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経理財務業務におけるRPA導入機会

2018.05.16

1.はじめに

RPARobotic Process Automation-ロボットによる業務自動化)は、近年のBPOの最前線でよく聞かれるワードの一つです。これまで人間が行ってきた定型の作業や業務をPC内のロボットが仮想知的労働者(=Digital Labor)として代行することで、業務効率と品質の向上、コストダウンが期待できます。

ただひと口に「自動化」といっても、抽象的すぎてどんな業務にRPAを導入できるのかいまひとつ想像がつきにくいかもしれません。

今回は多くの企業で実際にRPAの導入が進められている業務のうち、経理財務業務でのRPA導入機会を実作業に近い形で探ってみましょう。

 

2.経理財務業務とRPAの親和性

RPAが得意とするのは以下の特徴を持つ業務です。

 ・一定のルールを基に繰り返し作業が発生する

 ・業務プロセスが標準化されている

 ・高度な判断を要さない

 ・複数のシステム・データベースから取得したデータを利用する

 ・膨大なデータを取り扱うため人為的ミスが発生しやすい

経理財務業務では月次決算時等で複数のシステム、データベースからデータの取得/集計/入力を行うため、大きな業務負荷がかかりやすく、大部分を人力で行っていればヒューマンエラーが発生するリスクも抱えてしまいます。

そのため経理財務業務はRPA導入によるインパクトが最も高い業務であるといえます。

 

3.経理財務業務におけるRPA導入機会

とりわけ定型業務が発生する経理財務分野において、以下の点でRPA導入が検討できます。

 ・経費精算業務

 ・請求書処理

 ・費用計上

 ・入金・売上計上

 ・固定資産管理

データを取得⇒加工・集計⇒出力のワークフローを辿る定型業務は、基本的にRPA導入を検討することができます。

導入前には客観的な業務の分解をする必要があり、一連の業務に係る一つ一つの作業の洗い出しを行い、ロボットで代行できる業務を探っていくところからスタートします。

どこからデータを取得し、どのように加工・集計し、最終的にどこに出力するのかに着目し、場合によってはワークフローの見直しを含めて検討する必要もあります。

この時忘れてはならないのは、ロボットを導入することで人間の実務時間がどれだけ削減できるかを念頭に検討を進めなければならないという事です。

業務効率の向上やコストダウンを図れるのは魅力的ですが、元からさほど負担になっていない人力による作業を、手当たり次第ロボットに代行させることはスマートではありません。

費用対効果の観点から、よりハイボリュームの業務からロボットを組み込んでいくことが重要であり、検討段階の指標として取り扱うデータの個数や実作業時間、工数を割り出していくことになります。

 

 

4.導入が検討できる業務

ここからは経理財務業務における実際の導入可能事例を挙げていきます。

今回は手作業が多く発生しがちな費用計上の業務のうち、購買業務フローの自動化を検討してみます。

【支払申請~振込~仕訳】

①支払申請内容の確認

事業部が申請した支払申請内容を確認する業務の自動化を検討します。

社内申請管理システムを介した申請の場合、システム上をロボットが随時巡回することで、請求書の添付の有無や未入力項目を確認し、自動的に申請を差戻すフローを構築することが可能になります。また取引先マスタのようなものをあらかじめ作成しロボットが参照できるようにすることで、申請に必要な入力内容(取引先名・ID・プロジェクトコード・支払日など)をより細かくチェックすることができます。

添付の請求書内容と申請内容の照合については、請求書のフォーマットが統一されており、なおかつ電子データで取得できれば自動化の検討が可能ですが、多数ある取引先の請求書フォーマットを統一することは非現実的であり、また請求書自体紙ベースで発行されることが多いのも実情です。

この場合最終的なチェックは人力で行うことになりますが、申請の段階でロボットがエラーをはじいているため、従来よりもはるかに少ない労力で業務を遂行することができます。

後段の振込業務~仕訳計上時に申請管理システム上のデータを用いるため、申請のルールや差戻がしっかり機能するように厳密な定義づけをする必要があります。

 

≪マスタデータについて≫

マスタで管理するデータは以下のものが挙げられます。

(各業務でロボットが取得するデータを集約しておく)

 ▶取引先名

 ▶取引先ID(申請管理システム/支払リスト/マスタを紐付けるために必要)

 ▶取引先口座情報(ネットバンキングシステムへの入力時に必要)

※同一取引先で複数の口座を使い分ける必要がある場合は、それぞれにIDを付与する必要がある

 ▶勘定科目(会計システム入力時に必要)

