2019.08.15
AIの技術開発は世界中で注目のトピックスとなっており、数々のスタートアップが起業しています。
その一方で、そんなスタートアップの支援を行う事例が数多くあります。
特にAIに関連するスタートアップの支援は世界中の企業や団体がインキュベーターやコンテスト、教育などを実施しており、投資だけでも億単位に上るだけでなく、営業支援や展示会への出展スペースの斡旋、ワーキングスペースの提供など様々な支援を行っています。
今回はAI関連でスタートアップ支援を行っている事例をいくつか紹介します。
「AI.Accelerator」
AI.Acceleratorは、ディップが2017年4月に開始した日本初の「人工知能スタートアップ特化型」アクセラレータプログラムです。これまで約600社のAI・RPA関連等のスタートアップ企業から応募があり、8期採択の時点で通算で62社が採択されています。投資に関してはこれまで13社に行っているようでした。(出資は500万円程度~最大1億円)
8月には9期採択企業のプログラム成果発表会(デモデイ)を開催し、9月に11期採択企業の募集を開始しています。
毎期8社程度が選ばれており、8期の採択企業には7社が選ばれました。
https://ainow.ai/aiax2019-03-05/
4期の採択された企業のチュートリアルは「オープンソース型SaaSで利用できる業務自動化ロボット(RPA)」であるRobotic Crowdを提供しています。
Robotic Crowd
…これってAIなの?
と思わず疑問に感じますが、同プログラムではAIの明確な定義がないなか、AIを機械学習・ディープラーニングと考えているものの、RPAはAIとの相性が良く、AIへの応用が期待されるため採択の対象としているようです。
「ディープコア」
ディープコアはAIでも特にディープラーニング分野の優れた若手起業家の育成を目指すAI特化型インキュベーターです。
もともとソフトバンクがいつ新規事業を立ち上げてもいいようにしていたペーパーカンパニーの子会社が、2017年9月に同名の社名に変更し、インキュベーション事業に着手したようです。
同社は2018年5月、有望なAIスタートアップに投資を行い、成長を支援することを目的として「DEEPCORE TOKYO1号」を設立しました。資金規模は総額60億円を目標としています。
同年12月には、法人のほか個人投資家から出資を受けたことを発表しました。公開されている範囲ではみずほ銀行、電通、プロサッカー選手の本田圭佑が手掛ける個人ファンドであるKSK Angel Fundを含む7社から出資を受けたようです。
AIファンド「DEEPCORE TOKYO」にみずほ銀、電通、Mistletoeなどが出資
同ファンドの運営を担当する渡邊拓氏は「当社の調べでは、ディープラーニングを活用したビジネスを行う日本のスタートアップは、米国と比べて10分の1程度の数しかない。コワーキングスペースの運営から出資まで一貫して行うことで、その数を増やしていくことが目的だ」と言及し、ディープラーニングの活用するビジネスが日本ではまだ少ないことを指摘しています。
AI特化型インキュベーターのディープコアが60億円ファンドを設立へ、LPには親会社のソフトバンクも
他にも2018年8月に本郷にコミュニティ&コワーキングスペース「KERNEL HONGO」をオープンしました。
インテリアや会議室をはじめとするデザイン監修はWeWorkが担当しているようです。
写真の通りWeWorkらしいシンプルでありながらおしゃれな内装ですね。
https://kernel.deepcore.jp/
作業スペースの一角(DEEPCOER HPより)
同社はこれまでVAAKなど11社に出資を行ってきたことを発表しています。
「NVIDIA INCEPTION PROGRAM」
NVIDIA INCEPTION PROGRAMはNVIDIAが2016年6月、次々と生まれる起業家に独自のツール、リソース、機会を提供し、先発優位をもって製品やサービスを開発できるようにすることを目的として始められました。現在世界で約3000社以上、国内では100社以上のAIスタートアップを支援しています。
https://www.nvidia.com/ja-jp/deep-learning-ai/startups/
同プログラムには、資金提供はもちろんのこと、NVIDIAが提供するGPUなどのハードウェアをいち早く利用可能になることや、ディープラーニングの専門知識をもつ世界クラスのエンジニアリングチーム(アルゴリズムに関する専門知識をもつ数学者なども含まれる模様)への問い合わせることもできるようです。
オンライン・コースやオンサイト・コースも提供しており、ニューラルネットワークを活用する機械学習を独自のアプリケーションで設計、トレーニング、導入するための最新技術を学習できます。
同プログラムでは、優秀なスタートアップ企業にInception Awardという表彰を行っています。
2018年はそのパートナーの中から約200社が応募し、Subtle Medical とAiFiとKinema Systemsの3社が選ばれました。3社に与えられた賞金は総額100万ドルに上りました。
https://blogs.nvidia.co.jp/2018/04/05/inception-award-winners-gtc-2018/
同社は日本のスタートアップ企業を対象とした表彰も行っています。
小規模な約50社を対象として応募を募り、選別された8社が「GTC Japan 2018」に登壇し、一般参加者に向けて自社の技術、ソリューションとビジネスプラン等をプレゼンテーションしました。
ここでは「内視鏡AIでがんの見逃しゼロへ」を提案したAIメディカルサービスが最優秀賞を受賞しました。
この時の賞品は同社の最新GPU製品のでした。
AIスタートアップ企業の最優秀作品を選ぶ「Inceptionアワード」、受賞したのは「内視鏡AIでがんの見逃しゼロへ」【GTC Japan 2018】
「Google for Startups Campus」
Google for Startups Campusアーリーからグロースステージのスタートアップを対象に、コミュニティの構築やメンターシップといった学びと成長の場を提供するスタートアップ支援を行っております。
同プログラムはスタートアップの拠点として、ロンドンやマドリード、サンパウロ、ソウル、テルアビブ、ワルシャワに展開しています。
ワークスペースやコラボレーションエリア、イベントスペース、会議室などを備えるほか、コミュニティで開催されるイベントや初期段階のスタートアップ創業者への研修プログラムを運営するなど有望なスタートアップが世界で活躍できるよう支援しているようです。
Googleによれば、2018年に全世界6拠点のCampusで生まれた仕事は4500件、資金調達額は約8億ドル、メンターシップや研修プログラムを受けた人数は1万4000人になると言及しています。
同社は、2019年内に渋谷ストリームに「Google for Startups Campus」を年内に開設することを発表しています。
https://www.fashionsnap.com/article/2019-06-19/google-for-startups-campus/
「NEDO」
NEDOはベンチャー企業を対象としたAI研究のコンテストを開催し、採択された研究に対して支援を行っています。
2018年8月採択が決定したベンチャー企業では最大2年間の研究開発を実施します。
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101005.html
この時生産性分野の最優秀賞では
「食品(非定形・軟体物)を定量でピックアップするAIアルゴリズムの研究開発」が選ばれました。
ディープラーニングによる画像認識や強化学習を活用し、バットに盛られた食品の山の中から「指定量」ピッキングして所定の容器に移すアルゴリズムの研究開発です。
「食品(非定形・軟体物)を定量でピックアップするAIアルゴリズムの研究開発」のイメージ(NEDOより)
健康、医療・介護分野の最優秀賞では「AIによる高純度間葉系幹細胞の品質検査高度化の調査研究」が選ばれ、こちらも画像解析などを活用して再生医療用細胞の品質検査システムの安定性と効率向上・コストダウンに貢献する技術の研究です。
最優秀賞にはそれぞれ4500万円の上限委託費で研究開発ができ、他に入選した研究の費用も含めると総額で最大1.8億円の委託費になるようです。
また、同機関が主催となり2019年7月にAIスタートアップ支援のためのコンテスト「HONGO AI」を開催しております。
本郷発のAIを世界へ、AIスタートアップを支援する「HONGO AI 2019」が始動
応募した企業の中からHONGO AI Awardが選ばれ、受賞企業は投資や、アドライトによる大手企業とのマッチングなどの事業支援を受けられるようです。
「J-Startup」
こちらは経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラムです。
同プログラムではAI以外の分野でも支援を行っているのですが、この中で17社がAI分野のスタートアップ企業として紹介されています。
集中支援として事業スペース(オフィス・工場空きスペースなど)の提供や料金優遇、実証実験への協力などが紹介されています。
また、海外展開の支援として世界各地のグローバルな展示会でJ-Startupパビリオンとして展示スペースを確保するJ-Startupツアーといった支援もあるようです。
https://www.j-startup.go.jp/about/docs/bfe94a4ef7b1c67b5cb1bef973842af4fe0dd536.pdf
2019年6月に新たに49社のスタートアップを選定し、AI分野では5社選定されています。
https://www.j-startup.go.jp/news/news_190624_2.html
これにより2019年7月の時点ではAI分野も含めて141社が採択されています。
国内企業に限らず海外の大手企業、そして政府機関までもがAIのスタートアップを支援しています。
AIに関して面白いアイディアがあるが、最適な支援を受けて拡大できるところはないか?
そう思った時には今回取りあげたスタートアップの支援にチャレンジされてみてはいかがでしょうか?
2019.08.08
定型業務においてさまざまな場面で適用されるRPAですが、いくつか課題があるというのも事実です。
例えば「導入が簡単」と言われていますが、あくまで「C言語をはじめとするプログラミングよりも簡単」ということと、一般的な事務処理システムの導入よりコストが安い(この点が非常に大きいのかと思われますが)ということにすぎず、RPAを導入したうえで実際に運用していくには多少なりとも専門的な知識が必要です。
実際にプログラミングの知識がない人がゼロからRPAについて学習しようとすると苦労するといった声が実態として多くあります。
こういった課題によりプログラミングの経験がない人にとってRPAをとっつきにくくさせているものではないかと考えられます。
その中でもし日常のちょっとした場面で使うことができればより身近になるのではないでしょうか。
今回はスマートフォンにおけるRPAツールを紹介し、その代表的なアプリとして知られるMacroDroidについて紹介します。
例えばスマートフォンでなら
「Wi-Fiを自宅や職場ではONにしたいけどそれ以外の場所ではOFFにしたい」
マイクの無線はWi-Fiの影響を受けて雑音が発生するケースがあります。
非常に限られたケースかとは思われますが、自分がもし大人数を集めて何か会議や勉強会を開く時にマイクを使おうとしてWi-Fiを切っておくのをよく忘れて雑音が入ったままになってしまうという人にとってはあってもよいのではないでしょうか?
