2019.08.15
AIの技術開発は世界中で注目のトピックスとなっており、数々のスタートアップが起業しています。
その一方で、そんなスタートアップの支援を行う事例が数多くあります。
特にAIに関連するスタートアップの支援は世界中の企業や団体がインキュベーターやコンテスト、教育などを実施しており、投資だけでも億単位に上るだけでなく、営業支援や展示会への出展スペースの斡旋、ワーキングスペースの提供など様々な支援を行っています。
今回はAI関連でスタートアップ支援を行っている事例をいくつか紹介します。
「AI.Accelerator」
AI.Acceleratorは、ディップが2017年4月に開始した日本初の「人工知能スタートアップ特化型」アクセラレータプログラムです。これまで約600社のAI・RPA関連等のスタートアップ企業から応募があり、8期採択の時点で通算で62社が採択されています。投資に関してはこれまで13社に行っているようでした。(出資は500万円程度~最大1億円)
8月には9期採択企業のプログラム成果発表会(デモデイ)を開催し、9月に11期採択企業の募集を開始しています。
毎期8社程度が選ばれており、8期の採択企業には7社が選ばれました。
https://ainow.ai/aiax2019-03-05/
4期の採択された企業のチュートリアルは「オープンソース型SaaSで利用できる業務自動化ロボット(RPA)」であるRobotic Crowdを提供しています。
Robotic Crowd
…これってAIなの?
と思わず疑問に感じますが、同プログラムではAIの明確な定義がないなか、AIを機械学習・ディープラーニングと考えているものの、RPAはAIとの相性が良く、AIへの応用が期待されるため採択の対象としているようです。
「ディープコア」
ディープコアはAIでも特にディープラーニング分野の優れた若手起業家の育成を目指すAI特化型インキュベーターです。
もともとソフトバンクがいつ新規事業を立ち上げてもいいようにしていたペーパーカンパニーの子会社が、2017年9月に同名の社名に変更し、インキュベーション事業に着手したようです。
同社は2018年5月、有望なAIスタートアップに投資を行い、成長を支援することを目的として「DEEPCORE TOKYO1号」を設立しました。資金規模は総額60億円を目標としています。
同年12月には、法人のほか個人投資家から出資を受けたことを発表しました。公開されている範囲ではみずほ銀行、電通、プロサッカー選手の本田圭佑が手掛ける個人ファンドであるKSK Angel Fundを含む7社から出資を受けたようです。
AIファンド「DEEPCORE TOKYO」にみずほ銀、電通、Mistletoeなどが出資
同ファンドの運営を担当する渡邊拓氏は「当社の調べでは、ディープラーニングを活用したビジネスを行う日本のスタートアップは、米国と比べて10分の1程度の数しかない。コワーキングスペースの運営から出資まで一貫して行うことで、その数を増やしていくことが目的だ」と言及し、ディープラーニングの活用するビジネスが日本ではまだ少ないことを指摘しています。
AI特化型インキュベーターのディープコアが60億円ファンドを設立へ、LPには親会社のソフトバンクも
他にも2018年8月に本郷にコミュニティ&コワーキングスペース「KERNEL HONGO」をオープンしました。
インテリアや会議室をはじめとするデザイン監修はWeWorkが担当しているようです。
写真の通りWeWorkらしいシンプルでありながらおしゃれな内装ですね。
https://kernel.deepcore.jp/
作業スペースの一角(DEEPCOER HPより)
同社はこれまでVAAKなど11社に出資を行ってきたことを発表しています。
「NVIDIA INCEPTION PROGRAM」
NVIDIA INCEPTION PROGRAMはNVIDIAが2016年6月、次々と生まれる起業家に独自のツール、リソース、機会を提供し、先発優位をもって製品やサービスを開発できるようにすることを目的として始められました。現在世界で約3000社以上、国内では100社以上のAIスタートアップを支援しています。
https://www.nvidia.com/ja-jp/deep-learning-ai/startups/
同プログラムには、資金提供はもちろんのこと、NVIDIAが提供するGPUなどのハードウェアをいち早く利用可能になることや、ディープラーニングの専門知識をもつ世界クラスのエンジニアリングチーム(アルゴリズムに関する専門知識をもつ数学者なども含まれる模様)への問い合わせることもできるようです。
オンライン・コースやオンサイト・コースも提供しており、ニューラルネットワークを活用する機械学習を独自のアプリケーションで設計、トレーニング、導入するための最新技術を学習できます。
同プログラムでは、優秀なスタートアップ企業にInception Awardという表彰を行っています。
2018年はそのパートナーの中から約200社が応募し、Subtle Medical とAiFiとKinema Systemsの3社が選ばれました。3社に与えられた賞金は総額100万ドルに上りました。
