをサイト用のオープンデータに変換するような業務は正に定型作業でありますし、
また補助金の実績確認についてもおそらく実績情報なるものが定型の電子データであり、
その情報を拾っていく作業をRPAロボットにさせていると推測されます。
この京都府の事例を鑑みて想うのは、
特に自治体においては「システムtoシステム」の領域におけるRPA機会が非常に大きいのではないかということです。
自治体のIT意識のレベルによって差はありますが、一般的に民間企業に比べて、
自治体のほうは個別システムのタコツボ状態になりやすいと言われています。
これは、一つのシステムベンダーに依存しすぎるのを良しとできない文化であったり、
そもそもCIO的な立ち位置の人間が自治体側で欠損していることから、
個々の連携が全く取れないシステムが集まってしまっている事象を指します。
そうなると、あるシステムと別システムの間を情報連携するのに、
人間の手でデータ加工する作業がどうしても出てきてしまいます。
そのようなタコツボ状態を一気に解決するためには、大型のシステム投資が必要となりますが、
それは次期予算策定する上でおいそれとできるものではありません。
そのようなケースの時に、比較的に低コストで始められ、
簡単なプログラムであれば(研修を受ければ)職員自ら開発・導入もできうるRPAは魅力に映るのかもしれません。
次に、これは具体的な自治体の事例ではないですが、
地方自治体にRPAの機運が高まっている詳細として日本RPA協会の取り組みをご紹介したいと思います。
日本RPA協会で行っている「行政・アカデミア分科会」での取り組みということで、
同協会は2 017年11月に、自治体を支援する「RPA自治体支援プログラム」と中央官庁を支援する「RPA中央官庁支援プログラム」を発表しています。
これは官公庁や自治体職員自らRPAツールを扱える人材育成の面もあるようです。
このような取り組みが今後も活発化していくでしょう。
具体的に「RPA自治体支援プログラム」では、以下の支援を行うことを謳っています。
この支援プログラムの内容を見るに、
少なくない自治体が「自分たちの手でRPAの開発・導入をしたい」をいう意識を持っていることが分かります。
確かにRPA自体はExcelのマクロに近い技術ですので、技術的難易度は差ほど高くなく、
ツールの発展もあって現場担当者でも簡単なものであれば作れるようになれるかと思います。
実際にどの程度、自治体職員側で自主的にRPAを作れるのか未だ不透明な部分は残りますが、
ベンダー側としては開発・導入支援だけでなく研修サービスについてもビジネス機会が出て来ると予想されます。
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