 ▶支払頻度/過去支払実績(定期的に発生する支払先としてフラグを立てることで支払リスト作成時に未申請の場合はアラートを出すことができる)

 ▶担当者E-mailアドレス(アラートの通知先)

 

②仕訳(買掛金計上)

支払申請が承認されたものから随時会計システム上に買掛金を立てていきます。企業によっては後段の消込作業と同時に実行するなど、買掛金の計上タイミングが違ってくる可能性もあるかと思いますが、今回のケースの場合、申請管理システムで承認された時点を以って買掛金を計上することで、タイムリーな仕訳作業を行うことができます。具体的には、決裁者の承認をきっかけとしてロボットが起動し、申請データから金額情報を抽出し会計システムに反映するフローになります。どの支払案件も勘定科目が買掛金一本に絞れるならば、仕訳に必要なデータは申請管理システムのみを参照すればいいだけなので、容易に自動化ができるでしょう。

ただし正確なデータを管理システムから抽出するためには、申請データと請求書内容の一致が前提です。このため人間の目で都度確認し、情報の精度を担保する必要があります。

③集計~振込

月次で支払申請を集計し、ネットバンキングサイトに入力するための一覧データを作成します。

ロボットが管理システムから申請データを取得することで、支払リストを自動で作成することができます。支払リストに支払金額/支払日/口座情報を出力し、リスト完成後CSVファイル化することで、そのままネットバンキングサイトに送信できるため、請求書11件を入力する手間が省けます。

また集計の際、コンスタントに支払が発生する支払先については、マスタ上で支払頻度などを入力しておくことで、本来あるべき支払情報が未申請になっている場合に、その項目を検出し担当者に自動メール送信などでアラートを通知することも可能です。

支払リスト作成時に注意することは、請求書によって支払内容が違う場合です。

たとえば企業ではなく個人に支払う場合、所得税の源泉徴収額を考慮する必要があります。請求金額のうち源泉徴収対象となる報酬については、10.21%(支払金額が100万円以下の場合)を乗じて源泉徴収額を算出し、支払リストへの入力金額は、その税額を差し引いて計上しなければなりません。また、交通費や宿泊費など業務に関わる費用については非源泉徴収対象として、報酬とは別に計上する必要があります。

このように個人に発生する支払いは、通常の取引先とは別のロジックでロボットを動作させる必要があるため、別途個人支払先マスタを作り管理することになります。また、申請管理システムから源泉対象額と非源泉対象額データをそれぞれ取得する必要があるため、専用の申請フォーマットを構築する点も考慮します。支払申請時の入力方法を変更することになるため、この点については申請者である各事業部へのコミュニケーション&トレーニングで理解を得ることが肝要です。

支払リストが完成した段階で、CSVファイル(全銀ファイルフォーマットに準拠)を作成、ネットバンキングの外部ファイル送信機能を使い、自動で振込手続きを完了させます。(ロボットがネットバンキングサイトにアクセスできるようにロボット用のIDとパスワードを用意する)

最終的な振込内容に関しては必ず責任者が自分の目で確認し、正確性を担保することが重要です。

この支払情報の集計から振込までの業務は手作業メインで発生している事例が多く、自動化による削減度合いも非常に大きなものになります。

 

④仕訳(買掛金消込)

振込が完了した段階で勘定システムに仕訳データを入力し、前段で立てた買掛金の消込を実施します。

ここで必要なデータは、振込金額と勘定科目です。勘定科目についてはマスタ上で1つの支払先につき1つの科目で紐づけができれば容易に自動化を検討出来ます。

請求内容によってはより細かな仕訳が出てくる場合もあり、それら例外処理を含めてどのように自動化をするのか会計システム上の拡張機能と組み合わせて自動化の余地を探っていくことになります。

 

5.さいごに

今回のコラムでは経理財務業務におけるRPA導入機会をご紹介しました。このほかにも人事/総務部門などのバックオフィスでの活用が進んでいます。

2018年現在RPAがカバーできる業務は高度な判断を要さない定型業務での活用にとどまっていますが、将来的にAI技術革新や取り扱い可能データの拡充(OCRでの紙媒体の読み取り技術の発展など)により、幅広い分野での自動化が期待されます。

こうした業務自動化の真の目的は、ロボットが人間にとって代わることではなく、人間が単調な作業から脱出しよりクリエイティブな業務にシフトできるようになることだと考えます。

少子高齢化による人的リソースの慢性的な不足を解消し、ワークライフバランスを実現しながら生産性高く労働に従事できる社会の実現にむけて、RPAは今後さらに注目を集めるでしょう。

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