2019.03.28
こんにちは、今回は、ある学校法人で成果が出たUiPathの活用事例についてご説明させていただきます。
学校法人RPA化対象の業務は、「財務フロントシステム登録業務」でした。
実のところ、今回紹介するRPA化の事例は、もともとRPAありきでの業務改善ではございませんでした。当初は、財務部にて各部門の経費を一元管理するための、専用のフロントシステム開発のプロジェクトでした。ですが、フロントシステムの評価・検証を進めていく中で、以下の問題が発生することが判明いたしました。
これらの問題についてフォーカスしていきます。
財務フロントシステムへの登録業務を行うのは人間で想定していました。もし人間が入力するとなると、業務フロー上、確認も含めると一件入力するのに10分程度かかることが判明しました。経理処理の業務で一件にこれだけの時間をかけることは業務時間内に行うことは難しく、現場から不満の声が上がっていました。
また、実際に入力する担当者の多くは派遣社員です。現場で入力方法との教育を行うとなると、教育するための時間が発生してしまいます。現場で教育のための時間を捻出することが難しく、問題となっていました。
どのような業務でも起こりうるのですが、人間が介在する業務にはミスがつきものです。お金を扱う業務であるため、入力するときにミスが起こらないようにすることは明白です。この業務を実際に現場で運用しようとした場合に、いくらマニュアルを作っても、部門間で業務の質が変わってきてしまいます。最悪、入力業務が属人化してしまい、担当者がいないと把握しきれない、という部門が出てきてしまうでしょう。もしそのような運用になってしまった場合、決まった人がいないと入力自体ができない、もしできる人がいなくなってしまった場合の引継ぎ等で他の業務が滞ってしまう可能性があります。
また、以上の問題は、間接的ではありますが、残業の発生や人件費コスト増になる要因であるということです。これらの問題に対応するだけでも現場の作業効率が大きく落ちてしまい、大きな負担となってしまいます。
上記の理由から、専用のフロントシステムを導入することによるメリットが薄くなっていたところ、RPAの技術を導入することで改善できるということとなり、RPAの検証をいたしました。複数あるRPAツールの検証結果から、UiPathが最もRPAシステムとして優れているとし、UiPathでRPAの開発を進めていくこととなりました。
今回の業務RPA化対象となった、業務フローについてのおおまかな流れは以下のとおりです。
これらのフローについて説明いたします。
まず、事務員の教育という部分で、新たにSAPの使用方法を覚えていただくのでなく、普段から業務で使用する機会の多い、Excelを使用して伝票を作成することといたしました。
伝票用のExcelはフォーマットを統一し、入力内容の簡易的なチェックもできるプログラムを組み込んでおります。ユーザーはこのExcel伝票に必要事項を入力していきます。完成したら、最後に印刷行うことでDB管理のための管理番号を付与しExcel伝票の名称も管理番号をもとにした名称に書き換わります。
作成されたExcel伝票を、各部門で指定されたフォルダに投入します。
投入する先は部門毎に予めフォルダ分割されていて、ユーザーは決まったフォルダにExcelの伝票を投入して作業完了となります。
ここからロボットの動作となります。
あらかじめ、ロボットの設定について説明いたしますと、ロボットはBORで動作するタイプで、orchestrator上で事前に起動時間を設定しております。
ロボットが起動すると、まず各部門のフォルダ見に行って、Excel伝票が存在するかどうかを確認します。次に、Excel伝票を見つけた場合に、その伝票を読み取る工程(4にあたります)の処理を行います。もしフォルダにExcel伝票がなかったばあいは、次のフォルダに移動します。この動作は、すべてのフォルダを確認し終わるまで続きます。
複数のロボットが同時に実行しているため、ロボットが同じフォルダを見に行って処理してしまうと、二重登録となってしまいます。その場合、別のロボットが処理中のフォルダを取得してしまわないように、排他制御をかけています。
取得したフォルダの中のファイルを、一件ずつ処理していきます。必要情報を読み取りSAPのブラウザ上に転記していきます。転記が終了したら登録し、次のファイルに進みます。
以上が業務フローです。このうち、3~5の処理をロボットで行うのですが、同様の動作を行うロボットを複数台配置し、ロボットに不具合があった場合に業務が停滞しないようにしています。
また、ロボットが、間違った情報をフロントシステムに入力してしまうことを防ぐために、以下の対策を行っております。
複数の工程で対策を講じることより、間違った情報が入力されることがないように細心の注意を払って運用しております。
運用管理については、担当者が常に一人常駐しており、ロボットが処理している途中にエラーが発生した際に、人力での対応を行っております。管理担当者については一人いれば十分で、難しい対応になる場合には担当の上長にエスカレーションして対応する業務フローが構築されています。
この業務のRPA化の成果としては、半年間運用した結果は、件数換算で約10万件、処理時間換算で約20,000時間の業務効率化となりました。また、実際に人間の手で行った場合の入力ミス等による訂正や、ダブルチェックの時間を考慮していないため、実際よりも多くの効果が出ていると考えられます。このRPA化で成果が出たため、今後も他の業務のRPA化を進めてくこととなりました。
当初はRPA化とは関係のないところでのプロジェクトでありましたが、実際に現場側の負担が検証されていたので、RPA化による効果が明確であったことが、成果の要因であると考えられます。
今年に入り、実際にRPA化した事例が数多く展開されてきています。RPAによる業務効率化の波は、今後もますます盛り上がっていくでしょう。