2018.10.01
【前回記事】
これまで、BPOの委託業者と自治体側、更にはオペレーター側について述べてきました。
50団体ぐらいの自治体にRPAの導入を検討しているか確認したところ、
半数以上の団体から担当者レベルでは検討したりしているようです。
しかし、課内会議や予算作成などの具体的な検討レベルまでに入っていないことも多いようです。
RPAとは、Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略語で、
それに近しい単語として、RDA(Robotic Desktop Automation:ロボティック・デスクトップ・オートメーション)
という言葉も出てきて、混乱もしてしまうかもしれません。
基本的には同じRPAという認識で問題ないかと思いますが、
RDAはデスクトップにいるロボットで、RPAはサーバーにいるロボット、
そのような認識で良いかと思います。
RPAを分かりやすく言うと、自分が楽するための道具です。
例えば、通販のコールセンターであれば、商品の注文をメールで受け、
それを受注システムに入力する作業、全てRPAがやってくれます。
今書いているコラムをロボットが書いてくれると非常に楽ですが、
ロボットには考える力(AI)はないので、残念ながら自力で書くしかないわけです。
小説自動生成プログラムなるものは色々あるようです。
RPAについては、本ブログで様々な内容で書かれていますが、イメージすることが難しい方は
Youtubeで【RPA】で検索し、尚且つフィルタで時間を【短い4分以内】に選択してください。
2分前後の動画が、RPAの実際動いている動画です。
長い動画については、企業の宣伝部分もあり、
RPAが実際動いている動画が確認することができますが、肝心のみたい動画を探すのに面倒です。
現在、地方自治体の多くが、BPOを利用しています。
BPO対象業務として、前回もお伝えした
フロント業務(受付・窓口)、バックヤード業務(事務)、および中間業務(コールセンター・カスタマーセンター)
に集約されるかと思います。
なぜ、この3つなのかというと、業務の多数が単純定型業務という認識であり、
低コストで委託できるBPO業者に委託しやすいという判断のもと、委託されています。
単純定型と言っても、実際は失敗している地方自治体も多く存在しています。
また、単純定型に分類できない業務も含まれているケースもあります。
単純定型業務と言っても、人間はミスする生き物ですから、ミスは必ず生じます。
人はそのミスに気付かないまま、処理を続けてしまいます。
ロボットの場合は、エラーが生じると教えてくれます。
ロボットがミスする場合、それは人間の指示ミスになります。
BPOコンサルタントや戦略コンサルティングファーム出身にBPOセンターの管理を任せて、
失敗したこともあります。
人を管理する、殊にBPOに従事する人間を管理するというのは至難の業です。
BPOとして合格水準に達している地方自治体BPO案件があれば、
20件中1件あれば良い方かと思います。
残りの19件は残念ながら合格レベルには達しません。
それでも許されるのが地方自治体BPOです。
実際、地方自治体BPOでやっていることは、
単純定型業務であり、RPAの対象領域が多く、ロボットで十分出来る業務が多いのですが、
残念ながらロボットではなく、人がやっています。
むしろ人よりもロボットにやらせた方が良い場合などが存在します。
実際、BPOの現場にいるとRPAをうまく活用すれば、
人がやるべき業務に専念でき、より良い効果が出ることでしょう。
地方自治体BPOの導入が活発になってきたのはこの数年です。
まだ未導入の団体もかなります。
窓口業務だけで見ると、政令都市や中核市レベルだと8割ぐらい、
それ以外の自治体では2割ぐらいが導入済みです。
ある程度の規模がないとスケールメリットが少ないため、
小規模の地方自治体にとっては窓口業務の導入は難しくもあります。
あくまでも個人的感覚によりますが、小規模自治体では、
窓口業務より税金や保険料の徴収系コールセンターなどを積極的に導入している傾向があります。
それは単純に貸金規制法が改定され、債権回収系の業者が積極的に働きかけた結果、
元々そのような税金などの徴収の為のいわゆるアウトバウンド発信業務、
そのような業務を自主的に行っている職員の方は一部であるくらいで、
あまり徴収系(債権回収)業務に力を入れてないため、
そのようなノウハウが地方自治体にはなかったためです。
日本年金機構が徴収系業務を
「外部に代替的に委託した」という背景も恐らくそういうことだと思われます。
また、窓口業務と言っても、フロアで来庁者を窓口に誘導するフロア係のみを場合もあれば、
正規職員が本来すべき内容までを委託しているケースまで、
かなり幅が広いので、一概に窓口業務と言っても、やっている業務範囲はかなり違います。
しかも、所管課の方針によって変わります。
実際、地方自治体が
フロント業務(受付・窓口)、バックヤード業務(事務)、中間業務(コールセンター・カスタマーセンター)
のうち、嘱託職員、臨時職員、または正職員が行っていた業務を民間事業者に委託する際、
自労連(日本自治体労働組合総連合)などの組合から反発も多く、
総務部の部長などはかなり折衝に苦労したと聞き及んでいます。
苦労して導入したBPO、それを地方自治体がやめる、
そういう選択肢は簡単に取りえないことでしょう。
実際に導入初年度の総務部長にお聴きすると、
成功して本当に良かったと感謝のお言葉を頂戴したことがあります。
実際、既に導入しているBPOをそのままRPAに変えるということは現実的に不可能です。
地方自治体BPOの目的の一つに雇用機会創出があり、そのような考えのもと、民間業者に委託しており、
働いている方の雇用の機会を奪ってまでRPAを導入しようとするのは、さすがに私個人でも反対します。
しかし、実際やっている業務そのものはRPAができる領域である。
実際、下記の業務については民間委託されてはいますが、RPAとの相性は非常に高いです。
●市民課窓口で転出届などを受けとり、行政システムに登録する。
●住民票の写しの請求書に基づいて住民票を発行する。
●国民健康保険の申請などを国保用のシステムに登録する。
●後期高齢者医療保険の申請などを後期用のシステムに登録する。
●介護保険の申請などを介護用のシステムに登録する。
●税金や国民健康保険料の文書催告を作成する。
しかし、RPAを導入しやすい業務だからといって、
現状それらの業務に従事している人たちが存在している限り、
それらの人達の雇用の機会を奪うことは出来ません。
一方、人が行う業務はミスが付き物です。
自治体BPOの現場では、業務の複雑化や従事者の高齢化が進んでおり、
人的ミスの発生比率はこの数年でかなり高まっています。
国民健康保険、後期高齢者医療保険、および介護保険、
この3つの業務に関しては制度の改定により複雑化しているため、
正規職員の多くが敬遠する部署でもあります。
特に国民健康保険と後期高齢者医療保険の申請関係では、
運用上、委託の限界ラインを越えてしまっていました。
実際、BPOに従事しているオペレーターの年齢層が上がり、
ラジオボタンの選択ミスが日常茶飯事でした。
また、国民健康保険課の多くは、
給付、賦課、収納(徴収)の3部門に分かれており、
3部門の横のつながりが希薄で、部門ごとの運用の差異に振り回されることなどもあります。
RPAを導入することで運用の差異をなくすこともでき、
BPO従事者の業務を窓口での対応時間を増やすことに使うことで、
より良い市民サービスが出来るのではないかと思います。
RPAを導入すれば、現在委託している業務のレベルを2段階は上げることが可能となります。
私が担当していた、国民健康保険課、納税課、収税課、債権管理課、介護保険課
などの具体的な運用面については次回に述べたいと思います。
【次回記事はこちら】
次回記事は10/16 09:00アップ予定!!