「留守番電話を自動的にメールで通知してくれるようにしたい」
普通に携帯を確認すればいいのでは?という声もあるかと思いますが、安全(火災の危険性があるものを取り扱う場所ではスマートフォンはNGなど)や情報漏洩の観点から携帯電話の持ち込みが禁じられているケースがあります。
そういう時に着信を個人のメールサーバーに接続できるオフィスのPCで確認することができればより便利であると言えます。
「通信量を食う動画や雨雲レーダーなどのアプリをWi-Fiが入っているかどうか忘れてしまう」
こちらは後で紹介しておりますが、ふとした時に動画や雨雲レーダーをスマホアプリで見ようとしてWi-Fiが入っていないことに気が付かず動画を見続けてしまい通信制限を受けてしまうということがある人はいませんか?
「RPAをどんなものか触って遊んでみたい」
本記事の一番のポイントはここにあるといってもいいでしょう。
プログラミングの知識はあまりないけどRPAというものを体験する。
実際に触ってみることでどういうことであれば簡単にできるが、UiPathなどのRPAツールを遊びで使ってみるのはややハードルが高いのではないでしょうか。
スマートフォンの操作を自動化するツールは無料で使えるものがいくつか公開されています。
<iOS>
WorkFlow、IFTTT
<Android>
今回はスマートフォンでRPAができるMacroDroidについて紹介して参ります。
同アプリはArloSoftが配信するアプリで、2016年5月にAndroidアプリでリリースが開始しました。
このアプリ上ではトリガー、アクション、条件の3つのパートに分かれて設定するだけでスマートフォン上の操作を自動で行うことができます。
「トリガー」のパートでは電話の着信やSMSの受信から光センサー、ロック画面の解除などこれだけでも細かい条件を設定できることがわかります。
「アクション」のパートでは先ほど設定したトリガーに対する動作を実施します。メールやSMSの送信だけでなく、Wi-Fi設定の起動、画面上に通知することなど「トリガー」のパートと同様に様々な動作を設定できます。
「条件」のパートはトリガーのパートと似ているものもありますが、起動したトリガーや起動していないトリガーがあるかどうか、本体が通話中であるかどうかなどより詳細な条件を設定することが可能なようです。
これらの設定をもとにマクロが作成され、動作します。
不在着信が来た時にメールで通知することができれば、作業に集中していて気づかない時も、メールを見て反応することができます。
今回は、Youtubeやニコニコ動画などの動画配信SNSのアプリを開く時にWi-Fiの接続が忘れていた時にWi-Fi接続をリマインドすることを想定して、通知するマクロを試してみました。
今回は「Wi-Fi推奨アプリ」と命名。
なお、アプリそのものやマクロを個別に動作しないように設定することも可能です。
Youtubeのアプリを開くと
左上に警告のマークが現れたことがわかります。
RPAでよくみられるようなExcelのデータを処理するといったことはありませんが、こういったこまかなところでRPAを活用してみることが今後のRPA普及に役に立つのではないかと思います。
MacroDroidについてはマクロ集なども紹介されておりますので、役に立ちそうなマクロを作成してみてはいかがでしょうか?
https://sp7pc.com/gadget/macrodroid/19966
2019.07.31
デジタル分野で活躍する人材を育てるために近年情報の授業が実施されているのは誰もがご存知の話かと思います。
小学校でパワーポイントを使ったプレゼンテーションや、高校生でHTMLのタグ打ちでホームページの制作を授業で実施することは10年以上前からあるかと思います。
また授業ではありませんが、情報分野を専門としない大学の研究でもLaTeXで資料作成を求められることがごくわずかですがあるようです。
このように、情報分野を専門としない学生にもITに当たり前のように触れる機会が多いなか、情報内閣府の統合イノベーション戦略推進会議は2019年3月に設定した、デジタル社会の基礎知識である「数理・データサイエンス・AI」に関する教育の目標から、今後学生がプログラミングに触れるのはもちろんのこと、より発展してAIやブロックチェーンなどの最先端の技術を開発する未来が期待できるのではないでしょうか?
(以下抜粋)
デジタル社会の基礎知識(いわゆる「読み・書き・そろばん」的な素養)である「数理・データサイエンス・AI」に関する知識・技能、新たな社会の在り方や製品・サービスをデザインするために必要な基礎力など、持続可能な社会の創り手として必要な力を全ての国民が育み、社会のあらゆる分野で人材が活躍することを目指し、2025年の実現を念頭に今後の教育に以下の目標を設定:
(以上抜粋)
さらに、小中学校に対する目標・取り組みも発表されました。
(以下抜粋)
(以上抜粋)
高校生から基礎的な教育を実施することはもちろんのこと、小中学校に対して児童生徒一人一人がそれぞれ端末を持ち、ICTを十分活用することのできる、ハードウェア・ネットワーク等の環境整備を達成するため、クラウド活用、低価格パソコンの導入、ネットワーク・5G通信の活用を視野に入れた検討を行っていることが注目すべき点ではないかと思います。ある大学の情報系の専門科目ではWiiリモコンを使った課題を出すことがあるようですが、今後ゲーム機やスマートフォンを使ったプログラミングや簡単なゲームやツールを制作するといった課題が小中学校で実施されるような日がくるかもしれません。
近年日本の高校生プログラマーが企業で活躍する事例が見られます。
「高校生でドワンゴのエンジニアに!?山中勇成氏の人生を変えた、14歳でのプログラミングとの出会い。」https://careerhack.en-japan.com/report/detail/146
高校1年生でドワンゴにエンジニアとしてスカウトされ、アルバイトを始めた山中勇成氏。
山中氏は中学2年生の頃放映されていたドラマブラッディ・マンデイの天才ハッカーである主人公に憧れ、C言語のテキストを買って勉強を始めたのがきっかけだったと語っています。
現在は大学卒業後サイバーエージェントで活躍しているようです。
「天才はこうやって育つ——Appleが認めた高校生プログラマーの日常」
https://www.buzzfeed.com/jp/yuikashima/yuji-sasaki-is-a-programmer
Appleが開く開発者向けのイベントWWDCにスカラシップとして日本人の高校生が招待されました。
「1億調達した16歳天才プログラマーは日本復活をかけて東京で戦う」
https://www.businessinsider.jp/post-107078
この記事の中で当時16歳の山内奏人CEOは「東京のGDPは世界一で、巨大市場にも関わらず、圧倒的に日本のキャッシュレス化は世界から遅れている」ことを指摘しており、スマートフォンにインストールすれば、店舗は専用端末を導入せずとも、顧客のカード決済が可能になるアプリ「ONE PAY」を開発しています。
なお、海外では、15歳の時に自作のニューラルネットワークを構築したことがある高校生がAIに関する論文を発表しました。
「17歳の高校生が人工知能の研究論文を発表!その驚きの内容とは」
https://aizine.ai/paper-0331/
彼らが初めてプログラミングに触れた時期は様々ですが、小中学生の頃に初めて触れたというのが多いようです。
小中学校でプログラミングに触れる機会が増えることで、学生時代から企業で活躍するだけなく、論文の投稿などで評価される事例もより多くなるかもしれません。
2019.07.25
RPA-Biz運営責任者の平田(左)と船井総研士業支援部の鈴木GM、坂田TL
7月24日、このRPA-Bizを運営している弊社アーツアンドクラフツ株式会社に船井総研の士業支援部の鈴木GMと坂田TLがお越し下さいました。
船井総研士業支援部様は、会計士や税理士など中小企業の経理業務を支援する士業の方々に向けて各種ソリューションの提案や研究会の開催を行っています。今回の対談では中小企業のおける経理業務についてのRPAの可能性についてお互いの意見交換をさせていただきました。
中小企業の方向けにサービスを提供する会計士・税理士様がRPAを活用する上で重要な課題となるのが
・標準化
・(ベンダーに頼らない)内製化
の2つが挙げられます。
対談では、そのあたりについての話が多く出ました。
もともと、経理業はPC内での定型業務が多く、RPAに最も適した業務の一つと言えます。弊社の過去の開発実績からしても、まず多くの大手企業様がRPA化に手を付ける際に対象とするのが経費精算や旅費申請、請求書管理や支払処理、月締といった経理業務になることが多いです。
しかし、税理士事務所・会計士事務所様が、複数顧客の経理業務をアウトソースとして請ける場合、RPA化のためにまずその複数企業の経理業務を「標準化」する必要があります。一つの顧客のフローに特化したRPAだとコスパが合わないため、1ロボットで複数の顧客企業の業務を担えるようになるのが理想ですが、税理士事務所・会計士事務所様の立場上、そのように「自分たちのフォーマット・ルールに合わせろ」とお客様に言うのは中々難しいのが現状です。この「標準化」の取組をどれだけ本気に取り組めるかでRPA化の成功・失敗が大きく変わってまいります。
また、規模が比較的小さい税理士事務所・会計士事務所様が自社にRPAを取り入れる場合、ベンダーに開発を頼むと金額的にペイできないケースが多く、必然的に「内製化」の必要性も高まります。このRPA-Bizのブログで何度かお伝えしていますが、世の中にある多くのRPAツールは「玄人プログラマーが扱うには易しいが、素人が扱うには難しい」という微妙な難易度になっています。もともとプログラミングリテラシーがあるわけでは無い士業の皆様がいきなり「明日から自分たちで開発する!」とするのはいささかハードルが高くなってしまいます。
このように、「標準化」と「内製化」は、中小企業向け税理士・会計士様がRPAを導入するにあたって必ず立ちはだかるする壁になりますが、そのような壁を船井総研様のようなコンサルティング会社が支援していくことが肝要なのではないかと考えます。
先述した通り、もともと経理業務はRPAに非常に向いた領域です。
コンサルティング会社が、RPAに向いた経理業務一覧のようなものを業界別にパターン化してあげたり、RPAを導入する場合の標準フローおよび一部RPAプログラムのモジュールのようなものを媒介してあげたり、内製化のためのプログラミングトレーニングを開催することができれば、今後士業の皆さまもRPA導入がしやすくなるのではないでしょうか。
今後のRPAの浸透に益々期待していきたいと思います。
2019.07.15
弊社アーツアンドクラフツ株式会社は、2019年5月8~10日に東京ビックサイトにて行われた「Japan IT Wee【春】後期」AI・業務自動化ゾーンに出展いたしました。
今回お話した企業様のほとんどが、各業務に付随する事務処理系の部分を自動かし、空いた時間を他にまわすことや、人的ミスを防ぐ等の希望が多いように感じました。また、こういったものを自動化したいが、その業務は自動化に適しているのか判断がつかないという声も多かったように思います。
RPAのロボットは人工知能(AI)とは異なり、人間が行うような複雑な判断が必要な業務は向いていません。RPAのロボットは「単純化された作業」に特化しているので、「一定時刻にファイルを社内システムにアップロードする」といったような業務が向いているかと思います。
そういった視点でまずは自動化したい業務から向いている業務をピックアップしてみるのも一つの手段ではないかと思います。
さて、ここからは私が今回の展示会に出展して思ったことを書いていこうかと思います。
手書きの文字や印刷された文字を読み取り、データと照らし合わせ文字を判断し、電子テキスト化する装置
AI・業務自動化ゾーンでは、やはり最近よく耳にする「OCR」を押している企業様が多かったです。その中でも特に「手書きの文字を認識可能」となるとブースの周りには多くのお客さんが集まっていました。手書きの請求書や書類をデータ化せずそのまま扱えるならば、紙ベースのやり取りをデータで管理するためのシステム開発コストや、現場の人たちの作業手順を変更しないで済むのであれば便利そうです。
