2018.09.05
昨今実に多くの企業で、業務効率化/スピードアップが喫緊の課題となっていることでしょう。
殊に中小企業においては、業務効率化に向けた施策として基幹システムの改修やワークフローの見直しを検討している企業も多いのではないでしょうか?
ここで早速RPAを用いたソリューションとそのインパクトをご紹介したいところですが、
今回は既存システムの改良およびIT投資の観点からアプローチしてみたいと思います。
大なり小なりもしくは事業内容の違いはあれど、
おそらくどんな企業にもさまざまな主要業務を支える基幹システムが存在しているはずです。
生産管理/販売管理/受発注管理/在庫管理/財務・会計/人事・給与等、
各部門が管轄している基幹システムが存在し、それぞれ独立してシステム構築されていることも多いのではないでしょうか。
そのためインターフェースはもちろん、データベースや入出力の仕様が異なり、
部門間をまたいだデータのやり取りではシステム間の連携に障壁が生じることも。
これは業務の遅滞や部門間コミュニケーションの希薄化・不和を招くこともあるため、
好ましい状態は言えません。(ただし、各部門内でセキュアに管理すべきシステムは例外)
業務効率化を考える上で、こうした基幹システムの実態を把握する必要があります。
最低限上記5つの観点からシステムを評価し、それぞれ役割を明確化⇒懸案事項の洗い出しを行います。
その後具体的な改善策を検討していくことになります。
前段で検討した結果、
各システムが独立しており経営に関する一連の状況をつかみにくい場合は基幹システムの統合を図るケースが存在します。
目まぐるしく変化するビジネスシーンでは、リアルタイムで情報を管理し、
必要に応じて可視化/分析することが求められます。
こういったニーズに対しては、売上状況や債務状況、在庫などの経営関する情報を一元化し、
全体像を可視化するシステムの導入が効果的です。
その際多く用いられるのは、ERP(Enterprise Resources Planning)パッケージです。
企業経営の基礎である資源を適切に分配し有効利用する考え方を基に、
「情報の一元管理」と「業務効率化」を目指すものです。
数あるERPパッケージの中でも、とりわけ多くの企業に導入されている“SAP”は圧倒的なシェアを誇り、
近年では中小企業へも導入が進んでいます。
SAPが他のERPパッケージと比べて優位性を有している点として、
といった面が挙げられる一方、
というデメリットも併せて吟味する必要があります。
とはいえ中小企業向けの比較的安価なプランも登場しており、また他のERPよりも専門エンジニアが多く、
比較的スムーズに導入できるといった面もあるので、一案として検討してみるのもいいでしょう。
以下に挙げられるのが一般的なERP導入までのプロセスです。
特段他のシステム導入時と大枠は変わりませんが、企業活動の根幹を成すシステムを作るため、
より明確にゴールを設定しかつ中長期的なビジネスプランニングの策定に役立つよう、
細部まで吟味する必要があります。
ここでは主要なフェーズについてその内容を提示します。
中長期計画などの経営戦略を参照し、現行システムを分析して課題を抽出することから始めます。
そこから導き出される目的には、「業務プロセスの全面刷新」や「内部統制の実現」等が挙げられることでしょう。
この目的によって、選定すべきERPパッケージや形態(オンプレミスorクラウド)が変わってきますので、
この部分はかなり時間をかけて取り組むべきフェーズです。
この段階で成果として達成しなければならない経営指標もある程度明らかにしておく必要があるでしょう。
目的と範囲によっては、自社で導入可能なケースもありますが、通常はベンダーを活用するケースがほとんど。
適用範囲についての業務分析がある程度済んだ段階で、ベンダーの選定に入ります。
あたり前ですが、パッケージ内容だけで判断せず幅広く提案を受け、
導入目的に沿った製品・形態を選択することが肝要です。
そのため提案依頼書には、このプロジェクトの目的や背景、予算、スケジュール、
現時点での業務分析結果の詳細を記述しておくことでベンダー側もこちらに寄り添いやすく、
実のある提案を受けることができます。
その際デモンストレーションを見せてもらうようにすれば実際のイメージも湧きやすく、判断材料の一つになり得るでしょう。
