2019.06.24
2019年6月7日からNECがAI機能を搭載した新しいRPAのソフトウェア「WorkFusion Smart Process Automation」を発売しました。このソフトはRPA製品を販売しているアメリカの会社WorkFusionと戦略的提携を結んだ上で販売されたものです。
現在注目を集めているAI搭載のRPAソフトについてわかりやすくご説明、紹介していきます。
RPAとAIの違い
はじめにRPAとAIの違いについて説明していきます。RPAはRobotic Process Automationの略でデスクトップ上での操作を記憶し、そのルールに則って操作を自動的に再現する技術です。自動化したい作業を人間がロボットに教え、その作業ならばロボットが完全に再現することができます。主にPCでの定型業務に用いられることが多く、人間が行ってきた単純作業を大幅に削減できるというメリットがあります。
一方、AIはArtificial Intelligenceの略で言葉の理解や推測すること、問題解決などの知的な行動をコンピューターに行わせる技術です。そのため、大量のデータをもとにそれらのデータをロボット自体が紐づけたり、分析したりすることができます。AIは学習機能があるため、一度経験したことを継続的に次の作業に活かすことができるというメリットがあります。
「WorkFusion Smart Process Automation」とは
「WorkFusion Smart Process Automation」は2019年6月7日にNECが全世界に向けて発売を開始したRPAソフトです。
RPAにAIの技術を搭載したこのソフトとこれまでのRPAソフトの異なる点はロボットが判断機能を有しているという点です。従来のRPAソフトだと、記憶した作業以外の作業が抽出された場合に人間による判断や修正が必要となり、非定型業務は自動化ができないという問題点がありました。これに対して新ソフトではソフトが新しいフォーマットや情報であってもAIが学習することによって自動で作業を実行してくれます。新たにロボットを作成する必要もないため、使用するロボットの台数も抑えることができます。
具体的に「WorkFusion Smart Process Automation」でできる作業は、例えば多様な帳票を管理することです。レイアウトやフォーマットが異なる帳票からでも必要な情報を集めてきて、一つにまとめることができます。さらに、NECはオートメーション機能に加えOCRやワークフロー機能、傾向分析などを一つのパッケージとして販売しています。このような複数の機能をパッケージで導入することによって一連の業務プロセスをこのソフト上のみで完結・自動化させることができます。
実際にこのソフトを経理や財務の業務に導入したNECグループのNECマネジメントパートナーでは非定型型フォーマットの帳簿から特定の情報を収集する作業の93%を自動できました。また、同社の売り上げ審査業務においても、月に約1万件以上発生していた非定型の処理が効率化でき、作業時間を45%短縮できたという結果が出ています。
RPA×AI 他の事例 「BizRobo!」
RPAテクノロジーズは自社が提供しているRPAソフト「BizRobo!」にAI機能を追加するためにAIベンチャーのaiforce solutionsと業務提携して業務自動化のためのアプリなどを開発しています。RPAとAIを連携させてできることの具体的な例として物件検索サイトを運営している不動産の会社の例を紹介していきます。
不動産会社が物件検索サイトに新しい物件を登録する際のプロセスは以下の通りです。
上記のプロセスはアクセス先のサイトや登録先の物件サイトなどをRPAソフトに覚えさせることによって自動化することができます。
さらに、これらの情報に過去の不動産取引情報を教師データとしてAIに学習させます。すると、短期間で契約に結び付いた物件とそうではない物件を見分けるロジックをAIが作成し、それに基づいて新たに追加した物件を優先的に自動登録していくという一連の流れがロボットによって行われます。数ある不動産物件の中から短期間で契約にまでつなげられそうな物件をAIがピックアップすることによって収益も上がったそうです。
この事例からわかることは、RPAツールはあくまでも単純作業の自動化が目的であり、AIを取り込むことによって人間が考えて選定する、予測する、登録するなどといった様々な作業までも同時に自動化できるということです。人間がクリエイティビティを必要とする作業に専念するためには、判断する力を持つAIの存在が重要だということが分かります。
RPA×AI 他の事例 「コンタクトセンターDXソリューション」
もう一つの事例としてNTTコミュニケーションズが2018年12月から提供している「コンタクトセンターDXソリューション」の事例を紹介します。
このソフトは対話型AIエンジンとRPAを組み合わせたソフトで、コンタクトセンターの業務全体を自動化することができます。オペレーターの人員が不足している中で対面業務にできるだけ人員を割きたいという声が多かったことからこのソフトの開発がすすめられました。もともとNTTコミュニケーションズは対話型自然言語解析AIエンジン「COTOHA Virtual Assistant」やRPAツール「WinActor」のノウハウを持っているため、それらを組み合わせてこのソフトの開発に成功しました。
このソフトが担う業務は、コンタクトセンターにおける応対業務から事務作業まで全てのプロセスにおける業務です。「コンタクトセンターDXソリューション」で実行できる業務は大きく分けて以下の二つのフェーズに分けられます。
フェーズ1 AIが発言を認識・分析して適切に回答する
フェーズ2 RPAツールによって会話で得た情報の記録、処理を自動で実行
これらを一つのソフトが自動的に行うことによって、オペレーターを介さずに応対ができる仕組みを整えることができます。代わりに、店舗の人員や電話オペレーターは「おもてなし」業務に注力することができ、顧客体験の向上につながります。
また、このソフトを導入した際にはシステムの導入だけではなく、その後のテクニカルなサポートもNTTコミュニケーションズが行ってくれるため、継続的にAIやRPAを運用していけるというメリットもあります。
このソフトでAIが応対できるケースは、商品注文、予約、注文内容変更、登録情報紹介・変更、交換・返品、解約・キャンセル、FAQ、空き情報確認、顧客リスト精査、テレアポ、アンケートなど多岐にわたっています。
NTTコミュニケーションズはこのソフトで「OCNモバイルONE」のコンタクトセンターで時間外FAQの問い合わせ受付の実証実験を2018年6月から7月にかけて行ったところ、90%以上の応対がAIだけで完結したそうです。また、商品発注の業務に取り入れたところ約60%の人員削減につながったそうです。
RPA×AIの効果は?
ここまで、いくつかAI搭載型RPAとその導入事例を紹介してきましたが、RPAにAI機能を搭載することで期待できる主な効果は以下の通りです。
⇒結果、一連の業務が一つのRPAツール上で自動化できる
AI搭載型RPAの副次的な効果としてAI導入に対するハードルの高さが下がるというも期待できます。RPAソフトが業務の一部に導入できるのと同じように一部の業務に対してAIを導入できるため、効果を実感できたらさらに規模を拡大するということも可能になるでしょう。
まとめ
AI搭載型のRPAでできる業務がどのような業務であるか、またどのような効果があるかイメージしやすくなったでしょうか。きちんと理解した上で普段の業務の効率アップのためにこのようなRPAツールを導入してみるのもよいですね。
参考文献
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1903/06/news142.html
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1906/06/news069.html
https://iotnews.jp/archives/111483