2018.07.27
どのような企業であっても欠かすことのできない重要な業務の一つが、「資金管理」です。
「黒字倒産」という言葉があるように、どんなに業績好調の企業であっても、資金繰りには常に神経を尖らせていることでしょう。
資金繰りがスムーズに流れていくよう管理するためには、出金の金額とタイミング、入金の金額とタイミングを、
できるだけ早く、できるだけ正確に、できるだけ漏れなく、情報収集する必要があります。
資金管理は、大企業であっても中小企業であっても、非常に重要な業務であることに変わりはありませんが、
ここでは「財務部」という独立した部署が存在しない中小企業を想定して考えていきましょう。
そのような場合、一般的には「経理部」の担当者が、日々の経理業務に追われつつ、資金管理にも対応していくことになります。
また、中小企業の場合、社長と一部の役員のみで企画開発や営業の業務に対応していることがあるかもしれませんが、
ここでは「事業部」として複数名の社員がいる企業を前提としています。
自社の商品やサービスを売り込むためには、さまざまな資料づくりに励まなければなりませんし、
より良い取引先を選定して部品等を仕入れていく必要があります。
取引先と進めているプロジェクトは、機密事項が多く、外部だけでなく、
社内でも関係者以外には情報漏洩しないように神経をすり減らしているかもしれません。
プロジェクトの対応を進めていく過程で、原価や経費の支払いが発生します。
その際、取引先から受け取った請求書の原本を経理部へ提出するだけで終わればそれほど煩わしくはないのですが、
請求書1枚ごとに「支払依頼伝票」を記入し、上司の印鑑やサインをもらった上で経理部へ提出しなければならないため、
これが意外と面倒な作業になっているのではないでしょうか。
「事業部」の社員からすれば、「支払依頼伝票」の作成にどれだけ時間を割いても、売上金額や取扱金額が増えるわけではありませんから、
できることならこのような社内業務は極力簡単に済ませたいものでしょう。
その上で、契約獲得のために時間を有効活用していきたいのではないでしょうか。
あるいは、取引先からいろいろな要望があれば、すぐにでもその対応に取り掛かりたいと思っているかもしれません。
逆に、ご契約をいただき、売上計上する場合はどうでしょうか。
「やっと契約までたどり着いたぞ!」と喜んでいると、上司からすぐに指摘されます。
「入金伝票を回しておいて」と。
「入金伝票」(あるいは「売上伝票」)を事業部から経理部へ提出することで、
経理部が請求書を発行し、角印を押した請求書原本を今度はこちらから顧客先へ持っていく必要があります。
事業部の社員からすれば、「出金伝票」にしろ「入金伝票」にしろ、それらは社内向けの業務ですから、
「こんな作業は、経理部のほうで対応してもらえないかなあ?」と思っているかもしれません。
あるいは、「できることなら、もっと簡単にしてほしい」と願っていても、
経理部もかなり少ない人数で対応していることから、なかなかそのことを相談する機会がないかもしれません。
「経理部」では、日々発生する資金の出金や入金を1件ずつチェックし、経理ソフトに入力していきます。
ときには、内容不明の入金があるかもしれません。
その場合は、まずは該当しそうな社員に聞いていきます。
社内で原因が特定できれば、その時点で追加仕訳や修正仕訳を行い、経理ソフト上の現金・預金の残高と、
実際の現金・預金の残高を一致させます。
でも、社内では原因を特定することができなければ、やむを得ず取引先の担当者に聞かなければならなくなります。
「申し訳ございませんが、この入金は、どのような内容のものでしたか?」と。
逆に、取引先から振込み手続きの催促を受けることがあるかもしれません。
急に取引先の担当者から経理部へ連絡が入り、
「昨日が期日の請求書を発行しておりましたが、まだ入金が確認できません。どうなっていますか?」と質問されます。
穏やかに催促されることもあれば、厳しく指摘されることもあるでしょう。
このような場合、経理部のミスであれば、速やかに振込み手続きを行い、