防犯カメラに移っている人物の特徴(歩き方、服装等)をとらえて個人を特定できるというシステムがありました。探したい人物を設定すると、AIが複数枚の画像を使用してどの防犯カメラに写っていたか判断し、対象の人物がどんなルートを歩いたか特定できるというものでした。はじめのうちは、人が5~6枚の対象人物を画像から選択しますが、それ以降はAIがすべてのデータを解析し対象人物と特徴が一致するかどうか判断しているとのことでした。デモンストレーションでは、少なくとも50人ほどの人が移っている動画から15秒ほどで対象の人物の行動ルートが特定できました。処理速度が速いこともですが、精度の高さにも驚かされます。
今後、自動化の技術が進んでいくのはとても良い事だとは思いますが、精度が上がっていくロボットの処理速度に追いつけるよう、業務システムやネット環境、PCの処理速度なども改善しなければならず、そのあたりの連携に今後の開発課題がありそうな予感がします。
2019.07.08
製造業界では何年も前から工場の作業工程をロボットが行うようになり、効率化が進められてきました。そして、3年ほど前から製造過程以外の部分での効率化にも焦点が充てられ、経理や人事の業務がRPA化されてきました。さらに次の段階として、製造現場における事務作業をRPA化しようという動きが盛んになっています。
RPAトレーニングのニーズの増加、その背景は
RPAの浸透が進んでいく中で、RPAの開発をシステムベンダーに依頼せずに自社の現場社員が開発・運用していこうという動きが出ています。それに伴い、比較的ITリテラシーのない現場社員の方々に対してRPAトレーニングをするニーズが増加してきました。
RPAの開発を自社内で行うメリットは以下の通りです。
システムベンダーに開発を依頼した場合、RPA化したい業務をベンダーに伝える、設計してもらう、希望通りならば開発、テストを行い、リリースという一連の流れにおいてベンダーとのやり取りが何度も続きます。解釈のずれなどがあった際にはもう一度やり直さなければならないため、多くの時間を要します。気軽に業務を自動化できるのがRPAの特徴ですが、ベンダーに依頼しているとその特徴がうまく活かし切れません。そのため、現場の実務を理解している社員がそのままRPA化することで最も効率良く業務を自動化することができます。
当たり前のことですが、システムベンダーに開発を依頼した場合、ベンダーに代金を支払わなければいけません。自社内の人材を使ってRPA化することができたら、その分の経費を削減することができます。
システム開発を完全に外部委託した場合、現場社員はRPAについてほとんど無知のまま、業務が自動化されていくという状態になります。それに対して、現場社員がRPA技術を身に着けた場合、どの様なプロセスを経て業務がRPA化されたかを理解している状態となります。そのため、他にRPA化できそうな業務にはどの様な業務があるかの検討をつけて、実際にRPAロボットを開発することができます。また、そもそもビジネスプロセスに問題が合った場合にはそれに気づくことができる可能性も上がります。
現場社員に対してRPAトレーニングを進め、自社内で開発することのメリットが分かったところで、研修事例の紹介にうつっていきます。
研修の基本概要
今回ご紹介するのは、大手自動車メーカーの研修プロジェクトで、研修を受けるのは製造工場の現場社員です。主に対象となる業務はサプライヤーへの受発注業務などです。
研修期間は6週間程度で、遠隔地であったので週1回講師が現地に赴き、1日約2時間×2回の計4時間のセッションを行いました。それ以外の時間帯で不明点などがあれば、オンラインでのサポートを実施しました。
どうしても講義に参加できなかった人に対してはフォローアップの資料を用意し、次週以降の講義の内容についていけるように細かい対応を行いました。
研修内容
まずはRPAツールを扱っていくにあたり、RPAの基本的な概念やRPAで実現できること、実現できないこと、RPAのメリットなどを説明して基礎知識を身に着けてもらいました。次に、画面や用語の説明をしてそれ以降の講義がスムーズに行えるようにしました。
次に、自社ホームページから連結損益計算書などの情報をダウンロードして、それをエクセル処理(ダウンロードデータの加工と連結売上高・利益ブックを作成)、結果のメール送信までを実践形式で教えていきました。ダウンロード、エクセル処理、メール送信それぞれの段階において各パートでエラー処理の仕方も併せてレクチャーしていきました。
例えば、メール送信設定を読み込むという動作のシナリオを作る際は以下のような手順を踏む必要があり、講義では講師が実際に作成しているのを見ながら、社員も同じようにRPAツールを操作していきます。
今回の研修で工夫した点
基本的にもともとプログラミングなどの経験がない人が対象であるため、分かりやすくイメージしやすいようなアプローチで研修を進めていきました。
研修で作成するシナリオは身近な現場実務を題材として、RPAが導入された際に自分の業務が効率化されるイメージを持ってもらえるようにしました。先ほどの連結損益計算書のダウンロードなども普段自分たちが使っているHPから情報を持ってきて、実践的な業務をRPA化する作業を行いました。
実際に現場社員が開発しているRPAシナリオをチェックし、エラー対応やセキュリティ管理の仕方などのアドバイスをしました。特に、業務を自動化するにあたっての業務選定のアドバイスに力を入れました。ご存じの方も多いかと思いますが、全ての業務がRPAに適している訳ではありません。自動化するにあたってRPAツールを使わなくても、Microsoft Office Excelのマクロ機能を使った方がお手軽に簡単に自動化できる場合もあります。
Excelのマクロ機能はExcelの標準装備として搭載されている機能です。Excel上での動作を記録・保存して同じ動作を行いたい時はワンクリックするだけでExcelが同じ動作を自動的に行ってくれるという機能です。Excel上での繰り返し作業を自動化するならばマクロ機能を使うことが最も有効的であると言えます。
例えば、このプロジェクトの中では、エクセル情報を加工して別のエクセルファイルに入力する作業はマクロ機能を使った方が効果的であると考えられたため、アドバイスとしてマクロ機能による自動化を勧めました。(例:納品書(エクセル)にある指定の範囲をコピーして別エクセルに貼り付ける作業)
現場社員のスキルレベルは人それぞれであるため、受講者のレベルに合わせて内容をカスタマイズしました。社員がコードを自分で入力してシナリオを作ることは困難であると判断したため、できるだけアクティビティ(決まった動作)を使って作成しました。アクティビティのアイコンを作業フローの図にドラッグアンドドロップするだけでシナリオが作成できるような内容にしました。
また、レッスンにおける進行ペースはITリテラシーがない人に合わせるということを現場担当者と取り決めし、全員が理解したら次に進むという形をとっていました。ITリテラシーがない方が多かったため、基本的な言葉の確認にも時間をかけ、きちんと知識の土台を作ってから難易度の高い操作をすることを重視していました。
研修の成果
6週間の研修を経て、ほぼ初心者の状態でスタートした現場社員はRPAの基本的な知識を身に着け、使い方をマスターしました。また、そのメンバーの中でも簡単な開発が進められるようになりました。
研修自体は6週間で終了しましたが、この研修の効果を最大限にするためには現場社員がRPAツールに継続的に携わり、自分たちのツールとして運用し続けることです。将来的に、長期的な視点で見たら、今回講義を受講した社員が他の社員に対して研修を行えるレベルまでスキルアップしたら社員同士での研修も可能になるでしょう。
まとめ
以上、大手自動車メーカーにおける製造現場の社員を対象にしたRPA研修についてご紹介してきました。短期間であっても基本的なRPAの知識やツールの操作方法については習得することができることが分かります。
これまでRPAは本社管理部、経理や人事、そして営業事務などへの適応が主流でしたが、製造現場にもRPAの導入が普及しつつあります。今後もこのような遠隔地型の研修プログラムの需要は拡大していくでしょう。
2019.07.01
開発されたRPA(Robotic Process Automation)ロボットの売買が自由に行えるRPAのマーケットプレイスが各社のサービスに取り入れられ、大きなトレンドとなっています。
なぜ、現在このようなトレンドがあるのか、マーケットプレイスの具体的な利点や特徴はどのようなものか、今後どのように展開されていくのかなどを分かりやすくご説明していきます。
RPAマーケットプレイスとは(概要)
・ユーザーがRPAの機能拡張、追加のためのパーツを提供・利用できる場
・テンプレート化したRPAロボットのやり取りが気軽にできる
RPAマーケットプレイスが取り入れられた背景
2017年頃からRPAツールによる業務自動化・業務改革が進められてきた中で、実際にRPAを使っている企業や人からの声としてこんな意見が多くみられるようになりました。
「どの業務からどの業務までをRPAで自動化していいかわからない」
「自動化したい業務は決まっているがどのようにロボットの開発を進めていいかわからない」
RPAのロボットは導入するだけではなく業務に合わせてロボットの開発をし、運用していくことがとても重要です。そこで、テンプレート化されたロボットのニーズが急激にあがりました。2018年7月にRPA BANKが国内初となるRPAマーケットプレイス「RPA BANKマーケットプレイス(α版)」をリリースしたことを皮切りに最近では多くの企業がマーケットプレイスを設け、RPAを業務に用いたい人と開発したRPAロボットを保有している人をつなぐための場として提供しています。
次に、Blue PrismとUiPathのマーケットプレイスについて、また次世代の働き方へのヒントになりうるとして注目を集めているBizRobo!のマーケットプレイスについてご紹介していきます。
Blue Prism Digital Exchange(DX)
Blue Prism株式会社が提供する「Blue Prism Digital Exchange(DX)」はBlue Prismのマーケットプレイスです。2018年11月からサービスを開始し、多くのユーザーに利用されています。
Blue Prism自体にはAI機能やOCR機能は搭載されていません。そこで機能を拡張する際にBlue Prism Digital Exchangeを利用することができます。Blue Prismに追加できる機能(パーツ)のことをスキルと呼び、スキルを提供しているのはMicrosoftやIBMなどをはじめとする様々なパートナーです。
マーケットプレイスに参加できるのは、Blue Prism社の審査を通過したアクターのみで、スキルのクオリティーに関してもBlue Prismによって安全性・品質が担保されています。
実際に画面上でスキルをBlue Prismに追加する際の手順は以下の通りです。
以上3つのステップだけでもともとのRPAの機能を拡張することができます。
2019年6月現在では、社内で所有するスキルを管理するためのプライベートアセット機能なども追加され、マーケットプレイスの充実化がはかられています。
また、Blue Prism Digital Exchange上でダウンロード数の多いスキルは、ユーザーからのニーズが高い機能であると考えられるため、Blue Prism社が新しいサービスや商品を開発していく上での参考にもしているそうです。実際に、ダウンロード数の多いスキルの一つにAI文書処理のスキルがあるため、新しくインテリジェント文書処理ソリューションとして「Blue Prism Decipher」が発売される見通しです。
今後の方向性としては、パートナー同士がマーケットプレイス上でソリューションを販売できるようにeコマース機能を充実させていくことも検討されているようです。
UiPath Go!
