2018.05.10
昨年2017年末からメガバンクを皮切りに大手企業がRPA導入を発表が続き、2018年はさながらRPA元年といった様相を呈しています。
しかし中小企業界隈におけるRPAの認知はまだ必ずしも高くはありません。
RPAは本来中小企業にこそ活用されるべきテクノロジーです。今後の就労人口の減少によって人材獲得が難しくなるのは大企業ではなく中小企業です。
また、大規模なシステム導入が難しい中小企業にとってRPAはコストパフォーマンスからいってもマッチします。確かに現状ではRPAバブルの中、大手コンサル会社による暴利な値付けがなされていますが、RPA自体は元来それほど高い難易度を要する技術ではありません。WEBサイトの制作やSEOにように、当初は暴利がまかり通るのでしょうが、時間の経過とともに寧ろ誰でも使える技術となっていく可能性があるのがRPAです。
今記事は現段階における中小企業にとってのRPAについて、中小企業の社長自身による極めて私的な雑記です。雑記だからこそ分かるリアルもあると思います。ご興味のある方は是非お読みください。
当社は社員100名未満の小売業というまさによくある中小企業でありながら、同時に社内の一部門としてコンサルティング部を有しこれまで多くの企業の業務標準化や改善を行ってきました。
コンサルティング部は外資系戦略ファーム出身の創業役員が率いており、社長である私は主に小売りの方を担当してきました。その為、私自身は考え方もスキルも典型的な中小企業オーナー社長であり、また周囲のお付き合いも同様の中小企業オーナー社長がほとんどです。そんな私の目から見るRPAの中小企業の認知とは、そして今後の導入にあたっての諸問題についてお話します。
尚、ここでいう中小企業は、社員数70~150名程度の規模のオーナー社長企業を想定しています。
自分自身もそうなのですが、まず抑えておきたいのは、中小企業オーナー社長とB2B界隈のビジネスマンのビジネス用語理解には大きな乖離があるということ。実はこれ、当社のコンサル部門の人間ともよくそのギャップで議論になります。正直、私たち中小企業オーナー社長はコンサルをはじめとしたB2Bビジネスマン程ビジネス用語なんて知りません。
ビジネスにまつわる用語はそれぞれ三つの群に分かれると考えています。三つをそれぞれ「ビジネス用語」、「トレンド用語」、「一般用語」と呼びます。
ビジネス用語とは、まさに界隈の方々しか知らない言葉、例えばBPRとかSAPとか。大手企業の経験もなく、普通に最初から社長として小売りやっていて一応日経新聞を流し読みしているレベルは、その言葉の意味は分かりません。
次にトレンド用語。もともとビジネス用語だったものが何かの拍子にこのトレンド用語へ移動してきます。例えばクラウドとかかな。正直定義までは分からないが知っている言葉。
最後に一般用語は、このトレンド用語から更に昇格して、誰もが知る言葉になったものです。最近ではAIとかですかね。ビジネスマンでなくとも聞いたことがある。
感覚的に言うと、ビジネス用語は日経新聞の記事には出ているが、春秋や社説には出ない。トレンド用語になると春秋や社説にも出てくる。一般用語になるとビジネス系以外のメディアでも目にするという感じですかね。
では、RPAは現時点でどの群に属しているのか?
