2018.05.28
今回はWebマーケティング(リスティング広告、アクセス解析、SEOなど)の領域におけるRPAの活用事例を紹介していきたいと思います。
著者は約5年間Webマーケティングに従事したことがあります。担当した領域は、リスティング広告、ディスプレイ広告、SNS、アクセス解析、SEOなど多岐にわたります。その時から非常に苦労したことは、多くの指標を管理しなくてはいけないことです。例えば、Google AdWordsなどでは、表示回数・クリック数・クリック率・コンバージョン・費用・CPA・・・少なくとも10以上の指標があり、それが媒体ごと(Yahoo! スポンサードサーチ)に分かれているため、たくさんの管理ツールを開きつつ、エクセルなどを活用しながら情報を整理していくわけです。さらには筆者のように広告代理店でWebコンサルタントとして働いている場合、顧客を幾つも抱えているため、アカウントの切り替えなどが必要になっていきます。ちなみに筆者は30~40の顧客を抱えていました。
このようにWebマーケティング施策では多くのツールを活用するため、管理することが複雑化し、情報を整理するだけで時間がかかります。また、次の施策を打つ際にも指標が多くあり過ぎて、混乱してしまうWebマーケティング担当者もいるかと思います。
管理の簡素化・効率化を支援してくれるツールが、今回紹介しますRPAです。RPAとは、Robotic Process Automation(ロボティックプロセスオートメーション)の略称です。基本的にPCでできる操作を自動化してくれます。今までも似たようなツールがありました。それは、エクセルのマクロです。例えば、皆さんの通勤手当や経費精算するエクセルにマクロが使用されているケースがあります。始発駅と到着駅を入れるだけで勝手に金額が表示されるなど。しかし、マクロですとエクセルの中でしか自動化できませんでした。
RPAでは、その範囲を超えてWeb上の情報なども自動で取得してくれるようになります。例えば、ベンチマークしている企業の検索順位を定期的に取得することやGoogle Analyticsの必要な指標だけ毎日取得してくるなど、今まで時間を要してエクセルなどに記入していたことは全てRPAが自動化してくれます。
それでは、幾つかRPA導入によってWebマーケティング業務の効率化・自動化できる事例を紹介していきましょう。
①各競合ECサイトの価格情報管理
これはECサイトに限ったことではありませんが、各競合ECサイトの価格情報を毎日取得し、自社商品の価格を変動させている話を聞いたことがあります。大手ECサイトでは、競合サイトと同じ商品を扱っているため、競合サイトの同商品価格情報を確認し、自社ECサイトでの販売価格をリアルタイムで変更しています。基本的には商品設計が大きく変わるわけではないため、ルーティーン作業として毎日行っているわけですが、当然ながら商品数が多いと非常に時間を要する作業です。
このようなケースでは、RPAは非常に効果を発揮します。確認したい箇所、ここでは価格情報を指定し、定期的にエクセルに落とし込む、もしくはメールを送信するなどしておけば、その分他の作業に時間を使うことができるようになります。
②Web広告の指標管理
筆者は今もある企業の広告を担当しているのですが、その企業ではGoogle AdWords・Yahoo!スポンサード・SNS広告(Facebook・Instagram)・Criteoを活用して広告施策を行っています。また、アクセス解析(Google Analytics)も行っています。その企業では、顧客情報を管理するデータベースはあるものの、これらの広告ツールと連携されていません。
その結果、毎週エクセルにGoogle AdWordsからクリック数・コンバージョン数・費用を取得し、エクセルに打ち込み、Yahoo!スポンサードを開き、クリック数・コンバージョン数・費用を取得し・・・など同じような作業を各管理画面から取得し、管理シートに打ち込んでいます。またこの企業は小売店のため、店舗が複数ありそれらの作業が完了するのが、約1~2時間かかります。
この場合においてもRPAは非常に効果を発揮します。時間を指定しておき、RPAが自動で、いままで人力で取得していたデータを人間よりも正確に、迅速に対応してくれます。さらに、小売店のように今後店舗が増えていき、店舗が100店舗を超えるなどなると、もはや人が様々な管理画面からデータを取得することは現実的ではなくなります。実際にリクルートでは約90の業務を自動化することに成功しています。例えば、データ入力などの定型作業や複数のソフトウェアで形式の異なるデータを表計算ソフトなどに打ち直す作業のほか、収集したデータからグラフ作成、レポート化することもRPAによって自動化されています。(出所:日本経済新聞「単純作業を7割削減、リクルートRPA導入拡大」(2018年4月6日付)
ここからはWebマーケティングに特化したRPAツールを2つ紹介していきたいと思います。
PRESCO Robo
B2Bビシネス向けにオウンドメディア運営やマーケティングオートメーションサービスなどの支援を行っている株式会社セグメントが2017年9月29日より提供しているWebマーケティング特化型のRPAツールです。主に広告代理店や自社マーケティング部門をターゲットとしています。ここでは、SEOについては、Google Analytics・GoogleやYahoo!の検索結果、広告はリスティング広告・ディスプレイ広告・SNS広告・外部広告プラットフォーム、さらには自社データベースをTableau Software社のプラットフォームを用いて自動で情報を取得し、レポートを作成します。また、レポートについては個別開発も可能です。(出所:PR TIMSのプレスリリース)
株式会社ミツエーリンクスのWebサイト運用RPA導入支援
ミツエーリンクスは、コンテンツやサイト制作、アプリケーション開発などを行っている企業です。ここでのRPA導入支援はおもにWebサイト運営の業務効率化です。例えば、ECサイトへ商品を登録する際には、管理番号・商品名・画像・説明文・価格などが必要になります。もちろん内容自体は自動化できませんが、決まったものを入力する作業は案外時間がかかります。それらの業務をRPAによって短縮化するほか、入力ミスなどもなくなります。
さいごに
IT選定に関与する担当者のアンケート(2017年5月調査)では、導入済みの企業が14.1%で、まだ普及していない企業が多いです。(出所:ガートナー ジャパン)今後はより多くの企業がRPAを導入していくと思われますが、これには課題があります。
それは、RPAではある条件を基に、作業を自動で行うものであるため、条件を整理する必要があるということです。案外これが難しいです。この領域は、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)と呼ばれており、専門のコンサルタントがいるほど専門性の高い領域となっています。そのためRPA開発会社でも、業務の整理(標準化)を行うことができず、導入したい企業は業務の標準化で挫折してしまいます。
そのようなケースにならないために、RPAを導入したい場合には、自社の業務を見直し、場合によっては業務改善を支援しているコンサルティング会社、もしくはコンサルティングを含めたRPA開発のできる会社を選ぶことをおすすめします。従来のRPAは、条件を設定しなければいけませんが、AIを搭載したRPAツールも出てくると思います。それによって、情報収集という作業はほとんど自動化されるようになり、意思決定のみヒトが行うようになるでしょう。まずは作業効率のためにでもRPAを導入してみてはいかがでしょうか。
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