UiPath株式会社が提供している「UiPath Go!」はUiPathのマーケットプレイスです。2018年10月からサービスが開始され、各アクターがRPAパーツをマーケットプレイスに共有したり、ダウンロードしたりすることができます。UiPathに追加する機能(パーツ)のことをコンポーネントと言い、ユーザーがそれぞれ作成したコンポーネントがマーケットプレイス上でやり取りできる仕組みとなっています。
「UiPath Go!」でコンポーネントをダウンロードして自分のRPAの機能を拡張する方法は以下の通りです。
2019年6月現在では437の様々なコンポーネントがUiPath GO!上でやり取りされています。
BizRobo!マーケット
2019年4月からRPAテクノロジーズ株式会社が提供するRPAツール「BizRobo!」のマーケットプレイスとして「BizRobo!マーケット」が新たに開設されました。
「BizRobo!マーケット」を運営しているのは、株式会社MAIAという次世代の働き方を提示して実践している会社です。
株式会社MAIAは、「RPA女子プロジェクト」というフリーランスの女性RPA技術者を輩出するプロジェクトを行っています。様々なスキルを持つRPA技術者とRPAを導入したい、運用したい企業をマッチングさせて彼女たちがオンラインで仕事を行います。具体的な仕事内容としては、企業内でRPA人材を育成すること、RPAロボットの開発などです。2019年3月の時点でRPA女子の数は1,000人を超えていて、現在も増加しています。
そんなRPA女子が作成したRPAロボットのパーツを提供しているのが「BizRobo!マーケット」です。提供されているパーツは主に企業の基幹システムの業務効率向上のための機能を有していて、各企業が必要なパーツを必要な分だけダウンロードして自分たちのRPAに機能を追加することができます。
「BizRobo!マーケット」でダウンロードできる主なパーツは以下の通りです。
また、ユーザーはRPA女子のオンラインサポートを受けられるため、不明点などがあった際に助けてもらうことができます。
「BizRobo!マーケット」を利用するユーザーは4つのプランの中から自分に合ったプランを選ぶことができます。RPA機能をどれくらい追加したいか、どれくらいサポートを受けたいかによって月々の価格が変わってきます。
まずはトライアルとして無償版をダウンロードして、そこから必要に応じてグレードを上げていくことも可能です。
数あるRPAマーケットプレイスの中でも「BizRobo!マーケット」が注目を集めているのは株式会社MAIAが今後求められる働き方改革に大きく貢献しているからです。
そもそも、RPAが普及し始めた背景には日本の少子高齢化による労働力不足があり、多様な働き方を認める社会を作っていこうという流れがあります。そして、RPAによる自動化の位置づけは代替労働力としての「digital worker」として考えられることが多いです。
MAIAが輩出するRPA女子の中には育児や介護などで一度職場を離れた女性たちも多く、彼女たちの復職の場として大きく貢献しています。完全に自宅で仕事をすることができるため、柔軟な働き方が認められる環境となっています。
“Digital Workerの増加”× “復職できる女性の増加”
この様な取り組みが今後も増えて、日本の労働力不足の解消に役立つことが期待されます。
まとめ
Blue Prism、UiPath、BizRobo!の3つの異なるマーケットプレイスについてご紹介しましたがいかがでしょうか。ご紹介した3つのマーケットプレイスはどれも追加パーツのダウンロードからロボットへの機能追加がとても簡単で、初心者でも操作しやすい仕様となっています。また、取り扱われているパーツも日々更新され、マーケットプレイス自体も世間のニーズに合わせて改良されています。
効率よくRPAロボットを開発するためにマーケットプレイスから必要な部品を取り入れることはとても効果的です。業務の効率化のためのRPAロボット、その開発のプロセスにおいてもマーケットプレイスを用いて効率良く行えるとよいでしょう。
参考文献
https://it.impressbm.co.jp/articles/-/17772
https://news.mynavi.jp/article/20190606-838374/
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1189084.html
2019.06.24
2019年6月7日からNECがAI機能を搭載した新しいRPAのソフトウェア「WorkFusion Smart Process Automation」を発売しました。このソフトはRPA製品を販売しているアメリカの会社WorkFusionと戦略的提携を結んだ上で販売されたものです。
現在注目を集めているAI搭載のRPAソフトについてわかりやすくご説明、紹介していきます。
RPAとAIの違い
はじめにRPAとAIの違いについて説明していきます。RPAはRobotic Process Automationの略でデスクトップ上での操作を記憶し、そのルールに則って操作を自動的に再現する技術です。自動化したい作業を人間がロボットに教え、その作業ならばロボットが完全に再現することができます。主にPCでの定型業務に用いられることが多く、人間が行ってきた単純作業を大幅に削減できるというメリットがあります。
一方、AIはArtificial Intelligenceの略で言葉の理解や推測すること、問題解決などの知的な行動をコンピューターに行わせる技術です。そのため、大量のデータをもとにそれらのデータをロボット自体が紐づけたり、分析したりすることができます。AIは学習機能があるため、一度経験したことを継続的に次の作業に活かすことができるというメリットがあります。
「WorkFusion Smart Process Automation」とは
「WorkFusion Smart Process Automation」は2019年6月7日にNECが全世界に向けて発売を開始したRPAソフトです。
RPAにAIの技術を搭載したこのソフトとこれまでのRPAソフトの異なる点はロボットが判断機能を有しているという点です。従来のRPAソフトだと、記憶した作業以外の作業が抽出された場合に人間による判断や修正が必要となり、非定型業務は自動化ができないという問題点がありました。これに対して新ソフトではソフトが新しいフォーマットや情報であってもAIが学習することによって自動で作業を実行してくれます。新たにロボットを作成する必要もないため、使用するロボットの台数も抑えることができます。
具体的に「WorkFusion Smart Process Automation」でできる作業は、例えば多様な帳票を管理することです。レイアウトやフォーマットが異なる帳票からでも必要な情報を集めてきて、一つにまとめることができます。さらに、NECはオートメーション機能に加えOCRやワークフロー機能、傾向分析などを一つのパッケージとして販売しています。このような複数の機能をパッケージで導入することによって一連の業務プロセスをこのソフト上のみで完結・自動化させることができます。
実際にこのソフトを経理や財務の業務に導入したNECグループのNECマネジメントパートナーでは非定型型フォーマットの帳簿から特定の情報を収集する作業の93%を自動できました。また、同社の売り上げ審査業務においても、月に約1万件以上発生していた非定型の処理が効率化でき、作業時間を45%短縮できたという結果が出ています。
RPA×AI 他の事例 「BizRobo!」
RPAテクノロジーズは自社が提供しているRPAソフト「BizRobo!」にAI機能を追加するためにAIベンチャーのaiforce solutionsと業務提携して業務自動化のためのアプリなどを開発しています。RPAとAIを連携させてできることの具体的な例として物件検索サイトを運営している不動産の会社の例を紹介していきます。
不動産会社が物件検索サイトに新しい物件を登録する際のプロセスは以下の通りです。
上記のプロセスはアクセス先のサイトや登録先の物件サイトなどをRPAソフトに覚えさせることによって自動化することができます。
さらに、これらの情報に過去の不動産取引情報を教師データとしてAIに学習させます。すると、短期間で契約に結び付いた物件とそうではない物件を見分けるロジックをAIが作成し、それに基づいて新たに追加した物件を優先的に自動登録していくという一連の流れがロボットによって行われます。数ある不動産物件の中から短期間で契約にまでつなげられそうな物件をAIがピックアップすることによって収益も上がったそうです。
この事例からわかることは、RPAツールはあくまでも単純作業の自動化が目的であり、AIを取り込むことによって人間が考えて選定する、予測する、登録するなどといった様々な作業までも同時に自動化できるということです。人間がクリエイティビティを必要とする作業に専念するためには、判断する力を持つAIの存在が重要だということが分かります。
RPA×AI 他の事例 「コンタクトセンターDXソリューション」
もう一つの事例としてNTTコミュニケーションズが2018年12月から提供している「コンタクトセンターDXソリューション」の事例を紹介します。
このソフトは対話型AIエンジンとRPAを組み合わせたソフトで、コンタクトセンターの業務全体を自動化することができます。オペレーターの人員が不足している中で対面業務にできるだけ人員を割きたいという声が多かったことからこのソフトの開発がすすめられました。もともとNTTコミュニケーションズは対話型自然言語解析AIエンジン「COTOHA Virtual Assistant」やRPAツール「WinActor」のノウハウを持っているため、それらを組み合わせてこのソフトの開発に成功しました。
このソフトが担う業務は、コンタクトセンターにおける応対業務から事務作業まで全てのプロセスにおける業務です。「コンタクトセンターDXソリューション」で実行できる業務は大きく分けて以下の二つのフェーズに分けられます。
フェーズ1 AIが発言を認識・分析して適切に回答する
フェーズ2 RPAツールによって会話で得た情報の記録、処理を自動で実行
これらを一つのソフトが自動的に行うことによって、オペレーターを介さずに応対ができる仕組みを整えることができます。代わりに、店舗の人員や電話オペレーターは「おもてなし」業務に注力することができ、顧客体験の向上につながります。
また、このソフトを導入した際にはシステムの導入だけではなく、その後のテクニカルなサポートもNTTコミュニケーションズが行ってくれるため、継続的にAIやRPAを運用していけるというメリットもあります。
このソフトでAIが応対できるケースは、商品注文、予約、注文内容変更、登録情報紹介・変更、交換・返品、解約・キャンセル、FAQ、空き情報確認、顧客リスト精査、テレアポ、アンケートなど多岐にわたっています。
NTTコミュニケーションズはこのソフトで「OCNモバイルONE」のコンタクトセンターで時間外FAQの問い合わせ受付の実証実験を2018年6月から7月にかけて行ったところ、90%以上の応対がAIだけで完結したそうです。また、商品発注の業務に取り入れたところ約60%の人員削減につながったそうです。
RPA×AIの効果は?
