2018.09.14
弊社のRPA導入の最大の理由は
「事務員の人手不足を解消し、より専門的な知識を必要とする業務に時間を割くこと」です。
人手不足の問題は多くの中小企業が直面していると思います。
弊社の事務員は女性20名ほどで構成されており、仕事内容から3つのグループに分かれています。
産休・育休を積極的に取り入れているため、結婚や出産後も安定して勤めることができる反面、
復職後の席を空けておく必要があるので、安易に新しい社員を採用できないという問題があります。
しかしながら、現場は当然人手不足に陥り、以前よりも残業を強いられることになります。
このような背景の中で、今回、RPAを導入し事務仕事の機械化を進めようというプロジェクトが発足しました。
筆者は、そのプロジェクトチームのメンバーの一人であり、一事務員の立場です。
プロジェクトチームは、3つのグループを束ねるリーダーと
各グループから1名ずつ選出されたメンバーで構成されています。
人手不足はRPAでしか解消されないのか、と問われれば答えはNOです。
弊社でも当初派遣社員の雇用が検討されていました。
説明するまでもないですが、休職者が復職するまでの期間限定で派遣社員を雇い、
事務員の業務の負担を軽減するためです。
比較する際のポイントは下記の2点が挙がりました。
① 費用 ・・・ 経営者サイドで重要な検討事項
② 効果 ・・・ 事務員サイドの要求事項
一つ目の費用については、筆者は一事務員であり具体的な数字は把握していないため割愛しますが、
結論として派遣社員よりもRPAの方が安く済むとのことでした(長期的な目で見た結果かもしれません)。
二つ目の効果については、派遣社員の場合、教育時間を懸念する声が挙がりました。
また、時間を割いて教育したのに関わらず期間限定で辞めてしまうのは非効率であるという意見も挙がりました。
一方、RPAに関しては、最初にシナリオ作成や操作者の教育に時間が必要になりますが、
長く使っていけるという意味では効率的であるという肯定的な意見が多く挙がりました。
こうして、経営側と事務側の意見が一致する形で、弊社ではRPAの導入が決定することになりました。
弊社ではRPAソフトの中でNTT系のWinactorを導入しました。
理由はより感覚的に操作ができるからです。
弊社では、システム担当の社員がRPAの開発に携わるのではなく、
事務員が全て対応するという方法をとりました。
会社によっては情報システム課のような部署がまとめてシナリオ作成をする場合もあれば、
弊社のように現場の社員が作成する場合もあるようです。
事務員は、基本的システム系は弱かったため(筆者も専門知識はない)、
とっつきやすいソフトを選択しました。
下の画像は、Winactorの画面です。
シナリオを作成する画面ですが、ご覧の通りプログラミングのような専門知識は不要で、
必要なパーツが予め用意されています(パーツは表示されている部品は一部です)。
その項目を繋ぎ合わせていくとシナリオが完成するというイメージです。
例えば、エクセルを開いてA2セルの数値をコピーし、A3セルにペーストしたい場合は、
「エクセルを開く」→「A2セルに移動」→「選択中のセルをコピー」
→「A3セルに移動」→「選択中のセルにペースト」
という5つのパーツで表現することができます。
複雑な操作をしたい場合にはパーツを改造する必要が出てきますが、
一般的な事務作業には充分対応できるパーツが揃っています。
上述の通り、プロジェクトは4名で進められましたが、
各チームで仕事内容が異なるため、実際には各々が異なるシナリオ作成を進めることになりました。
弊社は3日間の保証プランに入ったため、
最初の3日間はWinactorの代理人の方にお越しいただきシナリオのベースを作成してもらいました。
(詳しい契約内容は把握しておりませんので割愛します。)
基本的に、Winactorは自分たちでシナリオを作成する(そのためにより感覚的な操作が可能)こと
をコンセプトとして商品を売り出しているため、代理人に作業してもらえる3日間は非常に貴重です。
自分たちでシナリオを作成するためのヒントをどれほどもらえるかが勝負になります。
保証期間に臨む際のポイントは下記の3点です。
① 自動化したい業務のフローを細部まで説明できるようにしておく
② 多くのシナリオに共通する部分を作成してもらう
③ より高度な操作を要するシナリオを作成してもらう
毎日何気なく行っている作業でも、機械にやらせようとすると
一つ一つの作業を順序だてて考える必要が出てきます。(人間がいかに優秀な動物であるかを実感します。)
例えば、Aのときは○をクリックし、Bのときは△をクリックするという簡単な操作も、機械だと次のように認識します。
「Aの場合→true」、「A以外の場合(つまり、ここではB)→false」、
「trueの場合→○をクリック」、「falseの場合→△をクリック」
このように、true/falseの場合分けのような部品が必要になります。
業務フローを細部まで理解しておくことで、代理人に的確な説明をすることができ、
短い保証期間を有効に使うことができます。
また、共通する事務作業の部分を作成してもらうこともおすすめします。
クライアント毎に異なるシステムを使用している場合もあると思いますが、
社内のデータベースの操作等は共通する部分だと思います。
その部分を作成してもらうことで、他のシナリオ作成時にインポートして再利用することができます。
最後に、より複雑なシナリオ作成を依頼することも重要です。
やはり、プロが作成するシナリオと初心者とでは雲泥の差です。
何が違うかというと、運用した際のエラーの数が全然違います。
プロのものは、エラー対策の工程が組まれているためです。
エラーの対策ができるまでにはWinactorの経験が必要となると言えます。
そのため、難関な作業は最初にプロに作成してもらうことが得策です。
実運用から半年以上が経過しましたが、確実に業務負担の軽減が実現しました。
今まで、エクセルに入力し、その情報をクライアントのシステムに入力し、
二つに齟齬がないかダブルチェックをし・・・
と随分無駄なことをしていたと思い知らされる日々です。
現在は、入力箇所が一つとなり、そこから機械が自動で必要な情報をピックアップしてくれます。
弊社では、クライアント毎に異なるシステムやフォーマットを使用しているため、
運用方法を覚えるということも重要な仕事の一つでした。
しかし、現在ではクライアントを意識することなく業務を統一化できています。
作業がより単純になることでミスも大幅に減り、
余った時間をより専門的な知識を要する業務に割くことができています。
残量時間でいうと半分になった人が大半です。
RPA導入により、操作する側の教育は依然として課題が多く残ります。
筆者もなかなか忙しい毎日を過ごしています。
新しいシナリオの作成も必要ですし、運用中のシナリオのエラー対策も欠かせません。
何度やってもエラーがなくならない箇所もあり、素人が操作する限界を感じることもあります。
そこで、RPA教育用の教材や研修の参加を会社から勧められたので受講を検討しているところです。
また、使う側(事務員)の教育も日々進めなければなりません。
事務員は今までとやり方が変わる部分を覚える必要があり、
例えばファイルを格納するフォルダを間違え、機械がファイルを認識しない等、
慣れるまでは人的ミスが発生することがあります。
こうした課題を一つ一つクリアにしていき、安定したRPA運用を実現していくことが、
プロジェクトチーム使命であります。