2018.09.26
今回のブログでは、オフィスで行われる事務作業について
既にAIの技術が開発され導入していっている事例をご紹介したいと思います。
昨今の電子化の流れを受け、ビジネス上の様々な情報が電子データとして扱えるようになってきました。
これは即ち、AIにとって「教師データ」となるソースが質量ともに高まったことを意味し、
ビジネスシーンにおけるAIの活躍の場を押し広げる事に繋がりました。
「教師データ」というのは、AIが学習する上で必要不可欠な参考データのことですが、
これは端的に言えば、今まで人間様が行っていた判断・意思決定の記録を意味します。
例えば、今まで社員が夜を徹して行っていた文書やメール文などの
チェック業務のレコードを「教師データ」としてAIに学習させれば、
次からはAIが自動で今までの判断基準を参考に人間の代わりにチェックを行ってくれるようになります。
今回のブログでは、AIを使ったユニークなビジネスソリューションを展開している、
FRONTEO社の取り組みをご紹介したいと思います。
FRONTEO社は2003年に設立、現在マザーズに上場しています。
KIBITとという独自の人工知能モデルを活用し、
法律事務所や医療機関、官公庁や民間企業へのサービス展開を行っている企業になります。
特に実績として名高いのは、
法律関係での「ディスカバリ」とよばれる
訴訟案件における証拠の収集や特定、提出にいたるプロセスと、
「フォレンジック」という
情報漏えい、談合・カルテル、横領、労務問題、ハラスメント問題、セキュリティ事案
をはじめとするさまざまな不正調査プロセスへのAI適用です。
これらいずれの業務も、本来人間(調査員)が行う場合は、
膨大な量の文書や電子メールでのやりとりのチェックが発生します。
この膨大な調査業務をAIで効率化するというのが、サービスのコンセプトになります。
参考: FRONTEO ホームページ(http://www.fronteo.com/ )
FRONTEO社では、Landscapingと行動情報科学を併せた同時の人工知能術を開発しており、
特徴としては少量の教師データで、パターン解析・学習をすることができることを謳っています。
この「教師データ」というものは、AIを実務で活用しようとするときに必ず直面する厄介な問題です。
AIの精度をそれなりのものにするためには、まず実際に人間が行った
評価・判断・意思決定に付随するデータをAIに「喰わせる」必要がありますが、
実際にそのファクトとなるデータがなかなか集まらず、
結果、AIの学習が滞り、「頭の悪い」AIしか育たないケースが散見されます。
これは、AIの一大分野である「画像認識」の技術でも言えることです。
よくIoTとの絡みで、工場内の検品業務にAIを導入するような取り組みが
新聞雑誌で取りざたされることがありますが、
この場合も事前に人間が判別した「不良品」の画像データを相当数AIに喰わせる必要がありますが、
そもそもそれほど不良品率が低い工場だと、教師データ自体が集まりません。
これを改善する方法として「不良品」ではなく「良品」のほうを教師データとしてAIに入れ、
その基準から外れたとAIが判断したものを「不良品」と一次判定するような取り組みが挙げられていたりします。
いずれにせよ、この工場の検品という領域ではまだ大ロット少品種の大量生産品が対象であり、
ジュエリーなどの小ロット多品種のケースではまだまだAIの導入の壁は高い印象です。
この「教師データ」の問題を、FRONTEOが得意とするフォレンジックの領域に当てはめると、
例えばそれは社内の社員の不正の証拠となる電子メールの数々が「教師データ」となります。
FRONTEOでは、おそらく膨大な数のクライアントにおける不正事例をもっており、
それをAIにインプットし学習させているのだと推測されます。
この社員のメール文面から不正示唆を判別する能力ですが、しっかりと学習されたAIであれば、
普通の一般的では見過ごしているような点まで気づいてくれるようになります。
例えば、一見、サプライヤーの担当者と親睦を深めるために飲みに誘うだけにしか見えない
メールであっても、わずかなニュアンスの違いを検知し、
談合の可能性を示唆してくれるようになります。
このような文書やメール文を解析し示唆をだすAI技術ですが、
この効能の潜在的価値はビジネス上で計り知れません。
そう、それは何も法律関係に事象にとどまらず、かなり広範囲に適用できる武器となりえます。
例えば、以下のようなシーンでの活用が見込めます。
ここで挙げた事例は、ほんの一部にしかすぎず、
アイデア次第では様々な用途にこの技術が使われうることは皆さん用意に想像できるかと思います。
要するにこの技術は、
「テキストデータ群から、ある傾向をもつものを自動で抽出する技術」
に他なりません。
我々の日常業務は常にドキュメントやメールといったテキストデータに囲まれています。
また、最近では音声データの自動テキスト化技術も急速に発展していっています。
これは即ち、
コールセンターでの応答や、入社面接での面談応答、会議の討議内容といったことまで自動でテキスト化され、
AIの恩恵に与れるようになるということです。
今まで熟練社員でしか見つけられなかった「気づき」のノウハウを、
入社1日目の新入社員でも享受できるようになる時代が到来しようとしています。
最後に、このKIBITのようなAI技術とRPAの関係について述べたいと思います。
RPAは他のコラムでもご紹介している通り、現在市場で実装されているものは「考える」力は持たず、
「手を動かす」方を中心に自動化するのが主流でした。
つまり、判断や示唆出しといったものではなく、
その後の定型操作・作業の自動化のみに特化しているということです。
一方、AIの技術というものは、まさに今回のコラムでご紹介したFRONTEO社の技術のように、
まさしく人間が「考える」とこであった判断・示唆出しを高度に自動化してくれます。
このAIとRPAが融合できたときに、
「考える」ことと「手を動かす」こと
が同一のPCもしくはサーバ上で行えるようになります。
これこそがロボットワーカーの最終形態とも呼べるものであります。
このAIとRPAの融合というテーマは、昔から様々な識者が唱えている事であり、
近い将来に実際の巷間のオフィスで実現化される可能性が高いと言えます。
そのような世界が到来した時、RPAの活用はさらにもう一段広がることは確実であり、
人間である社員側は今とはまた違う働き方を求められる世界がやってくることになります。