ここまで、いくつかAI搭載型RPAとその導入事例を紹介してきましたが、RPAにAI機能を搭載することで期待できる主な効果は以下の通りです。
⇒結果、一連の業務が一つのRPAツール上で自動化できる
AI搭載型RPAの副次的な効果としてAI導入に対するハードルの高さが下がるというも期待できます。RPAソフトが業務の一部に導入できるのと同じように一部の業務に対してAIを導入できるため、効果を実感できたらさらに規模を拡大するということも可能になるでしょう。
まとめ
AI搭載型のRPAでできる業務がどのような業務であるか、またどのような効果があるかイメージしやすくなったでしょうか。きちんと理解した上で普段の業務の効率アップのためにこのようなRPAツールを導入してみるのもよいですね。
参考文献
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1903/06/news142.html
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1906/06/news069.html
https://iotnews.jp/archives/111483
2019.06.17
働き方改革とは
ここ数年、世間では「働き方改革」が注目を集め、多くの会社が労働環境を改善しようと試みています。
「働き方改革」とは、政府の重要政策の中の一つで、多様な働き方が可能となる社会を作っていこうとする動きです。日本では少子高齢化により、労働力不足が大きな課題となっています。そのため、現在の働き方、労働環境を改善して、様々な働き方を推進していくことにより労働力不足を解消することが必要不可欠なのです。
働き方改革には3つの柱と呼ばれるキーワードがあります。
どれも、日本の労働環境を改善する上で重要ですが今回は働き方改革の3つの柱のうちの一つ、長時間労働の是正に焦点をあてて話を進めます。
長時間労働の是正のために必要な要素として残業時間の削減があります。多くの会社では、「ノー残業デー」を作ったり、「1ヶ月で残業は原則〇〇時間まで」などといった新たなルールを設けたりしているようです。しかし、単に残業時間を減らすことは必ずしも効果的であるとは言えません。持ち帰り残業が増える、一般社員が時間内に業務を終えられなかった場合は管理職の社員がその分の業務もこなさなければならないなどといった新たな課題も出てきました。
そこで重要になるのが作業の効率化・自動化を進めることです。RPA(Robotic Process Automation)ツールなどを使って情報の収集やデータの転記などの定型的な業務を自動化することで、そもそも業務に要する時間を削減することができます。
ここでは、社内で新たな働き方に関するルールを作るとともに、RPAツールを導入して業務の自動化を進めていき、業界内で一番の業績を残している伊藤忠商事の例を紹介します。
制度の改革“朝方勤務”の推進
伊藤忠商事は大手総合商社で、4300人以上の社員を有する会社です。働き方改革に力を入れていて、その一つとして2013年から朝方勤務の制度を始めました。この制度は、午後8時以降の残業を原則禁止として、代わりに朝の5時から8時までの早朝勤務にも深夜勤務と同様の割増賃金を支給するというものです。社内で朝食として軽食を無料で提供するなど、社員が朝方勤務をしやすい環境を作っています。
朝方勤務の施策の結果としては、夜8時以降に残業をしている人の割合が約30%から約5%に減少。夜10時以降に関しては約10%の社員が残っていたのに対して今ではほとんどゼロに近い数字になっているそうです。結果、残業時間の削減にもつながり、社員が限られた時間の中で効率よく仕事を行おうとする環境につながったと言えるでしょう。
高い付加価値を社員が生み出すには
朝方勤務が定着しつつある中で会社が注目したのは、限られた時間の中でいかに高い付加価値を世の中に提供していくかということです。実際に社長の鈴木善久は新入社員へのメッセージとして「古い定型の受け渡し業務など、基本を学んだらさっさとRPA化、自動化して、自分の頭で考え、知恵をめぐらすことにより多くの時間を使う、それが伊藤忠の求める新入社員の姿です。」と言っています。会社として社員により高い価値を出すような仕事、働き方を求めるようになってきていることが分かります。そして2017年の春ごろからIT企画部を中心にRPAの検討が始まりました。
導入までの歩みとその結果
総合商社である伊藤忠商事の特徴として、部署ごとに仕事内容が大きく異なるという点があります。そのため、最初からRPAの横展開をしていくことは容易ではありませんでした。そこで、
という特徴を持つUiPathの導入を決定しました。2017年10月に伊藤忠商事のオフィシャルRPAツールとしてUiPathが認定され、ロボットの稼働が始まりました。ロボットの試行錯誤を繰り返し、社内にも7名のロボット開発者を育成して2018年4月にはRPAの全社展開を進めるための部署COE(Center Of Excellence)が立ち上がりました。COEを中心として、最初は小さい規模でUiPathを導入、成功したら他の部署にも展開して規模を拡大していきました。
その結果、2019年1月の時点では69業務、83ロボットが社内で稼働していて、様々な部署でその成果が見られるようになりました。ロボットは特有の部署の業務に対応するものから、複数の部署の業務において使えるものも導入されています。
実際に導入された業務の例を3つ紹介します。
商品の市況情報を1商品ごとにWebサイトから取得して、その情報を基準によって判定、基準を超えた場合には担当者にメールで通知が届くという一連の業務がロボットにより自動化されました。この業務に年間約148時間かかっており、時間がかかるため今までは2商品しか扱うことができていませんでしたが、このロボットの導入により、6商品のデータを集めることが可能になりました。単純に人が行わなければいけない業務が減るだけではなく、時間の制約から今まで諦めていた選択肢も残しておくことができるようになり、仕事自体の幅も広がります。
客先から伝送受信するデータから出荷帳票を作成し、印刷する業務の自動化によって年間140時間の削減につながりました。繁忙期の作業時間を標準化することにも成功しました。
保険会社から保険金支払い予定データを受領したのちに基幹システムと連動、保険金支払通知書を発行しそれを各担当部署に入金予定データとともにメールに添付、送信するロボットを導入しました。複数の部署が関わる業務のため、担当者の負担が大幅に軽減されました。
また、上記の業務だけに限らず各業務そのものにかかる時間が削減されることに加えて、次の担当者への引継ぎなどが不必要になることも副次的な効果としてあげられます。
RPAツールの導入による定型業務の削減や労働制度の定着のおかげもあり、2018年度第3四半期(4-12月)連結決算において純利益は同11%増の3976億円と4年連続で第3四半期として過去最高益を更新しました。これは、大手総合商社5社の中でも最高の業績となっています。
働きやすい環境を作っていくためには
このようにRPAツールを用いて定型業務の自動化を進めることは、社内のルールや制度の効果を最大限にし、その会社が目指す働き方改革を実現していくために必要不可欠な要素だといえるでしょう。また、逆に長時間労働是正のための社内のルールや制度が増えていくことで、社員が効率良く仕事をすることの重要性を感じ、RPAツール導入の理解が深まることにもつながると考えられます。
ひとつ気を付けておきたいのは、RPAツールの導入はあくまでも手段であり、目的ではないということです。導入の目的、目指すゴールがしっかり定まらないまま導入しようとすると、対象の業務が限定的になってしまったり、社内で思うように受け入れられなかったりする可能性もあります。そのため、何のために業務を自動化するのか、目的をはっきりさせた上でRPAツールの導入を進めていくことが重要だと言えます。
制度の刷新とテクノロジーの導入、二つの要素をうまく掛け合わせていくことで多くの社員にとって働きやすい環境が作れるのではないでしょうか。
<参考文献>
https://www.uipath.com/ja/solutions/case-study/itochu
https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2019/190401.html
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-07/PMJECT6JIJUO01
https://bowgl.com/2017/09/07/work-style-reformation/
2019.06.10
テクノロジーの発展に伴い、良くも悪くも多くの仕事が機械に代替されていく、そんな中で今後必要とされる人材はどんな人材でしょうか?世の中に必要とされるいい人材として生き残っていくための近道として、今日はRPA技術者検定についてお伝えしていきます。
今後さらに必要とされる人材はずばり、テクノロジーを管理・運用できる人材です。
AIやRPAなどの技術が導入されていくことで、今まで人間が行っていた単純作業が大幅に減り、人材も削減されます。しかし、AIツールやRPAツールを用いたからと言ってその作業を完全に機械に任せきりにすることはできません。人間がテクノロジーを管理・運用していかなければならない理由は大きく分けて3つあります。
では、どうやったらこれらのテクノロジーを管理できるような人材に自分自身がなれるでしょうか。また、その能力を活かして働いていくことができるでしょうか。
一番の近道は検定などの資格・ライセンスを取ることです。
資格を取るためには全ての範囲を一通り勉強しなければなりません。どの問題が出題されるかが分からないため、全ての範囲を繰り返し勉強し、それらを自分の知識、スキルとして身に着けることができます。慣れてきたら実践で学べる事もたくさん出てくると思いますが、慣れるまでは基礎知識を身に着け、順番に次のレベルへと進むことが必要だと考えられます。また、多くの検定・試験は受験できる日が年に〇回などと決められているため、計画的に勉強のスケジュールを組んで取り組めるというメリットもあります。
また、資格取得の大きなメリットは客観的に見た際に、分かりやすい指標として機能することです。
RPA技能者検定とは
数ある検定の中で今回わたしが強くお勧めするのはRPA技能者検定です。
様々なテクノロジーやソフトに対して資格・検定は存在しますが、RPAツールに関する資格は現時点(2019年5月)で一つだけ、また2018年4月に始まったばかりなので既に資格を取得している人の数が少なく、今のうちに取得するのがおすすめです。
検定の概要
WinActorについて
WinActorとはNTTグループが開発・研究したRPAツールです。Windows端末上のアプリやシステムなどと連携して業務を自動化するソフトウェア型ロボットです。パソコン上で行われた操作を記録して、それを再現し、自動化するという特徴を持っています。自動化できる操作の範囲は他社のソフトウェアに比べると小さめですが、日本語サポートの体制がとても充実しています。その信頼性と機能性によって2018年12月の時点では1900社を超える会社が導入しています。
初級者向け アソシエイト
受験対象: WinActorの基本的知識を有している方
WinActorでシナリオ作成経験のある方
WinActorの基礎知識を体系的に学びたい方
試験形式: 多岐選択式
出題数: 50問
試験時間: 60分
