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働き方改革の制度の効果を最大化にするためには―UiPath導入事例をもとに―

2019.06.17

働き方改革とは

 

ここ数年、世間では「働き方改革」が注目を集め、多くの会社が労働環境を改善しようと試みています。

「働き方改革」とは、政府の重要政策の中の一つで、多様な働き方が可能となる社会を作っていこうとする動きです。日本では少子高齢化により、労働力不足が大きな課題となっています。そのため、現在の働き方、労働環境を改善して、様々な働き方を推進していくことにより労働力不足を解消することが必要不可欠なのです。

 

働き方改革には3つの柱と呼ばれるキーワードがあります。

 

  1. 長時間労働の解消
  • 国際的に見ても長い日本の労働時間を短縮する
  • 無制限の残業を認めてしまう「特別条項」の見直し
  1. 非正規と正社員の格差是正
  • 同一労働に対して同一賃金が支払われるような法制度を作る
  • 非正規社員もキャリアアップできるようにする
  1. 高齢者の就労促進
  • 定年したが、働く意欲のある高齢者を生産者として組み込む

 

 どれも、日本の労働環境を改善する上で重要ですが今回は働き方改革の3つの柱のうちの一つ、長時間労働の是正に焦点をあてて話を進めます。

長時間労働の是正のために必要な要素として残業時間の削減があります。多くの会社では、「ノー残業デー」を作ったり、「1ヶ月で残業は原則〇〇時間まで」などといった新たなルールを設けたりしているようです。しかし、単に残業時間を減らすことは必ずしも効果的であるとは言えません。持ち帰り残業が増える、一般社員が時間内に業務を終えられなかった場合は管理職の社員がその分の業務もこなさなければならないなどといった新たな課題も出てきました。

 

 そこで重要になるのが作業の効率化・自動化を進めることです。RPARobotic Process Automation)ツールなどを使って情報の収集やデータの転記などの定型的な業務を自動化することで、そもそも業務に要する時間を削減することができます。

 ここでは、社内で新たな働き方に関するルールを作るとともに、RPAツールを導入して業務の自動化を進めていき、業界内で一番の業績を残している伊藤忠商事の例を紹介します。

 

 

制度の改革“朝方勤務”の推進

 

伊藤忠商事は大手総合商社で、4300人以上の社員を有する会社です。働き方改革に力を入れていて、その一つとして2013年から朝方勤務の制度を始めました。この制度は、午後8時以降の残業を原則禁止として、代わりに朝の5時から8時までの早朝勤務にも深夜勤務と同様の割増賃金を支給するというものです。社内で朝食として軽食を無料で提供するなど、社員が朝方勤務をしやすい環境を作っています。

 

朝方勤務の施策の結果としては、夜8時以降に残業をしている人の割合が約30%から約5%に減少。夜10時以降に関しては約10%の社員が残っていたのに対して今ではほとんどゼロに近い数字になっているそうです。結果、残業時間の削減にもつながり、社員が限られた時間の中で効率よく仕事を行おうとする環境につながったと言えるでしょう。

 

 

高い付加価値を社員が生み出すには

 

朝方勤務が定着しつつある中で会社が注目したのは、限られた時間の中でいかに高い付加価値を世の中に提供していくかということです。実際に社長の鈴木善久は新入社員へのメッセージとして「古い定型の受け渡し業務など、基本を学んだらさっさとRPA化、自動化して、自分の頭で考え、知恵をめぐらすことにより多くの時間を使う、それが伊藤忠の求める新入社員の姿です。」と言っています。会社として社員により高い価値を出すような仕事、働き方を求めるようになってきていることが分かります。そして2017年の春ごろからIT企画部を中心にRPAの検討が始まりました。

 

 

導入までの歩みとその結果

 

総合商社である伊藤忠商事の特徴として、部署ごとに仕事内容が大きく異なるという点があります。そのため、最初からRPAの横展開をしていくことは容易ではありませんでした。そこで、

 

  • 初期費用が安く抑えられる
  • 小規模で始めた後に、規模を拡大することができる

 

という特徴を持つUiPathの導入を決定しました。201710月に伊藤忠商事のオフィシャルRPAツールとしてUiPathが認定され、ロボットの稼働が始まりました。ロボットの試行錯誤を繰り返し、社内にも7名のロボット開発者を育成して20184月にはRPAの全社展開を進めるための部署COECenter Of Excellence)が立ち上がりました。COEを中心として、最初は小さい規模でUiPathを導入、成功したら他の部署にも展開して規模を拡大していきました。

その結果、20191月の時点では69業務、83ロボットが社内で稼働していて、様々な部署でその成果が見られるようになりました。ロボットは特有の部署の業務に対応するものから、複数の部署の業務において使えるものも導入されています。

実際に導入された業務の例を3つ紹介します。

 

  • 情報収集の自動化

商品の市況情報を1商品ごとにWebサイトから取得して、その情報を基準によって判定、基準を超えた場合には担当者にメールで通知が届くという一連の業務がロボットにより自動化されました。この業務に年間約148時間かかっており、時間がかかるため今までは2商品しか扱うことができていませんでしたが、このロボットの導入により、6商品のデータを集めることが可能になりました。単純に人が行わなければいけない業務が減るだけではなく、時間の制約から今まで諦めていた選択肢も残しておくことができるようになり、仕事自体の幅も広がります。

 

  • 出荷帳票処理の自動化

客先から伝送受信するデータから出荷帳票を作成し、印刷する業務の自動化によって年間140時間の削減につながりました。繁忙期の作業時間を標準化することにも成功しました。

 

  • 保険取り扱い業務の自動化

保険会社から保険金支払い予定データを受領したのちに基幹システムと連動、保険金支払通知書を発行しそれを各担当部署に入金予定データとともにメールに添付、送信するロボットを導入しました。複数の部署が関わる業務のため、担当者の負担が大幅に軽減されました。

 

また、上記の業務だけに限らず各業務そのものにかかる時間が削減されることに加えて、次の担当者への引継ぎなどが不必要になることも副次的な効果としてあげられます。

 

 RPAツールの導入による定型業務の削減や労働制度の定着のおかげもあり、2018年度第3四半期(4-12月)連結決算において純利益は同11%増の3976億円と4年連続で第3四半期として過去最高益を更新しました。これは、大手総合商社5社の中でも最高の業績となっています。

 

 

働きやすい環境を作っていくためには

 

このようにRPAツールを用いて定型業務の自動化を進めることは、社内のルールや制度の効果を最大限にし、その会社が目指す働き方改革を実現していくために必要不可欠な要素だといえるでしょう。また、逆に長時間労働是正のための社内のルールや制度が増えていくことで、社員が効率良く仕事をすることの重要性を感じ、RPAツール導入の理解が深まることにもつながると考えられます。

 

 ひとつ気を付けておきたいのは、RPAツールの導入はあくまでも手段であり、目的ではないということです。導入の目的、目指すゴールがしっかり定まらないまま導入しようとすると、対象の業務が限定的になってしまったり、社内で思うように受け入れられなかったりする可能性もあります。そのため、何のために業務を自動化するのか、目的をはっきりさせた上でRPAツールの導入を進めていくことが重要だと言えます。

 

 制度の刷新とテクノロジーの導入、二つの要素をうまく掛け合わせていくことで多くの社員にとって働きやすい環境が作れるのではないでしょうか。

 

 

<参考文献>

https://www.uipath.com/ja/solutions/case-study/itochu

https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2019/190401.html

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-07/PMJECT6JIJUO01

https://bowgl.com/2017/09/07/work-style-reformation/

 

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