2018.10.29
【前回の記事はこちらから】
前回は、各部門が管轄する基幹システムを統合する「ERPパッケージ」と、その導入プロセスをご紹介しました。
そこで今回は、RPAと組み合わせることで更なる業務効率化を図るべく、
その組み合わせ方や効果的な導入方法を検討してみたいと思います。
既に社内システムの統合が一通り行われ、更なる効率化を目指す企業様にもご参考にしていただければ幸いです。
企業のバックオフィス業務を幅広く網羅しているERP。
経営管理のシステムとして、様々な業務プロセスに跨った情報を収集し、
経営に役立てることが可能となるというメリットは前回お話しした通りです。
反面、効率化を目指してシステムの統合を図ったはずがERPシステムへの入力作業自体が負荷となっているケース、
或いは適正なデータ入力が行われずデータの正確さが担保されずうまく活用されないケースも存在します。
企業の主要業務を支えるシステムとして、この状況は当然ながら好ましい状況ではありません。
そこで、登場するのがRPAです。
RPAが得意とするのは以下の性質を持つ業務です。
企業のバックオフィス業務には、経理部門での入出金管理や決算処理、
事業部門では受発注管理や顧客情報、取引先情報、製品情報のマスターデータの定期的な更新作業など、
ルーティン化された業務が多々あります。
RPAはこういった繰り返し作業が発生する業務を日次・週次・月次問わず、ロボットに作業を代替することができます。
また、導入も低価格・低規模からスタートでき、業務削減効果も即時性があるため、実に多くの企業で導入されています。
よく混同されがちなAI(人工知能)は、RPAよりも上位の概念です。
そのため、RPAでは状況、内容を見て高次の判断が必要な業務には向いていません。
また、RPAの製品パッケージによってできること、できないこと、向き不向きがありますので、
違いや特徴をよく理解する必要があります
ERPが導入された段階で、ある程度業務プロセスは確立しているはずなので、比較的容易にRPAを導入することが可能です。
また、ERPの維持には適正なタイミングで正確かつ十分な量のデータ入力が必要なため、
ミスなく遅滞なく業務を遂行するRPAを導入が効果的だといえます。
ここでは実際にERPシステムにRPAを組み合わせ、業務量やコスト削減に成功した事例をいくつかご紹介します。
【RPAの活用によりERP導入コストを削減】
ERPを導入する際、自社の業務と既存のERPパッケージの機能を適合させて行うのが一般的です。
その際、ERPパッケージに適合しない業務は、人力のまま残すか、
業務プロセスを変更してシステムに適合させるか、或いはシステムのカスタマイズをするか選択しなければなりません。
業務プロセスの変更は、現場に大きな混乱をもたらす恐れがあり実作業者のことを考えると気が引けてしまうものです。
また、ERPの機能のカスタマイズとなると、当然ながら追加費用が発生します。
大企業で入力単位が何千、何百といった規模ならばコストに見合う効果が期待できるかもしれませんが、
想定外のコストは、あまり得策とは言えません。
人力で一業務だけ残すのも、できれば選択したくないかもしれません。
そんな時はRPAを検討し、カスタマイズを最小限にしてみるのはいかがでしょうか。
例えば売上管理業務において、通常なら取引先からの受領書を以って受注・出荷伝票に売上計上をしていくものですが、
出荷件数の多さによっては、出荷日を基準にみなしで売上計上していくことも検討する場合があるかと思います。
そこで出荷日をキーとし、伝票番号と紐付けて売上計上を行うよう組み立てたロボットを導入します。
すると、ERPシステムの機能を拡張することなく、業務を自動化・集約することができるようになります。
こうして、ERPパッケージで網羅できなかった業務をRPAで代替する取組みは、
システム導入を進めている多くの企業で実践されてきました。
この部分では、東芝がERPオペレーションを支援するツールとしてWeb-ERP「GLAMDIT」にフォーカスした、
業務自動化オプション「GLANDITロボットオプション」をリリースし、
企業ごとのカスタマイズに応えるシステム構築を提供しています。
【購買情報の転記作業】
ある食品メーカーでは、100社にも上る卸会社からExcelで送付される販売報告情報を手作業で集約、
システムに登録しており、その膨大な作業量から多くのリソースを消費しながら、
ヒューマンエラーによる入力ミスも散見されている状態でした。
また、各卸会社のExcelフォーマット統一化や入力ルールの厳密化も進めていましたが、
うまく統一化することができず、正しくシステムに落とし込めない状況が続いていたのです。
RPAを導入した直後はExcelを一元管理で集約し、
作業効率の大幅なスピードアップとヒューマンエラーのリスク回避を同時に実現しました。
卸会社の入力項目のずれもロボットが認識し、正しく転記されるようになりました。
最終的に自動でCSV形式に変換し、自動でシステムに取り込まれるようになったといいます。
これにより、従来4人で5営業日かかっていた作業がほぼなくなり、
他の業務に注力できる環境を整えることに成功しました。
以上の事例はほんの一例ですが、具体的な業務への導入がイメージできたのではないでしょうか。
ERPシステムとRPAテクノロジーの組み合わせは、その膨大な入力作業から解放される点において、
かなり親和性の高い業務であるといえます。
ERP特化型のRPAソリューションとしては、
上記の東芝「GLANDITロボットオプション」の他にも、
ドイツ製のERPパッケージ「SAP」に対応した、Uipath社の「Uipath SAPオートメーション」、
RPAテクノロジー社の「ERP Automation Robot For SAP ERP」などが存在しています。
SAP以外のERPであれば、
NECの「NEC Software Robot Solution」や日立の「RPA業務自動化ソリューション」など、
数多くの製品が出回るようになりました。
肝心なのは、どのソリューションを用いるにせよ、
現状の課題・業務の棚卸と、明確な業務プロセスの設定をする必要があります。
その際は一度RPAの知見のあるコンサルタントに相談するのもよいかもしれません。
いきなりソフトウェア各社に導入の相談をするよりも、効率的に現状把握と課題の発見を期待でき、
オーバースペックによる無駄なコストを回避し、実用的なシステム構築が可能になるかもしれません。