次から同じようなミスをしないように反省しなければなりませんが、
むしろ経理部に過失がない場合のほうがこのあとの対応が大変です。
日々の業務をいったん脇に置いて、速やかに社内で原因究明に取り掛からなければなりません。
ようやくある社員が請求書の提出を忘れていたことが判明したとき、
経理部担当者としては、まずは上司に至急振込みすべき内容であることの裏付けをとった上で、
取引先にお詫びの電話をしなければなりません。
「すみませんでした。こちらの手違いで、まだ振込みができていませんでした。明日中に、必ず振り込みます」と。
内心は「私は何も悪くないのだけどなあ」と思っていたとしても、会社としてのミスですからやむを得ません。
それでも、取引先から催促されることのほうがよい場合もあります。
手形決済日に万一資金ショートしていたら…。
想像するだけでも背筋が寒くなってきます。
このような企業の場合、どこに問題があるのでしょうか。
「慢性的な人手不足」と言えるかもしれませんが、仮に社員を増やしたとしても、
作業の流れが今までと変わらなければ根本的な問題解決には至らないかもしれません。
つまり、今までのやり方に慣れてしまっているため、社内業務の改革が後回しになっていることが問題と言えるのかもしれません。
多少作業効率が悪くても、大きな問題になり得ない社内業務であれば、むしろ「改革」などしないほうがよいこともあるでしょう。
でも、「資金管理」は失敗が許されませんので、
失敗するリスクを極力なくしていく工夫が一刻も速く求められているのではないでしょうか。
そこで、出金伝票(支払依頼伝票)、入金伝票(売上伝票)を自動集計するRPAを提案したいと思います。
「事業部」の社員からすれば、「内向き」なこれらの伝票作成業務は、できるだけ簡単なものであってほしいと願っています。
また、「経理部」の社員からすれば、これらの伝票が速く正確に、しかも漏れなく回収することができることを願っています。
RPAを導入することで、「事業部」の社員のところで情報を停滞させることがないように、
すぐに「出金」や「入金」を「経理部」へ知らせることができるようにしていきます。
具体的には、「出金」専用のメールアドレス、「入金」専用のメールアドレスを設置し、
それぞれに請求書や契約書等の画像を添付した上でメール送信することが考えられます。
あるいは、「メールの送受信」という行為にリスクがあると判断すれば、
クラウド上に「出金」専用ファイル、「入金」専用ファイルを立ち上げ、
「金額、期日、取引先、内容」をすぐに入力できるようにすることも考えられるでしょう。
出金と入金の情報はトップシークレットなものですから、
絶対に外部へ漏れることがないように細心の注意を払っていく必要があります。
これらの入力情報をRPAが自動集計することで、
「いつ、どれだけの金額を出金しなければならないか、入金されてくるか」をより早く、より正確に管理することが可能となります。
もちろん、これらの集計情報は権限のある一部社員のみが見ることができるように設定する必要がありますので、
一部社員の負担とならないよう、RPAでできることは極力RPAに委ねていくことが重要です。
また、取引先から事業部の担当者に渡された請求書原本は、経理部へ持っていくだけでよいこととします。
クラウド上に入力された情報をもとに、自動で「支払依頼伝票」が作成できるようにしておけば、
経理部としては「請求書原本が提出された伝票と、まだ提出されていない伝票」というように管理しやすくなります。
その上で、急ぎの案件でなければ、例えば一週間に一度、
事業部の上司にまとめて経理担当者から「支払依頼伝票」を提出し、上司にサインしてもらうことも可能となるでしょう。
「資金管理」のポイントは、いかに速く、いかに正確に、いかに漏れなく、
出金と入金の情報収集を行うことができるかどうかにあります。
これはまさに、RPAが得意とする分野です。
資金管理は失敗が許されない分、より多くの企業で導入する価値のある業務と言えるのではないでしょうか。