https://blogs.nvidia.co.jp/2018/04/05/inception-award-winners-gtc-2018/
同社は日本のスタートアップ企業を対象とした表彰も行っています。
小規模な約50社を対象として応募を募り、選別された8社が「GTC Japan 2018」に登壇し、一般参加者に向けて自社の技術、ソリューションとビジネスプラン等をプレゼンテーションしました。
ここでは「内視鏡AIでがんの見逃しゼロへ」を提案したAIメディカルサービスが最優秀賞を受賞しました。
この時の賞品は同社の最新GPU製品のでした。
AIスタートアップ企業の最優秀作品を選ぶ「Inceptionアワード」、受賞したのは「内視鏡AIでがんの見逃しゼロへ」【GTC Japan 2018】
「Google for Startups Campus」
Google for Startups Campusアーリーからグロースステージのスタートアップを対象に、コミュニティの構築やメンターシップといった学びと成長の場を提供するスタートアップ支援を行っております。
同プログラムはスタートアップの拠点として、ロンドンやマドリード、サンパウロ、ソウル、テルアビブ、ワルシャワに展開しています。
ワークスペースやコラボレーションエリア、イベントスペース、会議室などを備えるほか、コミュニティで開催されるイベントや初期段階のスタートアップ創業者への研修プログラムを運営するなど有望なスタートアップが世界で活躍できるよう支援しているようです。
Googleによれば、2018年に全世界6拠点のCampusで生まれた仕事は4500件、資金調達額は約8億ドル、メンターシップや研修プログラムを受けた人数は1万4000人になると言及しています。
同社は、2019年内に渋谷ストリームに「Google for Startups Campus」を年内に開設することを発表しています。
https://www.fashionsnap.com/article/2019-06-19/google-for-startups-campus/
「NEDO」
NEDOはベンチャー企業を対象としたAI研究のコンテストを開催し、採択された研究に対して支援を行っています。
2018年8月採択が決定したベンチャー企業では最大2年間の研究開発を実施します。
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101005.html
この時生産性分野の最優秀賞では
「食品(非定形・軟体物)を定量でピックアップするAIアルゴリズムの研究開発」が選ばれました。
ディープラーニングによる画像認識や強化学習を活用し、バットに盛られた食品の山の中から「指定量」ピッキングして所定の容器に移すアルゴリズムの研究開発です。
「食品(非定形・軟体物)を定量でピックアップするAIアルゴリズムの研究開発」のイメージ(NEDOより)
健康、医療・介護分野の最優秀賞では「AIによる高純度間葉系幹細胞の品質検査高度化の調査研究」が選ばれ、こちらも画像解析などを活用して再生医療用細胞の品質検査システムの安定性と効率向上・コストダウンに貢献する技術の研究です。
最優秀賞にはそれぞれ4500万円の上限委託費で研究開発ができ、他に入選した研究の費用も含めると総額で最大1.8億円の委託費になるようです。
また、同機関が主催となり2019年7月にAIスタートアップ支援のためのコンテスト「HONGO AI」を開催しております。
本郷発のAIを世界へ、AIスタートアップを支援する「HONGO AI 2019」が始動
応募した企業の中からHONGO AI Awardが選ばれ、受賞企業は投資や、アドライトによる大手企業とのマッチングなどの事業支援を受けられるようです。
「J-Startup」
こちらは経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラムです。
同プログラムではAI以外の分野でも支援を行っているのですが、この中で17社がAI分野のスタートアップ企業として紹介されています。
集中支援として事業スペース(オフィス・工場空きスペースなど)の提供や料金優遇、実証実験への協力などが紹介されています。
また、海外展開の支援として世界各地のグローバルな展示会でJ-Startupパビリオンとして展示スペースを確保するJ-Startupツアーといった支援もあるようです。
https://www.j-startup.go.jp/about/docs/bfe94a4ef7b1c67b5cb1bef973842af4fe0dd536.pdf
2019年6月に新たに49社のスタートアップを選定し、AI分野では5社選定されています。
https://www.j-startup.go.jp/news/news_190624_2.html
これにより2019年7月の時点ではAI分野も含めて141社が採択されています。
国内企業に限らず海外の大手企業、そして政府機関までもがAIのスタートアップを支援しています。
AIに関して面白いアイディアがあるが、最適な支援を受けて拡大できるところはないか?
そう思った時には今回取りあげたスタートアップの支援にチャレンジされてみてはいかがでしょうか?