受験資格: 特になし
受験料: 6,500円
試験会場: CBT試験会場
試験頻度: 随時
合格基準: 原則として、正答率7割以上を合格。ただし、問題の難易度等により変動する場合あり。
試験問題 例題
中級者向け エキスパート
受験対象: WinActorの機能について深く理解し、実際にWinActorを業務上の改善ツールとして活用経験のある方
WinActorのシナリオ変更やトラブル対応など運用保守、システム管理経験のある方
試験形式: 実技試験
出題数: 4問
試験時間: 120分
受験資格: 特になし
受験料: 15,000円
試験会場: 札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡
試験頻度: 4回/年
合格基準: 原則として、正答率6割以上を合格。
ただし、問題の難易度等により変動する場合あり。
試験問題 例題
上級者向け プロフェッショナル
現在は準備中で、未だ試験は行われていません。
RPA技術者検定の勉強法
この検定の勉強法は主に
の二つがあります。
電子書籍
電子書籍はRPA技術者検定のページでエキスパートのみ販売されています。
書籍名: WinActor® RPA技術者検定 エキスパート ~実施問題と解説~
提供形式: 電子書籍形式
販売価格: 3,780円(税込)
販売サイト: ヒューマンアカデミーオンライン https://ec.athuman.com/products/detail/472
Eラーニング
EラーニングはNTTデータと正式に提携している学習機関としてヒューマンソリシアが提供するプログラムが二つ、NTTデータ自体が提供しているプログラムが一つあります。
RPAに興味を持っていて、少し学んでみたいという方にもわかるような内容となっています。合計約50分間のコンテンツとなり、RPAツールの基本的な動きや使い方について学ぶにはちょうど良いでしょう。
受講料は無料なので、資格を取る必要がないという方でもこの機会にRPAツールの基礎を知るきっかけとして試してみるのもいいかもしれませんね。
このプログラムは基本的な動作は理解した上で、実際にシナリオの作成方法を学びたい方向けのプログラムです。合計約2時間50分のコンテンツで17チャプター構成となっています。受講料は20,000円+税で、一つのプログラムを購入すると30日間視聴することができます。
基本的な操作については学んだが、いざ実践となると難しいという方を対象に、よく使う操作ごとに学習していきます。合計約3時間のコンテンツで18チャプター構成となっています。有効期間は30日間と60日間から選ぶことができ、30日間版は21,600円、60日版は37,800円で購入できます。
これらの勉強ツールを自分の勉強時間や勉強の仕方に合わせてうまく活用していくことで資格取得につながるでしょう。
RPA技術者検定に合格したら
RPA技術者検定に挑戦して合格した場合は約一週間でカードタイプの認定証が届きます。
資格を取得したことは、もちろん履歴書などに自身のアピールポイントとして書くことも可能ですし、「RPA認定技術者(WinActor)エキスパート」の肩書を名刺に記載することもできます。名刺への記載に関してはNTTデータが正式にHPで記載方法を指定しており、以下のように専用のロゴを入れることも可能です。
終わりに
以上、今後必要とされる人材となるための方法としてRPA技能者検定の内容やその受験方法、勉強法などについてお伝えしてきました。
仮に、RPAに関する知識や技術の取得が現在の職場でのスキルアップやキャリアアップには直接関係なかったとしても、転職する時にこの資格が有利に働く可能性は非常に高いです。なぜなら、RPAツールが一番使われやすいとされている経理部や人事部はどの会社にもあり、RPAツールを扱える人材が確実に必要となるからです。経理部や人事部だけではなく、全社的にRPAを活用しようとしている会社も多いので、RPA技術者検定を取得することは今後の自分自身の選択肢を増やすことにもつながりそうですね。
みなさんもぜひRPA技術者検定に挑戦してみてはいかがでしょうか。
<参考文献>
https://winactor.com/product/WinActor
2019.06.06
5月8日(水)~10日(金)にかけて、東京ビッグサイト(青海展示場)にて開催されたAI・業務自動化展にブースを出展しておりました。足を運んでいただいた皆様、ありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。ブースにて資料を配布しておりましたが、当初用意していた数よりも多くの方に受け取っていただき、2日目が終わった後に増刷するということも起きました。
弊社ブースではモニタに紹介文やデモ映像などを映していましたが、やはりRPAのデモを映していた時が一番足を止めてくださる方が多かったように感じます。2日目は乗換案内のサイトから交通費をExcelに転記するデモ、3日目はExcelファイルの条件に合うセルを、アウトプット用に作成した別Excelファイルで色を付けていく、というデモを実行していました。
今回の展示会ではRPAにまつわる出展が数多く見受けられ、来場者の方がその多さに感心しているような声も聞こえてくるほどでした。今最も力を入れている技術なのだと実感し、これからどんどん導入する企業が増えていくのだろうと感じられます。
資料からこちらのページにアクセスしてくださった方は、ぜひ過去記事にも目を通していただけるとRPAのことを知ることができるかと思います。また、これからも随時RPAにまつわる情報を発信していきますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
RPA関連のブースは前述のとおり非常に多く、弊社のように『RPAの導入』に重点を置いているところもありましたが、今回は『RPAとほかのシステムの掛け合わせ』がキーワードだったのではないかと思います。元々RPA自体がそれを前提に作られているということもありますが、より幅広い分野で使うことができるように様々な改良、システムの作成が行われているようでした。以下にいくつか興味深かったものを挙げていきます。
・OCR技術
UiPathでは元々できる技術ですが、この技術が向上することでRPAを導入することができる幅が広がるのではないでしょうか。例えば申請書などを紙で提出している企業にとっては、読み取りの精度が上がればRPA導入がより容易になるはずです。
日本語は文字の種類も多く、人の手癖も様々で読み取りが困難な言語ですが、最近では手書き文字でも認識精度が向上しているようでした。また、読み取ったものを正しく訂正することもできるそうで、非常に利便性が高そうです。申請書類だけでなく、他社から郵送されてくる各種契約書や請求書類もこの技術で読み取り、RPAで処理を自動化すれば今まで何時間とかかっていた作業が随分と短縮されるのではないでしょうか。
紙の書類で各種申請を行っている会社はまだ数多くあるかと存じます。もちろん、それらを電子上で申請できるようにするのが今後はスタンダードになっていくかと思いますがまずは紙のままでも自動化できるような仕組みがあるというのは最初の一歩としてRPA導入へのハードルが下がっているのではないかと思い、最初に挙げさせていただきました。小さなところからでも自動化を始めていくことが、今後より重要になるのではないかと感じます。
・RPA×SPA
こちらは書類の整理に特化したサービスです。前述のように、スキャンしたデータを読み取ったあと、それをどこに整理し、保管するかというのに長けたシステムとのことです。書類の内容を判断し自動で振り分けるとのことで、書類がデスクトップ上やフォルダ内に散乱することなく管理が一層楽になるのではないかと思い、紹介いたしました。スキャンした書類というのはどうしても名前をつけ忘れてしまったり、保存先を変更し忘れてしまったりと行方不明になりがちなものですが、こういった仕組みがあれば後からどこに入っているかというような確認もたやすく、便利なのではないでしょうか。更に、例えば人の入れ替わりがあったとしても保存場所さえわかっていれば自動で振り分けてくれるため、どの書類をどこに、どういった名付けルールで保存しなくてはならないかというのを全て説明し記憶する必要もなくなり、引き継ぎも簡易になりそうです。
作業をしている中で必要ファイルを探すのは案外時間がかかるものなので、書類の量が多く、名付けルールが決まっている場合はこういったものを導入するのも業務削減につながるのではないでしょうか。
・Excelの拡張ツール
こちらはRPAに関するものではないのですが、このシステムを入れることで属人化しがちなVBAから脱却するというのがコンセプトのツールです。事実、小さな会社だとVBAを扱えるのが数人しかおらず、一人が開発してもその人が辞めてしまったらなかなかそれを引き継げず、メンテナンスが追いつかなくて結果無用の長物になってしまうことがあるかと思います。更に、今の時代は終身雇用の概念が薄れてきていることもあり、属人化に伴うリスクは増加する一方です。だからこそ、Excelそのものをパワーアップさせることで管理を簡便化し、誰にでも扱えるようにする、という技術が必要とされてくるのではないかと感じました。
また、RPAに関しても野良ロボット問題などが徐々に表面化してきており、それと似通った状況ではないかと考えたのもここで紹介したひとつの理由です。UiPathではその問題を解決するためにOrchestratorなどが用意されていますが、そこまでの規模でない場合にはこういったツールを使うのもまたひとつの手なのではないでしょうか。
全体を通して、社会は自動化、業務効率化というものに対して前向きになっていっているのではないかと感じられました。働き方改革という言葉が浸透するのに伴い、”人間の労働時間を削減する技術”がどんどん進歩していっているのだと感じます。これまでは労働において、楽をすることは悪だという認識もあったかもしれません。ですが、これからの時代はそうではないのだと伝えていくことができそうです。労働問題についてあまり明るいニュースを聞かないこの頃ではありますが、こうした技術の進歩により、確実に流れは変わっているのだと確信できます。これからは労働者人口も減る一方で、RPAも含めた自動化、利便化ツールを導入したものが一手も二手も先をいくのではないかと思います。
RPAの技術を用いて、そうした世の中にどんどん近付いていけるようにしたいと考えた3日間でした。
2019.05.09
写真フィルム業界の大手、富士フイルムホールディングス株式会社(以下、富士フイルムグループ)でもRPAのUiPathが導入されています。
今回は富士フイルムグループの業務の中で、どのように活用されているのかご紹介します。
富士フイルムグループは写真技術で有名ですが、その発達過程で培ってきた技術を応用し今はイメージングソリューション、ヘルスケア&マテリアルズソリューション、ドキュメントソリューションの3つを中心として事業を展開しています。
そして、「Value from Innovation」をコーポレートスローガンとして掲げ、全社をあげて新たな価値の創出や改革に取り組んでいます。
その改革の核として、2017年10月にデジタル変革委員会を立ち上げグループ全体のデジタルトランスフォーメーションによる業務改革を推進しています。
デジタルトランスフォーメーションとは、デジタルテクノロジーによって経営や事業のあり方、更には生活や働き方までも変革することです。
