2018.08.10
経済産業省が2015年にBPO(アウトソーシング)サービスに関する資料を公表していますが、
それによると日本におけるBPO市場規模は、1,600,000百万円となっています。
業務別の市場規規模は以下のとおりとなっています。
コンタクトセンター 360,000百万円:コールセンター
ヘルプデスク 126,240百万円:問い合わせ対応
フルフィルメント 30,400百万円:EC販売、在庫管理、ピッキング
人事 80,000百万円:給与計算、社会保険手続き
福利厚生 36,800百万円:福利厚生業務
総務 12,480百万円:備品管理、文書管理
経理 41,280百万円:記帳代行、支払管理、債権債務管理
購買・調達 3,520百万円:購買調達
営業 68,800百万円:営業代行
コア部門単純業務 564,800百万円:企業のコア部門が行う業務
業界固有業務 62,400百万円:特定業界の独自業務
その他 213,280百万円:包括的なサービスなど
市場規模は2022年までの年間平均成長率は3%前後という調査結果もあります。
また日本はアメリカに比べ、コア業務への集中を意図したBPO等の活用が遅れているため、
日本でのBPO市場は拡大を続ける見込みです。
なぜBPOサービスの必要性が高まっているかというと、働き方が変わったからということに尽きると思います。
これまでの、一人当たりのアウトプット量を最大化させる、高度成長期の製造業のような働き方から、
クリエイティビティが求められる働き方に変化しつつあります。
2014年に経済産業省から「サービス産業の高付加価値化に関する研究会の報告書」が公表されました。
この報告書が作成された背景として次の記載があります。
“我が国のサービス産業は、GDPの約7割を占め、雇用の面からも大きなウェイトを占めており、経済全体に与える影響が高まっています。我が国経済の再生やデフレ脱却のためには、サービス産業の生産性向上・高付加価値化が必要です。日本再興戦略(平成25年6月閣議決定)においても、「付加価値の高いサービス産業の創出を図る」との方針が示されています。”
また、サービス産業の生産性向上・高付加価値化の実現に向けた主な検討事項の一つとして、
「ビジネス支援サービスの活用促進」が掲げられています。
その調査報告コメントとして次の記述がありました。
“企業においては、BPO サービス等の外部リソース(ビジネス支援サービス)を戦略的に活用することで、当該業務のコスト削減のみならず、ビジネスプロセス全体の見直し等につながると言われている。実際、ビジネス支援サービスを利用したサービス事業者の多くは、経営資源のコア業務への集中、コスト削減、業務の効率化といった生産性・付加価値向上の効果を得ている。ビジネス支援サービスは、それ自体が成長の期待できる一つのサービス産業であるとともに、他の産業の生産性への波及効果も大きく、これを促進していくことはサービス産業の高生産性・高付加価値化のための重要な手段の一つと考えられる。”
事業を進める上では様々な「やるべきこと」が出てきますが、時間は有限です。
BPOサービスによって優先順位を明確化し、「しないこと」を積極的に決めることが重要です。
経理財務業務にBPOを導入する目的は、
「経営資源(人的リソース)をコア業務に集中させる」
「コスト削減」
「業務プロセスの標準化」
「社員退職などに対する業務継続性の確保」
などがあります。
どの目的も重要ですが、BPO導入の際は、どの目的を最重要目的とするのかを明確に決めておくことが大切です。
「経営資源(人的リソース)をコア業務に集中させる」という目的の場合、
経理財務部門におけるコア業務、ノンコア業務の分類は概ね以下のように区分できると思います。
現状の業務ではノンコア業務をこなすことで手一杯で、
コア業務を行えない又はコア業務を習得するための時間がないなどの課題がある場合、
BPOを導入することでコア業務に集中できたり、コア業務を習得するための時間が確保できます。
これによって、経営判断を行うために必要な情報を管理会計で整備する、
原価管理を適切に行うための原価計算制度を構築する、
企業価値をあげるためのファイナンスなどのノウハウが社内に蓄積するため、
他社との競争優位性が高められることが期待できます。
人材不足は他の業種同様、経理財務部門にとっても生じています。
経理財務部員が1人程度の中小企業、経理財務部員育成途中の新興上場企業、大企業の子会社で経理財務部員が少数の会社などの会社で、
ベテラン人員が退職すると、経理財務部門は混乱し、在職者に過度の負担がかかることになります。
特に中小企業などは、業務が標準化されておらず、マニュアルも十分に整備されていないブラックボックス化状態であることが多いです。
十分な引継ぎを受けないまま、在職者によってさらなるブラックボックス化が図られ、
ルーティンワークに飽き、他の会社に転職を考えるようになる悪循環が生まれます。
退職者の穴埋めで社員を採用する場合、ある程度の経理財務知識がある社員を採用するには、
多額のコストがかかることが多いです。
このような課題を解決するソリューションの一つにBPOがあります。
BPOを導入するために業務の標準化を図り、マニュアルを整備する、
そしてノンコア業務であるルーティンワークはBPOすることで、経理財務部員がコア業務に注力できる環境が整います。
コア業務に注力できれば、本人のスキルアップや、やりがいにつながり、
経理財務部門の悪循環から解放されることが期待できます。
経理財務部門で発生する不正行為の一つに現金預金の横領があります。
横領事件で逮捕されることが多いのは、「経理」として働いていた人です。
ニュースになる横領事件では、億単位の金額が横領されていることが多いですが、
その金額がすべて返済されることは少ないようです。
横領被害は会社にとって大きな損失になり、取引先や利害関係者への信頼にも影響することになります。
大企業などでは、経理財務部門の職員が複数人いるため、
「複数の人が業務を行っている」
「一定期間で配置転換がある」
「上司の適正なチェックが入る」
「経理(会計記帳など)と財務(現預金の入出金)が分離されている」
などの環境があるため、比較的横領などの不正は発生しにくいです。
一方で中小企業などの経理財務部門は1人で経理と財務を兼任しているケースが多いため、
他の人の目が届かず、チェック機能が働かないことがあります。
このような環境下では、横領などの不正が発生しやすくなります。
このように不正が発生しやすい環境から不正が発生しにくい環境にする場合にもBPOは有用であると考えます。
例えば、経理(会計記帳など)は経理職員が行い、その承認は顧問の会計事務所に依頼します。
一方財務は、BPO会社職員が行い、その承認はBPO会社職員の上席者が行うことにより、
経理と財務が分かれさらに承認者も異なるので統制が働き、不正が発生しにくい環境になります。
このように不正防止策の一つとしてもBPOは活用できます。
上記のように、BPOを経理財務部門における課題解決や不正防止策とし活用しつつ、
コア業務に注力することによって、他社との競争優位性を高めたり、
経営効率を上げていくことが大きく期待できます。