2019.08.08
定型業務においてさまざまな場面で適用されるRPAですが、いくつか課題があるというのも事実です。
例えば「導入が簡単」と言われていますが、あくまで「C言語をはじめとするプログラミングよりも簡単」ということと、一般的な事務処理システムの導入よりコストが安い(この点が非常に大きいのかと思われますが)ということにすぎず、RPAを導入したうえで実際に運用していくには多少なりとも専門的な知識が必要です。
実際にプログラミングの知識がない人がゼロからRPAについて学習しようとすると苦労するといった声が実態として多くあります。
こういった課題によりプログラミングの経験がない人にとってRPAをとっつきにくくさせているものではないかと考えられます。
その中でもし日常のちょっとした場面で使うことができればより身近になるのではないでしょうか。
今回はスマートフォンにおけるRPAツールを紹介し、その代表的なアプリとして知られるMacroDroidについて紹介します。
例えばスマートフォンでなら
「Wi-Fiを自宅や職場ではONにしたいけどそれ以外の場所ではOFFにしたい」
マイクの無線はWi-Fiの影響を受けて雑音が発生するケースがあります。
非常に限られたケースかとは思われますが、自分がもし大人数を集めて何か会議や勉強会を開く時にマイクを使おうとしてWi-Fiを切っておくのをよく忘れて雑音が入ったままになってしまうという人にとってはあってもよいのではないでしょうか?
「留守番電話を自動的にメールで通知してくれるようにしたい」
普通に携帯を確認すればいいのでは?という声もあるかと思いますが、安全(火災の危険性があるものを取り扱う場所ではスマートフォンはNGなど)や情報漏洩の観点から携帯電話の持ち込みが禁じられているケースがあります。
そういう時に着信を個人のメールサーバーに接続できるオフィスのPCで確認することができればより便利であると言えます。
「通信量を食う動画や雨雲レーダーなどのアプリをWi-Fiが入っているかどうか忘れてしまう」
こちらは後で紹介しておりますが、ふとした時に動画や雨雲レーダーをスマホアプリで見ようとしてWi-Fiが入っていないことに気が付かず動画を見続けてしまい通信制限を受けてしまうということがある人はいませんか?
「RPAをどんなものか触って遊んでみたい」
本記事の一番のポイントはここにあるといってもいいでしょう。
プログラミングの知識はあまりないけどRPAというものを体験する。
実際に触ってみることでどういうことであれば簡単にできるが、UiPathなどのRPAツールを遊びで使ってみるのはややハードルが高いのではないでしょうか。
スマートフォンの操作を自動化するツールは無料で使えるものがいくつか公開されています。
<iOS>
WorkFlow、IFTTT
<Android>
今回はスマートフォンでRPAができるMacroDroidについて紹介して参ります。
同アプリはArloSoftが配信するアプリで、2016年5月にAndroidアプリでリリースが開始しました。
このアプリ上ではトリガー、アクション、条件の3つのパートに分かれて設定するだけでスマートフォン上の操作を自動で行うことができます。
「トリガー」のパートでは電話の着信やSMSの受信から光センサー、ロック画面の解除などこれだけでも細かい条件を設定できることがわかります。
「アクション」のパートでは先ほど設定したトリガーに対する動作を実施します。メールやSMSの送信だけでなく、Wi-Fi設定の起動、画面上に通知することなど「トリガー」のパートと同様に様々な動作を設定できます。
「条件」のパートはトリガーのパートと似ているものもありますが、起動したトリガーや起動していないトリガーがあるかどうか、本体が通話中であるかどうかなどより詳細な条件を設定することが可能なようです。
これらの設定をもとにマクロが作成され、動作します。
不在着信が来た時にメールで通知することができれば、作業に集中していて気づかない時も、メールを見て反応することができます。
今回は、Youtubeやニコニコ動画などの動画配信SNSのアプリを開く時にWi-Fiの接続が忘れていた時にWi-Fi接続をリマインドすることを想定して、通知するマクロを試してみました。
今回は「Wi-Fi推奨アプリ」と命名。
なお、アプリそのものやマクロを個別に動作しないように設定することも可能です。
Youtubeのアプリを開くと
左上に警告のマークが現れたことがわかります。
RPAでよくみられるようなExcelのデータを処理するといったことはありませんが、こういったこまかなところでRPAを活用してみることが今後のRPA普及に役に立つのではないかと思います。
MacroDroidについてはマクロ集なども紹介されておりますので、役に立ちそうなマクロを作成してみてはいかがでしょうか?
https://sp7pc.com/gadget/macrodroid/19966