例えば、満員電車通勤していたものをテレワークなど在宅勤務ができるようにシフトして通勤時間のストレスや時間を削減したりできます。
これと似たような言葉でデジタライゼーションという言葉があります。
こちらはデジタルテクノロジーを使って既製品の付加価値を高めたり、業務の効率化を図ることです。
RPAの技術を使うことはデジタライゼーションで、RPA技術によって事務作業をしていた人材が別のランクの作業に移行できることがデジタルトランスフォーメーションということです。
そういった改革の一環としてRPAの導入を検討し、2017年1月から3月まで経理部をパイロットとして実証実験が行われました。
実はUiPathを導入後に多くの気づきがあったようです。
それは現状のプロセスをそのままRPAへ移行しても大した効果が得られないということです。そこで、RPAを前提としたBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を行う事にしました。
“ビジネス・プロセスを見直し抜本的に設計しなおすこと。社内の業務プロセスを改善するという意味にとどまらず、顧客(市場)を中心としたビジネスのプロセスが最適になるように社内のムダや不合理を省き、しくみを改めること。主に、コスト削減とスピードアップが鍵となる。”
いかがでしたでしょうか。
富士フイルムグループは今後、経理部全員がRPAを開発し使いこなせるようになることを目標とし、IT部門を介さずにユーザー部門が主導するRPA活用による業務の効率化の取り組みを前者に広げていこうとしているようです。
このように様々な場所で普及していけば、みなさんの会社で使用される日はすぐかもしれません。
参考ページ
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1901/08/news007.html
https://kotobank.jp/word/BPR-179030
2019.05.08
昨今の医療業界は過重労働や人手不足に悩まされています。
さらに平均寿命が延びたことで、高齢化社会に拍車がかかり労働者と患者の需要と供給は釣り合わなくなっていています。
医師や看護師の業務は多岐にわたり、カルテや書類などの整理といった事務作業も担っていることでしょう。
そんな中、名古屋大学医学部付属病院でRPAツールの「BizRobo!」を5月より本格導入すると発表がありました。国立大学病院のなかでは先行する事例になるようです。
BizRobo!はRPAテクノロジーズというRPAデジタルレイバーのベーステクノロジーを提供する会社の製品です。
“BizRobo!は、ホワイトカラーの生産性を革新する、ソフトウェアロボット(Digital Labor)の導入・運用を支援するデジタルレイバープラットフォームです。
「ロボット」と「IT」によって、ホワイトカラーをルーティンワークから解放し、企業を始め社会全体の生産性向上を図り、未来の働き方を変えていきます。”
HPではこのように紹介されており、ホワイトカラー(事務系の仕事をする労働者)の作業を自動化して効率を上げようというRPAです。
普段、WEB上やエクセルなどで行なっている作業を専用のブラウザで行うことによって、マクロ機能が工程を全て記録してロボットアプリが出来上がります。そのロボットが記録した動きを再現して作業を代行してくれるのです。
そして、新しいシステムの構築やプログラミングの必要もないので、様々な人に簡単に使えるという利点もあります。
更に大掛かりな設備なども必要としないので、費用も抑えることができます。
すでに銀行からネット犯罪の検知や監視、更にはカーナビやスマホのコンテンツ連携など業種を問わず導入されているようです。
名古屋大学医学部付属病院は昨年の12月から「BizRobo!」の販売代理店でもあるスカイライトコンサルティング株式会社に支援のもと業務の洗い出しを行い、実証実験を行ってきました。
その結果、合計で415.7時間の業務削減が可能となりました。
作成された9つのロボットは職員自らの手で作成されており、「BizRobo!」の操作性の良さが伺えますね。
2019年5月からは、院内全ての事務部門において導入することによって、合計で約9,800時間の業務効率化が見込まれています。
名古屋大学医学部附属病院の永家清考事務部長はこのようにコメントしています。
“定型的な業務についてはRPAを推進し、職員は病院の企画・戦略的な業務、患者サービス、医師や看護師等コメディカルの支援等、より付加価値の高い業務へのシフトを実現していきたい。
RPAテクノロジーズおよびスカイライトコンサルティングは、今年度を医療業界のRPA元年と位置付け、BizRobo!のサービス提供に加えて、医療業界に特化した研究会や協会設立等コミュニティ作りにも注力し、医療機関同士の横連携を強化する等業界全体を支援してまいります。”
いかがでしたでしょうか。
医師や看護師も人間です。なので、負担が増えれば当然体を壊してしまいます。
RPAの導入での負担が減り、患者も医師も健康的な世の中になると良いですね。
参考ページ
https://rpa-bank.com/rpanews/19290/
https://rpa-technologies.com/products/first/
2019.05.07
RPAに関するコンテンツは近年とても盛りあがりを見せていて、大手企業から地方自治体まで幅広く導入されるようになってきています。
しかし、一方でRPAを導入する事により、非効率な業務システムを生きながらえさせる事になるのではないかという懸念も出ているようです。
今回は導入における一つのヒントとしてデジタルトランスインフォメーションをご紹介します。
デジタルトランスフォーメーションとは、デジタルテクノロジーによって経営や事業のあり方、更には生活や働き方までも変革することです。
例えば、満員電車通勤していたものをテレワークなど在宅勤務ができるようにシフトして通勤時間のストレスや時間を削減したりできます。
これと似たような言葉でデジタライゼーションという言葉があります。
こちらはデジタルテクノロジーを使って既製品の付加価値を高めたり、業務の効率化を図ることです。
なぜこのような疑問が浮かび上がるかというと、現在の成功例としてあげられているものは、生命保険会社や銀行などが多く、そのほとんどがデータベースの数値をコピペするといったものばかりだったからです。
非効率なワークフロー自体を改善する事をしなければならないのにも関わらず、非効率なまま機械に任せてしまう事になります。
これでは、人の労働量が機械にすり替わっただけで根本的な問題自体は何も解決していません。
その結果、ある程度の設備投資できる大手企業は効率化が進み中小企業は相変わらず…といったような格差が広がることになってしまうかもしれません。
例えば、紙媒体をOCRなどで読み取りRPAで別の媒体に入力するという作業というのも、そもそも紙媒体をデータへ転記するという手順を省く様な改善をするべきところだということです。
例えば、初めからWeb上でデータを入力してもらう様に設計したり、APIを用意してWebサイトから業者の基幹システムへ自動でデータが流れるようにしたりする事により不必要な作業をなくすことができます。
“APIとは、あるコンピュータプログラム(ソフトウェア)の機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約のこと。”
いかがでしたでしょうか。
RPAはとても便利な技術ですが、それに甘んじて本来もっと良くなるはずの技術の進歩が止まってしまっては元も子もありませんね。
便利な技術にあぐらをかいて本来やれるべきことを見失わない様にしたいですね。
参考サイト
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1904/24/news003.html
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1712/07/news036.html
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1901/08/news007.html
2019.04.15
前回は、Queue(キュー)とTransaction(トランザクション)を使用するにあたり、UiPath Orchestratorの登録方法をご説明しました。
*Orchestratorの登録がまだの方は、【UiPath OrchestratorのQueue(キュー)とTransaction(トランザクション)について】を参考に登録してみてください。
今回の記事では、Orchestrator のQueue(キュー)とTransaction(トランザクション)についてご紹介いたします。
はじめに…
使用するデータ型
トランザクションアイテム:QueueItem型
トランザクションアイテムデータ:
例)String型の中身を取り出す場合は…
“トランザクションアイテムの変数名.SpecificContent(“カラム名”).ToString”
まず始めに、データを収納する場所である“キュー”をWeb(UiPath Orchestrator)上で作成し、そのキューの名前を使って、ロボットがキューにアイテムを収納していきます。
UiPath Orchestrator > キュー > 追加
キュー新規作成後(Orchestrator > キュー)↓
キュー新規作成後(Orchestrator > キュー > トランザクション)↓
キューに追加したいDataTableをForEachRowアクティビティで、各行ごとに繰り返し、一行ずつキューアイテムとしてキューに格納する。
今回は、デスクトップ上にあるfruitsTable.xlsxファイルを読み込んで、キューに追加↓
アクティビティ > 使用可能 > Orchestrator > キュー > キューにアイテムを追加
-プロパティ-
キュー名:①で作成した新規キューの名前
アイテム情報:各行の格納したい列を値として指定。
名前:Orchestratorに表示されるカラム名
方向:キューに対して値を入力するため“入力”
型:値のデータ型
値:キューに格納する値
キューに追加したトランザクションアイテムを取得する。
取得したトランザクションアイテムのステータスは、“実行中”となる。
<取得されるアイテムの順番>
このアクティビティで取得できるトランザクションアイテムは、未処理のアイテムのみ。未処理のアイテムが複数ある場合は、追加された順に取得される。
アクティビティ > 使用可能 > Orchestrator > キュー > トランザクションアイテムを取得
-プロパティ-
キュー名:取得したい(Orchestratorで設定されている)キューの名前
トランザクションアイテム:QueueItem型の変数
分岐の条件として、トランザクションアイテムをキューから取得できたか否かを判断する。
取得できなかった場合→処理終了
取得できた場合→⑤へ
例)“③で取得したトランザクションアイテムの変数 Is Nothing“
アクティビティ > 使用可能 > プログラミング > コレクション > コレクションに追
加
-プロパティ-
TypeArgument:QueueItem型
コレクション:QueueItem型のリスト変数(あらかじめ作成しておく)
項目:③で取得したトランザクションアイテムの変数
※コレクションに追加したアイテムは、“ForEach”アクティビティで取り出しが可能。
今回は、コレクション内のアイテムをExcelファイルに出力。