ERP導入で実行すべき業務とERPの機能を比較して、
現行プロセスから変更を要する業務を特定します(フィット&ギャップ分析)。
変更を要する部分については「業務をシステムに合わせる」、「基本パッケージにアドオンする」、
あるいは「人力でカバーする」といった対応方法が考えられます。
いずれの場合においても発注側が主体的に進めることで、
細大漏らさず必要要件が実装されるようにすることが重要です。
上記を決定したのち、変更を要さなかった部分と併せて新しい業務プロセスを作成しましょう。
この段階でデータ移行や受入テスト、業務切り替え、運用部門(ユーザー)の教育など、
導入計画をしっかり策定しておきます。
これらはデータ移行に関するコストやリードタイムを把握するために必要であり、
同時に遅滞なくリリースをするためにもこのフェーズで熟考すべきでしょう。
ERPは、納期通りにリリースできただけでは導入を成功したとは言えません。
あらかじめ設定した経営指標が目標値を達成して初めて成功したといえるのです。
そのためこの時点で導入後にモニタリングする経営指標と、目標値を設定しておくのが良いでしょう。
前段で検討した新しい業務プロセスに基づいてERPに必要なパラメータを設定します。
適用する業務分野に必要なデータベースを作成していきます。
ここで改めて運用部門と調整をし、リリース後にデータベースの抜け漏れが無いよう慎重に設定する必要があります。
後々修正できることもありますが、
運用部門と共通理解を持っておくことでリリース後に齟齬が起きないように努めるのが賢明でしょう。
こうすることで度重なる修正や例外処理の発生を最小限に留め、
新システムをいち早く標準化することも可能になります。
パッケージで対応できず、現行プロセスから変更を要する業務のアドオン開発が発生する際もこのフェーズで実行されます。
OSやデータベースシステムなどの基本システム、ソフトウェア等それぞれの単体テストが完了後、
ERP全体の結合テストを実施します。
結合テストでは、個々の機能を果たすためのプログラム部品(プログラムモジュール)を組み合わせて、
データの受け渡しがうまく行われているか、コードの記述様式は揃っているか、
データを授受するタイミングはずれていないか、といった点を確認します。
結合テストで不備が発見された際には、再度コーディングを行います。
結合テストと併せて負荷テストを実施し、業務ピーク時に遅滞なくシステムが動作するか確認し、
問題があればソフトウェアのチューニングやハードウェアの追加等、必要な措置を講じます。
リリースを直前に控え、その準備として必要なタスクは以下です。
これら準備のためのタスクが完了した段階で、リリース基準に達しているか判定を行います。
全体構成はもちろんのこと、設計・運用ポリシーに準拠しているか、
障害対策は想定しうる範囲で手順が確立されているか等あらゆる観点から審査します。
ここで全項目の基準が達成されて初めて、ユーザーへリリースすることが可能になるのです。
設計書・運用マニュアルに従い、システム運用とサービス提供を実施します。
加えて、前述の通り導入成功判定を実施します。
判定タイミングを設定し、経営指標が目標値以上を示せるか確認しましょう。
ERPの安定的な運用までは時間がかかるケースも多いです。
そのためリリース後も引き続きベンダーのサポートが得られる体制を構築しておくと良いでしょう。
ERPは企業活動の要衝を担う非常に「重い」システムです。
いざ導入してみてもうまくドライブしなかったり、かえって業務負担が増えたりするケースもあるようです。
それゆえ導入の企画段階から経営トップや運用部門が参画し、綿密にコミュニケーションをとる必要があります。
トップとは達成すべき指標、期待する導入結果と実現可能性を共有し、
運用部門(現場)とはユーザビリティ向上のためにヒアリングやデモンストレーションを繰り返し行います。
経営指標と現状の業務課題を常に念頭に置き、プロジェクトを進めること。
そしてベンダーに丸投げせず、自社で主体的にマネージすることで、スムーズな導入と明確な導入結果が得られるはずです。
ここまでERPシステムの概要、導入プロセスを述べてきました。
次回は親和性の高いRPAソリューションを組み合わせ、更なる効率化を検討していきましょう。