2018.11.07
2017年11月銀行に関する大きなニュースが駆け巡りました。
みずほフィナンシャルグループは、傘下のみずほ銀行の支店など国内拠点の2割に当たる約100店舗を削減、
2026年度末までにグループの従業員を19,000人減らす方針を打ち出しました。
三菱UFJフィナンシャルグループも2023年度末までに9,500人分の”業務量”を削減、
三井住友フィナンシャルグループも2019年度末までに4,000人分の”業務量”を削減するとしています。
3グループ合計で32,500人分の人員・”業務”削減を目指しています。
なぜこのような方針が揃って打ち出されたのでしょうか。
まずは、マイナス金利政策による金利の低下で金利差によるビジネスモデルが急速に儲からなくなっていることが考えられます。
帝国データバンクが2018年6月に公表した、
国内主要112行(大手銀行7行、地方銀行64行、第二地方銀行41行)の預金・貸出金実態調査の結果は以下のようになっています。
2018年3月末の国内主要112行の預金は743兆7824億8800万円となり、2017年3月末比で24兆6647億円増加(3.4%増)。
大手銀行、地方銀行、第二地方銀行の3業態すべてで増加し、112行中96行(構成比85.7%)で増加
112行の貸出金は511兆3156億2000万円となり、2017年3月末比で6兆1486億3300万円増加(1.2%増)。
112行中102行(構成比91.1%)で増加
2018年3月期の112行の収支<貸出金利息(収入)-預金利息(支出)=本業利ざや>は、
5兆5469億6400万円となり、2017年3月期比で331億8800万円減少(0.6%減)。
3業態すべてで減少し、112行中80行(構成比71.4%)で減少
国内主要112行の2018年3月末の預金は2017年3月末比で3.4%増、貸出金は1.2%増となった。
112行の貸出金の前年比の増加率は、2014年、2015年と4%台で推移していたが、2016年は2.6%にダウン。
低金利環境にありながら、2018年はさらに1.2%にまで落ち込んだ。
地銀(4.1%増)、第二地銀(3.1%増)の貸出金は増加したものの、大手銀行(1.3%減)の減少が大きかった。
しかし、地銀においては、2017年秋以降、投資用不動産業者向けローンが社会問題化しており、
今後は銀行業界全体が同業界、関連業界に対する融資に慎重になるとともに、他の融資においても手続き、
審査などがこれまで以上に厳格になることも予想され、収益確保がより難しい環境に置かれる可能性がある。
こうした問題をどのように克服し、地方銀行、
第二地方銀行を中心とした金融機関が収益確保、再編の道筋をつけていくのか、注目される。
上記レポートのとおり金利差(本業利ざや)は減少していますが、
さらに、預金と貸出金の伸び率の差から想像がつきますが預貸率も減少しています。
以下は預貸率に関する東京商工リサーチが公表した内容です。
“2016年2月に日本銀行がマイナス金利を導入し、2年を経過した。
銀行114行の2018年3月期の単独決算ベースの預貸率は、65.53%(前年同期66.47%)で、前年同期を0.94ポイント下回った。
2011年以降の3月期本決算での預貸率は、2011年が68.59%、12年68.40%、13年68.00%、14年67.90%、15年67.74%、16年67.59%と推移した。
マイナス金利導入後の初の通期決算となった17年も66.47%と低下が続き、18年は調査開始した2011年以降で最も低い比率となった。
114行の2018年3月期の総預金残高は前年同期比2.7%増だったが、総貸出金残高は同1.2%増にとどまった。
また2018年3月期の「預貸ギャップ」(預金+譲渡性預金-貸出金)は、278兆4,182億2,900万円に膨らみ、貸出金に対する預金の大幅超過が続いている。
こうした「預貸ギャップ」の拡大は、マイナス金利導入後も伸び悩む、大手銀行を中心とした貸出状況を反映した。”
預貸率の低下は景気が悪くて企業の資金需要がないと思われがちですが、
中小企業の設備投資は緩やかな増加基調にあり、大企業においても設備投資は増加しています。
設備投資の動向が順調でありながら預貸率が減少している理由としては資金調達手段の多様化があり、
金融機関の役割が減少している可能性もあります。
資金調達などの構造的な変化が起きており、
金利が上昇し始めれば銀行の収益力は元に戻るということが断言できるわけではありません。
二つ目は、AI、フィンテック、ブロックチェーンを利用した仮想通貨などの金融技術の進化によって
銀行が担ってきた決済サービスなどが新しい仕組みに置き換わりつつあります。
このような新たな金融技術に対応して銀行のビジネスモデルを変えられなければ、
銀行の収益力はさらに低下することが想像できます。
このような環境変化に対応するため、
支店閉鎖や定型的な業務をAI・RPAの活用により業務量を削減することにより、
収益力が高いサービスに注力でき新たなビジネスの機会を創出できるようになるかもしれません。
融資事務センターでの住宅ローン団体信用保険申告書の点検業務です。
担当者が紙で一枚ずつ確認する形式を取っていた保険会社へ提出する書類のチェックと、
住宅ローンの明細との突合作業が対象です。
申込書をスキャンで電子化したものをOCRでデータとして抜き出し、そのデータをロボットが点検する形に変更しました。
ロボットが結果をExcelに落とし、不備があるものをオペレーターが見るという形になりました。
住宅ローンの明細との突合作業も同様にロボットが行い、
不備があるものだけをオペレーターがチェックする形に変更しました。
これにより2500時間の作業時間削減が確認されました。
RPAを適用する取引状況の照会業務は、地方公共団体からの取引状況の照会文書にもとづき、
預金残高や取引明細などを照会し、回答書を作成・返送する業務です。
全体の作業のうち、管理表の作成や顧客番号の特定、取引内容の照会といった作業をロボットによって自動化します。
RPAの適用で、年間6,552時間分の業務量削減が見込まれるといいます。
各支店の融資残高や来店客数の取りまとめのほか、インターネット経由の口座開設業務などを自動化します。
年間7,680時間の業務時間削減につながる見通しで、
浮いた時間は顧客サービス向上に向けた企画の業務などにあて生産性を高めます。
60超の支店から集約する融資残高や来店客数の集計、ネット経由の口座開設のメール対応などを自動化。
同行のニュースリリースの新聞報道なども自動で収集します。
公的機関からの取引照会業務においてRPAを導入することとしました。
本業務では、RPAの導入と一部業務プロセスの見直しにより、年間 3,680 時間分の作業量削減と業務の精度向上が期待できます。
今後は効果検証を行いながら、他の本部業務にも順次導入を進めていく方針です。
2017年10月から自動化できる定型業務の洗い出しを進め、報告書の作成や集計業務を含めた92項目を特定したと言われています。
既に融資に関する月次報告資料の作成業務を自動化し、年間80時間以上の削減効果を見込んでいます。
順次業務へのRPA適用に関する検証を行っており、2018年度上期にはローン実績や各種資料の作成、
支店の営業報告集計などを含めた13の業務にRPAを適用する予定です。
期待する削減効果は最大6019時間で、定型業務を効率化し顧客サービスの強化を図る方針です。
RPAの導入で月1,700時間の業務効率化を実現しています。
特に住宅ローン業務では、審査結果情報を取得してから顧客にメール通知するまでの一連作業を
多い日には1日200~300件、すべて手作業で実施していました。
アイティフォーのRPA業務自動化ツール「ナイス・デスクトップオートメーション」の導入により、
1件につき10~15分かかっていた作業が約1~2分となり約90%の作業負担を削減しました。
さらに5~6名を要していたスタッフを1~2名に削減することで、より効率的な要員配置が可能になりました。