2018.06.26
RPA(Robotic Process Automation-ロボットによる業務自動化)は、近年のBPOの最前線でよく聞かれるワードの一つです。
これまで人間が行ってきた定型の作業や業務をPC内のロボットが仮想知的労働者(=Digital Labor)として代行することで、
業務効率化と品質の向上、コストダウンが期待できます。
ただひと口に「自動化」といっても、
抽象的すぎてどんな業務にRPAを導入できるのかいまひとつ想像がつきにくいかもしれません。
今回は多くの企業で実際にRPAの導入が進められている業務のうち、
経理財務業務でのRPA導入機会を前回の記事に引き続いてご紹介させていただきます。
今回は、これまた手作業が多く発生しがちな経費精算業務フローの自動化を検討してみます。
各部署から日々回付される経費精算申請。
1件1件には大した労力がかかりませんが、締切前になって申請が集中し、
その分、一時的な労働力が注ぎ込まれていることが多いのが事実。
その業務を効率的かつ正確に処理するには、
自社の経費申請の仕組みとそれに適合するロボットの開発が肝要です。
手軽かつ安価な業務効率化の手段として活用されることの多いクラウド型経費精算システム。
実際に導入している企業様も多いのではないでしょうか。
この場合ロボットは、システム内を巡回しその後の処理に必要なデータを都度取得する役割を担います。
加えて申請内容の正当性や、照合に必要な領収書添付の有無を判断するような「承認機能」を付与することで、
一定の照合作業を代替することも可能となります。
(最終的な金額の整合性や費用科目の正誤は人間による目視で要確認)
経費精算システムを利用するうえで最も重要なのは、システム上に登録されているマスタ情報の管理です。
例えばロボットが後段で必要とする各社員の振込先口座情報は、
日ごろから最新の状態にしておかなければなりませんし、
また一事業単位で収益を算出する必要がある場合は、それぞれの事業コードの管理が必要です。
また、申請内容の正確性の担保も必要。
各社員が入力した申請金額や費用科目は、その後ロボットがそのまま流用することになります。
システム上の承認フローで決裁者もしくは経理財務担当者が照合し、
場合によっては差戻すなどしてロボットが正確なデータを取得できるようにしなければなりません。
要するに「ロボットが精密に業務を遂行できる環境づくり」が前提となってくるわけです。
中小企業や老舗企業の中には、申請書を介して申請内容をやりとりする企業も多いのではないでしょうか。
現在のOCR(光学的文字認識)技術は日々機能の発展が目覚ましいものの、完全な紙媒体のみの業務自動化はまだ困難な状態です。
そのため、申請書をExcel形式で入力/データ提出させる方法を検討するのが一般的です。
予め全社で統一のフォーマットを作成し、申請方法や入力内容のルールを定義づけ社員に共有します。
申請されたExcelを任意のフォルダに集積しておくことで、ロボットは一つ一つを確認して回り、
決められたセルにある各種情報(金額/費用科目/申請者名(ID)/部署名など)を取得し、
当月分の経費精算内容を一覧データとして作成します。
この一覧データが後段の振込/仕訳工程のデータベースの役割を担うのです。
申請書のみの情報では網羅できない情報は、別途マスタを作成しロボットが一覧データ作成時に情報を取得できるようにしておきます。
(例えば振込先口座情報。マスタ上で申請者の社員IDと振込先口座情報を紐づけ一覧データに別途入力させる)
経費申請が承認されたものから発生金額を「未払金」として会計ソフトに計上していきます。
決裁者/経理財務の承認が得られた申請は、
この承認履歴をトリガーとして作動したロボットによって自動的に会計ソフト上に計上されます。
この時申請時に入力された費用科目を基に仕訳を実施するため、
入力間違いはそのまま反映され、間違った処理が実行されてしまいます。
金額の入力ミスは言うまでもありませんね。
特に費用科目の定義は経理財務にとっては常識でも、
その他の社員にとっては意外と曖昧になっているケースが往々にしてあります。
