2018.08.22
この記事では、RPA導入に向けて2017年末から検討し、
2018年春に導入、運用を始めた一連の経緯から発生した問題点とその解決策を、
RPA導入責任者としての目線で生々しくお伝えしていきます。
ぜひ何か一つでもヒントになって頂ければ幸いです。
【前回記事】
*当社
・SynchRoidのサーバータイプを導入
なぜRPAを導入するのか、なぜRPAが必要なのか、どういった事を期待するのか、
数年先にどうなっていたいのか。
等、この根本的な部分がぶれてはその先進んだとしても、必ずどこかでトラブルが起きます。
当社では、以下の内容で各メンバーの理解を得ました。
● モチベーションを保てない、ルーティンワークを解消したい
● 負荷を軽減することで、慢性的な残業を解消したい
● 若手を下手な理由で辞めさせない
● 業務を標準化したい
ポイントは、“恰好つけない”“うそをつかない(自分に嘘をつかない)”“会社の現状・現実に沿った内容にする” 等です。
内容によっては自社の現状を切り刻むことになったり、誰かの気を害することもあるでしょうが、
痛みが伴う改善もあります。
導入責任者としては最初の踏ん張りどこです。
また、もう一つの解決策として、会社におけるRPA運用の“概念”を経営者から発信してもらうということもあります。
当社ではRPA5カ条を掲げ、経営層から発信してもらう事でRPAが進めやすくなりました。
1. RPAの活用は働き方改革とのデュアルアプローチで進める
2. RPAはインプットの置換でありコストダウンとイコールではない
3. RPAは万能ではない
4. RPAは人員削減のための道具ではない
5. RPAを使えることが新たなビジネスチャンスにつながる
等を掲げました。
この5箇条はネット記事で見かけたものを少し当社用にアレンジしたものとなります。
例えば、RPAロボット化候補業務のヒアリングを行っていた時に、
担当者「このエクセルシートにデータを入力して、保存して、このフォルダに置いたら後はマクロがやってくれます。」
私 「そのマクロは何をやっているのですか?マクロで処理された後はどうなるのですか?」
担当者「それは分かりません、、、」
といったやり取りが多々発生します。
私としては、そのマクロがやっている部分もRPA化できるのか、
業務ステップの効率化につながることができるのかを検討しなくてはならないため、
マクロがどのような事をやっているのか、マクロの仕様を含めて確認をしたかったのですが、
上記のやり取りになり、しかも“誰が作ったかわからない”マクロも残念ながら存在します。
現在、多くの企業でマクロが大活躍していると思いますが、現在マクロ関連で発生していることは、
そのまま意識しなければRPAでも同様に発生してしまいます。
そこで、当社ではそうならないように、下記項目が含まれるシートを作成し、RPAの意味、RPA化する理由、
ひいては業務の意味を継承していくことにしました。
●業務の概要・担当者
●ロボットのフロー図・RPAロボット制作者
●部位ごとの処理内容説明
●動作時の注意事項
●何をインプットするのか
●何がアウトプットされるのか
数多く作られることになるRPAロボットに対し、一つ一つこういった内容を作っていくことは非常に大変ですが、
これを怠ると世に言われる“野良ロボット”が氾濫することになってしまいます。
ここも担当者は踏ん張りどころです。
当社が採用したRPA(SynchRoid)の管理システム(Management Console)は、
残念ながらあまり直感的に扱えるツールではありませんでした。
*これはデモ採用時には気づけない部分です。
しかし、これを使わなければ(使いこなさなければ)ならないため、
システムの制約を十分に理解したうえで、これらを定義していく必要があります。
●RPAロボット
・ロボット名
・保存するフォルダ名、またその構成(業務ごと?部門ごと?)
●ユーザー
・ユーザー名
・ユーザーグループ名(構成)*部門間移動が多い会社なのかどうか
① 自分の会社は、業務内容が固定的か、流動的か、従業員の入れ替わり、部門間移動が多いかどうかを、
自部門だけでなく会社全体を考えて、正確に把握する。
② 管理システム側の制約を正確に把握する。
・検索できるか(検索は日本語・アルファベットどちらもOKか?)
