2018.06.27
前回は、中小企業の「請求書照合・計上業務」と「入金・出金情報の会計システム入力業務」のRPA活用について紹介しました。
導入方法は簡単であり、効率もとてもよく、費用対効果は抜群です。
今回は前回の続きで、「請求書発行業務」のRPA活用について、実用例を見ながら紹介したいと思います。
「請求書発行」業務はほぼどの企業にとっても不可欠な業務です。
他の経理業務と同じく、量が多く、入力やフォーマット変換などの単純作業が多いです。
しかも、成長の早い中小企業にとって、事業が拡大すればするほど、請求書発行の量が増え、経理部門の負担もどんどん大きくなります。
今回紹介する企業の中でも、月180時間以上請求書発行業務に時間を取られる企業があります。
では、A社、B社の「請求書発行業務」RPA化の事例をみていきましょう。
多営業所展開のA社はシステムを導入し、請求書発行業務はほぼシステムで行っていますが、
システム操作の手作業部分はまだ多くあり、毎月多くの時間が取られています。
業務の流れを簡単に説明すると、以下の図になります:
まず、請求書情報入力の担当者が毎日各営業所で請求書情報を定形のExcelフォーマットに入力し、メールで経理部門へ送付します。
経理部門がメールを受け取り(請求書情報取得)、その中の請求書情報をみて、
営業が契約時にシステム内に入力した請求書情報などとあっているかをチェックします(請求書情報照合)。
この段階で、すでに多くの作業が発生しています。
そして、請求書発行リストを作成するために、システムから「未入金一覧」CSVファイルを出力し、
必要なフォーマットに変換します。
続いて、担当者がリストを見て、請求書発行対象外(日付はまだ先なものなど)項目を見つけ出し、消します。
これで請求書発行リスト(Excelファイル)は出来上がりです。
そして、この請求書発行リストを「請求金額計算システム」にインポートし、
「請求金額計算」(値引きなどの情報)を行います。
Excelファイルをインポートすればシステムが自動計算しますが、
ファイル形式変換やインポート実行などは手で作業しないといけません。
計算終わったら、システムから請求金額の計算結果ファイルが作られ、
このファイルをシステムにインポートします。
ここまでやって、ようやくシステムから仮請求書(PDF)が発行できます。
続いて、仮請求書を各営業担当にメールで送信し、内容の確認を行います。
請求書の量が多く、メール送付もとても時間がかかります。
確認結果が営業からメールで返信され、修正点があれば経理が返信し、そのまま修正します。
問題なければそのまま本番の請求書発行に入ります。
以上のプロセスはほぼシステムを利用していますが、手で操作する部分がとても多く、
毎月必要な時間が多いため、経理担当者への負担が大きいです。
詳しく見ると、これらの操作は大まか三つに分けられます。
すなわち、システム操作、Excelファイル変換、データ照合です。
いずれもRPAの得意分野であり、RPA導入方法すると以下のように、営業確認の段階以外、ほぼ全てRPA化可能です。
このように、請求書情報はRPAがメールの中のExcelファイルを取得し、システムの中の情報と照合します。
そのあと、事前に定義した書式に変換し、金額計算のシステムにインポートします。
終わったらそのまま計算結果をシステムに取り込みます。
そして、仮請求書PDFを発行し、定形メールを各担当者に送ります。
この一連の作業はほぼ中断せずにRPA化することが可能です。
経理担当者はただRPAが処理できないエラーやイレギュラーなどを対応すればよいので、大幅に時間を節約できます。
B社はA社と異なり、元々のシステムでは請求書発行の機能は含まれ、中間ファイル変換の回数もそれほど多くありません。
図のように、まず各営業担当が入力した請求書情報を社内のシステムから取得します。
発行段階前に、すでに金額等を確認済みのため、もう一度確認する必要はありません。
そして、システムから未入金一覧リストCSVを出力し、編集しやすくするために書式変更等もします。
また、そのなかから請求書発行対象外(未来日付のもの等)を消します(請求書発行対象リスト作成)。
作業量が多く、この段階までで、毎月40時間以上かかっています。
また、一部の請求書は取引先のご要望により一枚を複数枚に分割することもあります。
そして、請求書を印刷し、郵送します。
一部は取引先の要望によりPDFで発行し、メール送付します。
この印刷段階では一つの問題として、システム上印刷は一括でできず、20枚単位の印刷しかできません。
そのため、人が複数回操作しないといけないので、他の作業に集中するのが難しいです。
この流れを見て、やはり完全にRPA化するのが難しいかもしれませんが、
うまく使って効率向上させる方法はまだあります。
図のように、請求書情報取得から請求書発行対象リストまではRPA化可能です。
なぜなら、これらはExcelやシステム操作がメインだからです。
発行対象外業務のピックアップも事前に定義すれば、RPAも対応可能となります。
請求書分割はやはり基準があいまいなので、手作業で行うしかありません。
また、請求書印刷も簡単に自動化可能です。
印刷対象を選択し、印刷ボタンを押すだけのロボットがホントに必要なのか?という疑問があるかもしれませんが、
実際、B社は毎月印刷だけで5時間かかっています。
事実、この作業はRPAを夜中で完了させられたら、とても楽になると担当者もおっしゃっていました。
郵送は手作業になりますので、RPA化は難しいです。
また、その中の一部はPDFになっているため、こちらに関してはPDF発行をし、
そのあと取引先のメールアドレスで定型文を自動送信することはできます。
ただし、現状送付する前に一度目視確認が必要のため、やはりRPA化しないという方針で進めました。
A社とB社双方とも自社のシステムを有していますが、
現在のシステムは全ての経理業務をスムーズに対応できるかと言ったら、実際そうではありません。
特にA社の場合、システムが様々な機能があるように見えますが、
中間ファイル変換など、色々と手で操作しないといけないため、時間がたくさんとられてしまいます。
もちろん、システム丸ごと変える方法もあります。実際A社も検討してはいました。
そうすると請求書発行業務を全て電子化するなどが実現でき、RPA等がなくても現在より効率よく動くでしょう。
ただし、いくつかの問題が生じます。
まず、このシステムは今回紹介した業務のみではなく、全社の各部門が使われているシステムになります。
システムを変えるというのは、全社的に今までの業務プロセスを全て見直さなければならないことを意味します。
また、従業員が操作を覚えるのに時間も必要であるため、すぐには導入できないでしょう。
加えて、システムを全てリプレイスする費用も大きくなります。
以上の原因があり、なかなかすぐシステムを変えることができない場合が多々あります。
この場合、RPAを導入すれば、現在の業務プロセスを大きく変更せず、効率向上することが実現できます。
RPAの導入期間は短く、操作を覚えるのも簡単です。
B社も場合は、まさに一部の作業を自動化することにより、効率向上を図る良い例です。
RPAは苦手な部分こそありますが、使い方次第で柔軟にもなり、様々な業務で活躍できるでしょう。