私は、トレンド用語にようやく入ってきたところだと考えています。ただしまだ漸く入り口くぐったところ。そして、中小企業に浸透し始めるのはこのトレンド用語フェーズの後半になります。
実際、今年になって私の周囲の小売り、医療関係、不動産、飲食、自動車部品などの社長20名程度に聞いて回りましたが、RPAという言葉を知っていたのは一人を除いていませんでした。唯一の例外は元々大手企業で修業された二代目社長でした。
今後どれだけ浸透するか、ひとつは日経や経済誌といったメディアでの記事としての掲載頻度によります。そして、もうひとつ意外と重要だと思われるのは金融機関や税理士などの側からの情報提供です。しかし現状では地銀信金界隈の担当者、税理士の先生方のRPA認知もまだという状態です。そう考えると中小企業への浸透は今しばらく時間がかかるかもしれません。
とは言え、既に意識の高い中小企業のRPAへの投資ははじまっています。これらの導入効果が日の目を見るようになった時こそ、多くの中小企業がRPAの導入に踏み切る時になるでしょう。次項からはRPA導入における課題について心理的なハードルと物理的なハードルに分けて見ていきましょう。
中小オーナー企業の意思決定は、社長です。特に事業に直結しない管理系の案件は、社長決裁であることがほとんどです。中小企業へRPAを勧める場合、社長の説得は避けては通れません。
まず中小企業の社長は見えにくい投資が嫌いです。RPAはロボットといっても形があるものではありません。ソフトに、ましてや売上に直結するわけでもないものに投資するというのはそれだけでハードルとなります。
ただし、これはRPAがトレンド用語として浸透していない状態においてのハードル。ひとたびトレンド用語として人口に膾炙したら今度は、「RPAというのを最近よく聞くがわが社でも導入できないものか」となるのが、世の中小企業の社長の常です。
そしてここからが本当の心理的ハードル。それは、興味と不安のないまぜ状態です。
基本的には自分の範囲にあるものは自分で理解したいと思う中小企業の社長は一般的に分かりにくい横文字に対してとても強い興味を持つと同時に、強い警戒心を持っています。それが自分の理解を超えたものであれば猶更です。
古くは一太郎からはじまり勘定奉行や大蔵大臣、日本製のIT関連商品やシステムなどの多くが日本語名であるというのも、それが理由であると私は考えています。逆に多くの歴史ある企業が由緒ある日本行表記の会社名を捨て横文字にするのも、同じ心理からきていると考えられます。
加えて、中小企業の社長はソリューション営業を受けるのが苦手です。売り切りのパッケージを営業されるのならまだしも、自社の状況にあわせてRPAをどう活用するかひとつずつソリューション営業と詰めていくのは大きな苦痛を伴います。
良さそうなのだが、どうしても必要なものではない。いろんなことが出来るそうだが、具体的に何が出来るのかいまいち分からない。柔軟性の高いRPAだからこその悩みどころですが、このあたりをどれだけ平易に、具体的に、そして効果をアピールできるかは中小企業への導入、ひいては中小企業社長攻略のポイントになると考えられます。
無事に社長の承認も得て、具体的な導入について現場責任者と詳細を詰める段になりました。ここからが実は一番大きな課題です。
それは、中小企業の業務は標準化されていないということ。上場準備企業で業務フローを整えているというような中小企業ならまだしも、大多数の中小企業の業務は人に大きく依存しています。そして伝承もほぼ口伝。
RPAは決まった作業を代替する技術です。作業自体に何らかの決まりがなければそもそも代替が難しい。だったら導入にあたって業務を標準化すれば良いという意見があるかもしれません。しかし、基本的に業務標準化とRPA導入は異なる業務です。業務標準化はより上流のコンサル工程にあり、RPAの導入支援の営業やRPAの開発者が持つスキルとは異なります。
かくして、単純にRPA導入で済むと思っていた案件は、業務標準化という泥沼に入り、コストも時間も嵩んでいくことになります。そもそもスケールの違う大企業と比べコスト削減の面でのメリットがそれほど大きくない中小企業にとってこれは大変痛い状況です。
またRPA導入支援企業からしても、これでは採算が合わず営業を躊躇ってしまいます。
さて、ここまで中小企業のRPA導入について、若干悲観的に考えてきました。
しかし、冒頭にも述べたように、本来RPAは中小企業にこそ導入されるべきものであるという信念は変わりません。
最後に、極めて私的な雑記の締めくくりとして、極めて私的な売り込みをさせてください。
実は私がRPAという言葉を知ったのは昨年末。当社のコンサルティング部でいくつかの案件を受けていたのを知り、担当役員からその説明を受けたのがキッカケです。まあリアル中小企業の社長の実態としてご勘弁ください。
その後、年末年始の休みで、日経新聞や経済誌の新年特集号をなにげなく読んでいると、実は結構そこかしこにRPAという言葉があるではありませんか。よくよく調べてみると、これは我々のような中小企業の為にあるような技術ではないかと確信し、本年より私も肝いりで当社のRPA事業を拡充しています。
当社はもともと上流の業務受託をしていた為、社内に業務標準化を行うコンサルタント、RPAの営業、RPAの技術者を全て準備しています。
確かに、単なるRPAによる業務代替よりは面倒かもしれません。しかしこれからの就業人口減少社会において中小企業における業務標準化はRPA導入以上に重要なことです。
RPAという新しい技術に興味をいただいていただいた中小企業の社長様方には、これを機会に標準化、ロボットによる代替と一気に行うことを切にご提案いたします。
そして、私どもに、是非ご相談ください。