2018.07.23
直近で地方自治体におけるRPA導入のポイントについて述べられていたので、
地方自治体BPOとRPAがどのように繋がっていくのかを何回かに分けて述べていきたいと思います。
本日は概要部分です。
本日のコラム担当は複数の地方自治体での業務経験があるので、実例を交えていきますが、
あくまでも私が知っているその一面のみになりますので、
こういうケースもあるなどあれば、こちらよりお知らせいただければ幸いです。
地方自治体がBPOを積極的に活用するようになったのは、
2006年に内閣府公共サービス改革推進室が中心となって制定された公共サービス改革法の交付が要因の一つであると言われています。
正式な名称は「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」と、
内容については想像しやすいと思いますが、総務省にある概略は下記の通りです。
“国の行政機関等又は地方公共団体が自ら実施する公共サービスに関し、その実施を民間が担うことができるものは民間にゆだねる観点から、これを見直し、民間事業者の創意と工夫が反映されることが期待される一体の業務を選定して官民競争入札又は民間競争入札に付することにより、公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図る改革(競争の導入による公共サービスの改革)を実施するため、その基本理念、公共サービス改革基本方針の策定、官民競争入札及び民間競争入札の手続、落札した民間事業者が公共サービスを実施するために必要な措置、官民競争入札等監理委員会の設置その他の必要な事項を定める。”
簡単にまとめると、民間競争入札によって透明かつ公正公平な競争と民間による創意工夫により良質な住民サービスが安価に提供できるための法律です。
もっと簡単に言えば、民間にできることは民間に任せたら、サービスも向上するし、経費も削減できるのではないかということです。
今まで地方自治体が民間委託をしていなかったわけでなく、アウトソーシングという形では民間委託していました。
例えば、給食センター運営やスポーツセンターの管理などです。
しかし、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)という形では民間委託は少なかったかと思います。
地方自治体の職員が行う業務のうちでBPO化できる事とできない事の選別は難しく、
法律や住民も関係してくるので意外と悩ましいところです。
業務を大雑把に分類すると、単純業務と専門業務、定型業務と非定型業務、
それ以外に公権力の行使と政策立案など公務員しか出来ない専権業務の5つに分類することができます。
その中で単純定型業務をまず民間に委託するところからスタートしました。
余談ですが、アウトソーシングとBPOの違いを聞かれることがあります。
BPOはアウトソーシングの一部であり、例えていうなら、
出前を頼むとアウトソーシング、自分で作るけど材料だけは注文して配達してもらうとBPO、
そういう違いという説明を良くします。
BPO事業者に在籍していた筆者は、地方自治体の職員に対し、
「最高の材料を用意することはできますが、場合によっては下味まで付けることも出来ます。
でも最後に料理するのは職員の方なので、職員の方の腕次第です。」
と言ったことがあります。
それに対して地方自治体の職員の方が「それでも失敗するのが公務員、何から何まで準備されても何もしないのが公務員」と言われ、苦笑いをした記憶があります。
どのような業務が民間に委託されていったかというと代表的なものは窓口業務です。
ある自治体職員の方が言うには、「上(首長や局長など)の人間は、国鉄が民営化(JR)されて、駅員の対応が良くなったと評価されたから、それくらい期待したのでは?」と言っていましたが、皆様のお住まいの市役所や区役所はどうでしょうか?
この10数年で対応が良くなったでしょうか?
民間委託している窓口と民間委託していない窓口の簡単な見分け方法としては制服です。
制服を着用している場合は民間委託している可能性が高いです。
制服を用意していない場合は、ネームホルダーなどで民間委託されているかどうか判断はしやすいかと思います。
全ての自治体が窓口業務を民間委託していることもなく、
案内(フロア)係だけを民間委託しているケースなど自治体によって窓口業務の民間委託は千差万別です。
ある地方自治体に行けば、時間帯によっては、案内(フロア)係の方が来庁している住民よりも多いようなこともあります。
ではなぜ窓口業務からなのかというと、下記リンクにある通り、内閣で閣議決定され、特に窓口業務については、民間委託を推奨しているからです。
「経済財政運営と改革の基本方針2015 ~経済再生なくして財政健全化なし~」(骨太方針)
内閣府のホームページには優良事例集まで作っています。
実際、現場で窓口業務の委託を行った地方自治体の職員の方に聞くと好評なことが多く、市民の方からも好評なケースが多いです。
ごく少数ですが、民間業者の人間に個人情報を見られたくないとの批判もあり、
地方自治体職員がBPO化するにあたって、民間委託して個人情報がちゃんと取り扱われるのだろうかという点を不安視しています。
実際に民間委託して、BPOオペレーターが友人の情報を見て、
その友人に教えたではないかということは過去にあったという話は何度か耳にしています。
情報の流出というのはどの業界どの分野でもゼロにすることは難しく、限りなくゼロに近づけるしかないのですが、
そういった点ではRPAをうまく活用することで防ぐこともできたかと思います。
窓口業務を委託する課としては、来庁者数が多い課、代表的なのは市民課です。
国民健康保険課も来庁者は多いのですが、国民健康保険課の窓口業務の民間委託は進んでいないのが現状です。
それは国民健康保険課の業務内容が単純ではなく専門業務に分類されるからです。
一般的に国民健康保険課は国民健康保険だけを扱う部署ではなく、後期高齢者医療保険も扱っており、
各保険で運営が異なっており、使うシステムも違い、更に制度も多い分野で、難易度が高い業務と言われています。
地方自治体によっては、国民健康保険課と後期高齢者医療保険課に分けている地方自治体もあります。
複数の地方自治体の職員に聞くと健康保険課は業務範囲が広く、覚えることも多い、
また窓口の対応も難しいから民間委託したいが、どのように民間に委託すればよいのか分からず、
民間委託が頓挫したなんて話も耳にします。
窓口業務以外にも単純で定型業務である事務だと封緘封入作業などもよく委託される業務の一つです。
探せば色々あり、地方自治体BPO業務は拡大の一途をたどることになり、
ある調査では2019年度の市場規模は3兆9,883億円になるとも言われています。
具体的にはどのような業務がBPO化されたかというと、税金や水道料金などの徴収業務です。
比較的最近だと各自治体に置かれたマイナンバー関連のコールセンターも民間委託されていました。
今まで述べてきた窓口業務や事務業務は単純業務の範囲内のもので、単純定型業務の一つとして委託されていました。
しかし、地方自治体BPO業務は拡大し、現在は、単純業務から専門業務、定型業務から非定型業務分野のBPO化をどのようにすべきか検討段階に入っています。
専門業務や非定型業務をどのようにBPO化すればよいのか悩んでいる自治体の職員の方からご相談を受けるケースは多々あり、
多くの地方自治体の職員はこのあたりで頭を悩ませているようです。
行政事務のノウハウはそもそも民間にはなく、民間委託して失敗した事例も良く聞きます。
RPAもBPOの一部ですが、RPAをどのように導入するのか考えるのも地方自治体職員の課題となりそうです。
次回へ続く