・検索範囲(すべて?ロボット名?フォルダ名のみ?等)
・ロボット名の付け方に制約はないか?(”-”や”_”が使えないとか)
・フォルダ構成は何層までいけるのか
・ユーザーグループは何層まで?
③ 30ほどRPAロボット候補業務をみて、これをきれいに並べるにはどうすればよいかを考える
*当社では、RPAロボットを管理表で管理しています。
そこで各ロボットに採番しており、それをロボット名につけています。
これらをきれいにしないと、利用者側が迷い、結果としてRPA担当者側への問い合わせが増えていきます。
なお、作りながらルールを固めていくというやり方もあると思いますが、私としては初期段階で7割方固めた方が、
作る方としても楽になっていくと思います。
当社はエンジニア会社ではないため、社内にプログラミングの素養があるものはほとんどいません。
PCに明るいものが情報システム部門に数名いるという環境ですと、RPAを導入しても、
ロボットが出来上がらず、宝の持ち腐れとなってしまいます。
そのため、当社ではRPAベンダーが提供する教育プログラムや、技術者の常駐サービスを利用しました。
(中小企業にとっては決して安い費用ではないのですが、
エンジニアがいない会社であれば、ロボット作りの加速のために必要と思います。)
当初、試験導入の1か月の間、出来上がったRPAプログラムはわずか数件でしたが、
エンジニア常駐サービスを利用することで各段に制作スピードが上がりました。
またその際、以下対応をおすすめします。
・質問を事前に(ある程度)まとめる
・技術者とのやり取りを一つ一つ、メモをしRPA作成者で共有する
なお、常駐サービスにおいて確認した方が良い項目は下記をおすすめします。
・会社独自で稼働しているツール(基幹システムやグループウェア等)を用いるもの
・業界ルールによる制約が関係するもの(固いセキュリティはRPAの障害になります)
・客先のEDIサイトでの情報取得方法等
特に、基幹システムやグループウェア、客先EDIサイトなど業務に直結するもの、
セキュリティ上の制約については、RPAそのものに影響しますので、
こういった内容は技術者の力にしっかりと頼る必要があります。
話題のRPAを導入するとなれば、経営層が知りたいことはただ一つ、“費用対効果”です。
まずはKPIの設定ですが、当社ではわかりやすい数字を適当に掲げました。
〇千時間/年の削減!とかです。
RPA導入責任者としては、難しいところですが、あえて難しく考えないことをお勧めします。
なぜなら誰もがRPA初体験のため答えを知りませんし、結果は後からついてくるものです。
また、効果は時間だけに現れるものでもありません。
ですので、えいや!で決めた数字で良いのです。
(集めたRPA作成リクエスト業務の作業時間を積算すれば意外とそれにはまっていたりしているものです)
また成果報告についてですが、ここでもRPA担当者は、
RPA開発における苦労を理解されないまま、効果の説明を求められます。
また、相手はRPAを正確に把握していなかったり、システム等に明るくない方もいたりしています。
そういった相手へRPAの成果報告は大変ですが、ポイントを押さえれば少しは楽になります。
そこで、私のおすすめ事前準備内容をお伝えします。
*なお、RPAサーバー内で完結するRPAの場合、“動き”がなく、
RPAに詳しくない人が見たら何が何だか分かりません。
そのため、PCをリモートで操作する系のRPAロボットの動画の方がよりインパクト強く伝えられると思います。
初期段階での報告にはとても効果を発揮します。
また突然の声掛けにも、動画を撮影しておけば安心です。
(RPAって作ってしまえば簡単に動かせると思っている人も多いです。
そこで事前準備が必要でうんぬんと説明するとRPAに対してネガティブな感情を与えてしまいかねません)
*これは説明不要ですね。
● 業務担当者の声
*シンプルに「楽になった」だけでなく、「ミスがなくなった」「心理的負荷が軽減された」等、
メンタルにつながる効果はこういった声を媒体にして伝えていきたいです。
他にも多数ありますが、ここでは以上とさせて頂きます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。