そのため前段で述べた承認/差戻の徹底が不可欠になってくるのです。
この部分を徹底してシステムを運用していくと、
社員は費用科目の知識が身について自然と入力の正確性が上がっていくでしょう。
経費精算申請時に作成した一覧データを基に会計ソフトに仕訳を実施します。
月次で一覧データを作成しているためシステム利用のケースと違い、
こちらは任意のタイミングでロボットを起動させる必要があります。
(毎月〇日〇〇時と日時指定を組み込む or 起動時に特定のキーワードを入力したメールを送信するなど)
処理方法は原理的にはシステム利用のケースと同様で、ロボットが申請金額と費用科目を一覧データから抽出して入力します。
1件ごとでなく費用項目ごとの合計で入力する必要がある場合は、
一覧データ上で金額を集計するロジックをロボットに組み込んでおく必要があります。
決められた振込日に向けてバンキングサイトへの振込手続きを実行します。
ここでの業務はとってもシンプル。
なぜなら、大半の経費精算システムで申請一覧データがCSVファイル(全銀協統一フォーマット)でダウンロードできるからです。
このデータファイルを生成してしまえば、あとはバンキングサイトに取り込ませるだけ。
もちろんRPAで代替可能の業務ですが、
業務ステップが他の作業工程より格段に少ないので人力でも大した作業ではありません。
費用対効果を考えて自動化を検討しましょう。
自動化を進める場合でも、振込確定の前に人間の目での最終的なチェックは欠かさない方が賢明です。
ここでも一覧データを活用します。
一覧データの金額と、マスタ上から社員IDで引っぱってきた振込先口座情報を基にロボットがバンキングサイトに入力していきます。
この場合は1件ごとに処理を実行していきますが、
その一覧データをCSVファイル化し、バンキングサイトに取り込ませることも可能な場合が多いです。
いずれにせよロボットが自動的に処理を実行してくれるため、
人間の業務は最終的な入力内容の確認/振込手続内容の確定のみとなります。
振込が確定したら、申請時に計上した「未払金」の消込作業に入ります。
こちらも振込手続時と同じようにシステムから生成したCSVファイルを会計ソフト上に取り込ませます。
会計ソフト上で特殊な処理が必要な経費精算案件(金額の内訳入力や摘要欄への補足情報の入力など)が発生する場合は別ロジックの構築が必要です。
その際は、経費精算システム上の申請入力項目を改造して追加情報を入力させたり、
マスタ上で例外処理を実施する精算案件をマークしてロボットが判別できるようにしたりして、
通常のフローに組み込んでいくことになります。
一覧データを基に会計ソフト上で未払い金を消込みます。
費用科目と金額を抽出して、会計ソフトに反映させるのですが、
上記と同様に例外処理が発生する場合は、ロボットに別のロジックを付与します。
日頃RPA導入される企業様ヒアリングを行っていると、この仕訳の部分に例外処理が発生する事例が多いように感じられます。
事業部ごと、一事業単位ごとのようにそれぞれで収益計上を行っているためです。
その際は1件1件「どんな処理を行うのか」「どんなデータを別途取得しなければならないのか」「そのデータはどこから取得するのか」という観点から開発を進めていかなければなりません。
あまりにも特殊過ぎてその他大半の通常処理フローに組み込めない場合は、
無理にロボットに実行させるのではなく、割り切って人間の業務として残した方がいい場合もあります。
今回のコラムでは経理財務業務におけるRPA導入機会をご紹介しました。
このほかにも人事/総務部門などのバックオフィスでの活用が進んでいます。
RPA導入時まず検討するべきは、
という観点での業務内容の見直しです。
そのため開発の前段階として「業務の棚卸」を実施していくことになります。
今すぐロボット開発/導入は無理でも、一度自社の業務フローを可視化することは、業務効率化の第一歩です。
この際にぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。
弊社でもお見積もりいただけます。