2018.07.06
DeNA社は、非金融企業としては、いち早くRPAを導入した企業の1つです。
本稿では、DeNA社によるRPA導入をRPA業界からの視点でお届けしたいと思います。
株式会社ディー・エヌ・エーは、1999年3月に設立されました。
当初は「ビッダーズ」というオークション&ECサイトを運営していました。
ビッダーズは現在「Wowma!」と名を変え、運営会社もDeNAからKDDIへと移管されています。
その後、オークションサイトである「モバオク」のヒットもあり、
2005年2月にマザーズへ上場を果たしました。
最も成功した事業は、2006年2月に開始した「モバゲータウン」(その後“Mobage”に改称)でしょう。
当時はまだスマートフォンではなく、いわゆる「ガラケー」がほとんどでしたが、
「怪盗ロワイヤル」「農園ホッコリーナ」といったタイトルが大ヒットを記録しました。
この恩恵もあり、東証一部上場を果たし、さらには横浜ベイスターズを買収するなど、
M&A等により事業を拡大していきました。
ただし、2018年3月期においても、ゲーム事業の売上高が70%以上を占めています。
直近で言うと、「ファイナルファンタジーレコードキーパー」「逆転オセロニア」、
任天堂との協業タイトルでは「スーパーマリオラン」や「ファイアーエムブレムヒーローズ」、
「どうぶつの森ポケットキャンプ」「マリオカートツアー」といった辺りがヒットしているようです。
2018年度の経営計画としては、インターネット×AIを大方針として掲げています。
DeNA社がRPAを早くに推進しているのも、うなずけますね。
DeNAのRPAは、下記サイトに詳しく述べられています。
https://fullswing.dena.com/rpa/
“DeNAでは2017年4月からRPA導入のプロジェクトをスタートし、社員データの登録や稟議申請などを自動化して業務効率化に繋げています。”
2017年4月からRPAプロジェクトをスタートしているとのことで、これはかなり早いタイミングであると言って良いでしょう。
概して、昨年から導入している非金融企業は早いと分類できます。
DeNA社はRPAツールとしてBlue Prismを使用しているようです。
上記サイトのロボット例を見てみると、
「変数・定数をBlockで囲む」「シナリオは上から下へ流れていく」といったBlue Prism開発あるあるは踏襲されていることが確認できます。
“まずは各部署のメンバーに対して、RPAの概要や得意・不得意な業務を説明しました。そのうえで、担当している業務のうちRPAに任せたらうまくいきそうなものをリストアップしてもらったんです。”
ここで特筆すべきは、「業務選定をユーザ部門が行っている」ことでしょう。
業務選定は、RPAコンサルタントでも、かなり骨が折れる作業です。
業務を一つ一つ、事細かにやり方をヒアリングし、RPAに適用できるかどうか、費用対効果はどうかなどを分析しなければなりません。
なお、業務選定のやり方は色々あります。
DeNAでは、ユーザ部門がRPAの特性をある程度つかんだうえで、RPA化できそうな業務のみを挙げています。
実務上で多いのは、「すべての対象業務を一覧化し、その中でRPAできそうかどうか一つずつ〇×をつけていく」方法です。
“この情報をもとに、自動化の難易度や削減できる工数などを判断し、RPAを導入するための優先順位を決めていきました”
とありますが、実際には、自動化の難易度や削減工数なども一つの表にまとめることが多いでしょう。
“自分たちの部署の作業で試してみようという方針に沿って、「新入社員のアカウント作成」を自動化しました。作業自体は、「サイボウズ デヂエ8」の入力フォームに貼りつけていくだけです。工数自体はそれほど多くないのですが、例外的な処理がほとんどないため自動化しやすく、RPA導入の手始めとして試すにはちょうど良かったんです。”
ここでは、非常に大切なポイントが語られています。
削減工数を度外視して、まず動くものを作っています。
これは、RPA開発でしばしば用いられる「PoC」(Proof of Concept:概念実証)フェーズであると言えます。
「一体全体、RPAってどんなもんなの??」というものの把握に、PoCは大変役立ちます。
サイボウズというWebサイト形式のデータベースサービスを利用し、そこのフォームに文字列を入力する――
RPAで必要な作業の多くを取り込みつつも、開発自体は単純であるこの業務は、
PoC的立ち位置の業務選定としては、ベストプラクティスと言って良い選択だったと思います。
“判断基準は、1年でロボット開発のコストを回収できるかどうかです。開発には平均で45時間ほどが必要でした。それを12か月で割ると、1か月あたり3時間半程度かかることになります。その時間以上を削減できる工数のタスクを、自動化していったのです。”
RPA化する業務の基準は「3.5時間/月」以上の手間がかかっている業務ということです。
月で3.5時間というと、かなりハードルが低い印象です。
FTE(人月)でいうと、0.021875FTEです。
この程度の数値であれば、複数人での単純作業はもちろん、1人作業でも対象業務は多くありそうです。
これは、社内開発での強みと言って良いでしょう。
一方で、SIerなどに委託する場合、社内開発よりは開発コストがかかる可能性が高いため、
RPA化対象業務は、0.5FTEくらいの削減効果のある業務であって欲しいというのが本音です。
“クラウドツールの操作を自動化するのには、注意が必要だと思っています。というのも、クラウドツールは定期的に改善されていくのが良い点ですが、画面の仕様が急に変わった場合、ロボットが動かなくなるケースがあるからです。”
これは、RPA開発および保守上で最も懸念すべき事項でしょう。
あるボタンの位置がズレた場合、人であればすぐにズレたボタンを押すことができるでしょうが、
RPAシステムの場合は、ズレたところに照準を合わせてあげる必要があるのです。
“この作業を自動化しようとすると、変換のためのマスタ情報をずっとメンテナンスする必要があり効率が悪い。そのため、kintone側に会計の情報も持たせるような作りに変更しました。”
このように、RPA化に際しては、業務プロセス自体の変更もしばしば発生し得ます。
DeNA社のように柔軟な会社であれば、業務プロセスの変更も可能でしょうが、
長らく同じ業務プロセスでやってきた会社の業務を変更することは容易ではありません。
“経理や人事などバックオフィス系の業務で時間がかかっているものを、今後は自動化していきたいです。”
経理、人事はRPA化業務の宝庫です。
弊社でも当該業務のRPAソリューションを提供していますので、
ぜひともお問い合わせください。
DeNA案件でぜひとも真似をしていくべきポイントは以下の3点に絞れそうです。
これらは、どのRPAシステム開発案件でもつぶしの利きそうなポイントとなります。
ぜひ、DeNA社を見習って素晴らしいRPAシステムを構築していきましょう。