-プロパティ-
TypeArgument:QueueItem型
コレクション値:QueueItem型のリスト変数
アクティビティ > 使用可能 > Orchestrator > キュー > トランザクションのステータスを設定
-プロパティ-
ステータス:トランザクションアイテムのステータスを指定(成功/失敗)
トランザクションアイテム:③で取得したトランザクションアイテムの変数
※トランザクションのステータスは、“成功”と“失敗”の設定のみですが、“実行中”のアイテムに限り、“進捗”は独自で設定することができます。例)“遅れ気味”
ステータスを“成功”に変更した場合、実行が完了したという認識となり、設定した進捗は画面から消えます。
シナリオ実行中のキュー画面(Orchestrator > キュー)↓
シナリオ完了後のキュー(Orchestrator > キュー)↓
シナリオ完了後のトランザクション画面(Orchestrator > キュー > トランザクション)↓
トランザクションの詳細表示画面
(Orchestrator > キュー > トランザクション > 詳細を表示)↓
これで、キュー内のトランザクションアイテムがすべて処理できました。
今回作成したシナリオを載せておくので、参考にしてみてください。
今回は、キューとトランザクションについて、どのようなデータが収納することが可能で、どのようなデータ型でアイテムが取得出来るのか、シナリオの書き方も含めご紹介させていただきました。
記載したシナリオは、取得したトランザクションアイテムのリストデータを、Excelに書き込むという単純な処理です。
そのため、ロボット2台で並行処理した場合と、ロボット1台で処理した場合の処理時間は、あまり変わりませんでしたが、処理が沢山ある場合、または処理するデータが多い場合は、処理時間が大幅に削減することができるため、とても便利な機能と言えます。
まだキューとトランザクションに触れていない方は、是非試してみてください。
2019.04.12
最近、TVのCMでもよく見るようになった転職サイト「ビズリーチ」このサイトを運営している株式会社ビズリーチ(以下、ビズリーチ)も社内業務改革を推進するBPR部門を設けています。
そのため、社内業務改革の一環としてRPAのUiPathを取り入れています。
きっかけは人事における社内アンケートの収集業務だったようです。
2019年1月時点で18名で運用していたBPR部ですが、収集業務を全て人の手で行なっていた頃はこの業務に3日ほどかかっていました。
その問題を解決するために社内ですでに契約していたRPAツールを使用してみたところ、3日かかっていた作業が1時間足らずで完了しました。
このことをきっかけに、他の業務の改善もできるのではないかと考え、より最適なRPA導入に向けた検討を開始したようです。
当時、ビズリーチはすでに別のRPAを契約し、そちらの社内展開を考えていました。
しかし、当時導入してたものはプログラミングの知識を必要とする開発者向けのツールだったのです。
そのため、社内でユーザーを増やすことが困難であると判断したことによって、新しいRPAツールの検討を開始しました。
検討内容は
UiPathは、業界で最も直感的に操作できる、豊富な機能を備えた自動化開発環境を提供します。ロボットワークフローは、単純にアクティビティをワークフローにドラッグ・アンド・ドロップするか、レコーダーを使用するだけで行えます。
HPにもこのように記載されているように、エンジニア経験のない社員でも1週間でRPAのシナリオ(ワークフロー)作成ができるようになったようです。
UiPathにはUiPathアカデミーという無償のオープンオンライントレーニングプラットフォームがあります。
こちらから基本的な使用方法を習得できるので、非常に便利です。
インターネットで「UiPath」と検索すると使い方説明一覧サイトなど様々な情報が出てきます。
非常に丁寧に解説しているサイトもあるので、大体の悩みは解決するでしょう。
さらに、価格の安さも後押しして、UiPathの導入に踏み切ったようです。
人事部では媒体ごとに異なるフォーマットになっている情報を採用管理システムに入力し、さらにCSVファイルに再形成するという作業を行なっていました。
これではミスをした時に、1つずつやり直さなくてはいけないので、多くの時間を消費してしまうことになります。
しかし、UiPath導入により毎日30分から1時間行なっていた作業を10分程度まで短縮することに成功しました。
その結果、取り組める業務が増えたという社内ユーザーの声も増えたようです。
いかがでしたでしょうか。
UIが使いやすいだけでなく、問題が起きた時に自己解決ができるという点は非常に大きな利点だと思います。
初めてのRPA導入に検討してみてはいかがでしょうか。
https://www.uipath.com/ja/solutions/case-study/bizreach
https://www.uipath.com/ja/products/platform
2019.04.11
前回の「デバッグについて① ~変数と動作確認~ 」では、
ご紹介しました。
今回はデバッグを使用して、不具合の対処方法についてご紹介していこうと思います。
いざ作成したロボットを実行してみたら、実行後の結果が想定していた結果と違っている・・・!
または、エラーが発生して処理が中断してしまう・・・
なんてことは開発をしていく中でよく起こりえることです。
そんな時に解決方法をいくつか知っておくと、上記の様なことが発生しても対処方法があるので自分で難なく解決することができるかもしれません!
それでは不具合を解決に導く方法をご紹介していこうと思います。
処理中の不具合のことを指します。
想定した動作通りに動かない部分のことです。
バグは開発者自身によって発生してしまうものもあれば、外的要因によるものなど原因は様々です。
ここでご紹介するバグの対処方法は、
開発者によって発生したもの
に絞ります。
今回も「デバッグについて① ~変数と動作確認~ 」で使用した、商品登録ロボットを使用します。
こちらがロボットの一連の処理のながれです。
1.エクセルファイル「登録用データ.xlsx」から商品情報を読み込む
2.読み込んだ登録情報が正しいかチェック
2-1.チェックOKの場合⇒ログに処理開始のメッセージを出力
2-2.チェックNGの場合⇒エラー処理を行う
3.追加する商品情報の有無をチェック
3-1.新しく追加する商品情報があった場合⇒
3-1-1.読み込んだ商品をエクセルファイル「商品データ.xlsx」に出力
3-1-2.ログに登録成功のメッセージを出力
3-2.新しく追加する商品情報がなかった場合⇒
3-2-1.ログに登録データなしのメッセージを出力
4.ログに処理終了のメッセージを出力
5.1〜4の処理中にエラーが発生した場合、エラーメッセージをメッセージボックスに表示します。
今回の商品登録ロボットは、すべての処理をトライキャッチで囲んでいるので、エラーが発生した場合はエラーメッセージを表示して正常に終了するようになっています。
それでは開発者自身によって発生したバグに対する対処方法についてご紹介します。
事前に仕込んだバグは下記の通りです。
まずは「実行」をクリックして、実行してみると下記のメッセージが表示されます。
エラーメッセージの内容から、ファイルが見つからないまたは存在しないことが原因であると推測されます。
実行した商品登録ロボットでファイルを使用するのは、
・1.エクセルファイル「登録用データ.xlsx」から商品情報を読み込む
・3-1-1.読み込んだ商品をエクセルファイル「商品データ.xlsx」に出力
この2か所なので、どちらか一方あるいは両方に問題があることが予想できるかと思います。
この時点ではまだエクセルファイルを読み込む直前で止まっています。
エラーメッセージが表示され、最初のエラー発生個所が発見できました。
「詳細」をクリックすると、発生場所などの詳細なエラー情報が表示されます。
メッセージだけで原因がわからない場合は、詳細を確認するとよいかと思います。
今回の場合は、「ワークブックが存在しません」とあるので、
・エクセルファイルのファイルパスが間違っている
・必要なエクセルファイルを適切なところに配置していない
ことが原因であると推測されます。
エラーメッセージの「中断」をクリック後、デバッグ実行を停止します。
ここからはエラーが発生した「登録データを読み込み」(Read Rangeアクティビティ)を修正していきます。
設計書などを確認し、正しいファルダ構成やファイル名を確認しましょう。
実行した商品登録ロボットで使用するエクセルファイルのフォルダ構成とファイル名は下記の通りとします。
こちらがエラー発生時に指定されていたファイルパスです。
本来ならば、ファイルパスは「”データ\登録用データ.xlsx”」でなければいけません。
今回のエラーは、ファイルパスの誤りが原因で発生したことがわかりました。
エラーが消え、エクセルファイル内のデータも取得できています。
「続行」をクリックし、次のブレークポイントで一時停止をしたら「ステップイン」をクリックしてみましょう。
エクセルファイルに出力するアクティビティにエラーはありませんでした。
最後まで実行してエクセルファイルを確認してみましょう。
今回の場合はエクセルファイルを読み込んで、別のエクセルファイルにデータを出力するので、取得データと出力結果が想定通りであるか確認します。
結果に問題はありませんでした。
また、先ほど発生したエラーがなくなりました!
出力パネルからもすべての処理が正常に終了したことが確認できたので、バグを取り除くことができました。
開発をはじめたばかりの頃は、実行中にUiPath Studioなどからのエラーメッセージが表示されると細かい英字がびっしり書かれていて確認することすら嫌になってしまうかもしれませんが、そのエラーメッセージにはエラー発生場所や原因を導き出すための手がかりがあるので、まずはエラー内容を確認することから手を付けてみたらよいのではないかと個人的には思います。
あとは例外の種類によってどこに原因があるのかわかる場合もあるので、例外についてネットで検索して内容を確認してみるのもよいかもしれません。
デバッグ実行をあまり使用することが無い・・・という人がいましたら、ぜひ1度使ってみることをお勧めします。
処理を1つずつ進めていくことができるので、処理の流れや条件分岐などの動作確認、変数の中身の確認などができるので、よろしければ1度試してみてはいかがでしょうか。
2019.04.08
賃貸住宅の契約は基本的に2年ごとに更新するものが一般的とされています。
その為、入居者の入れ替わりは毎年かなりの数あることでしょう。
その度に契約・解約に関するデータの入力などの煩雑な作業が数多く発生するので、人の手でやるとなるとかなりの時間を浪費するだけではなく、重大なミスにつながる恐れもあります。
今回は、不動産会社で取り入れた事例をご紹介します。
“東急住宅リース株式会社(以下、東急住宅リース)は、約9万戸に上る賃貸住宅を管理している。毎年約20%の入居者が入れ替わり、そのたびに契約・解約に関する基幹システムへのデータ入力作業が発生するなど、その業務には細かく煩雑な作業が数多く存在している。東急住宅リースでは、賃貸住宅のオーナーに対する資産価値を高めるための提案や新しいサービスの企画など、資産運用のプロフェッショナルとして、より提案を中心とした業務に社員が専念できる環境を整えるため、これらの煩雑な事務作業を効率化したいという課題があった。この課題の解決に向け導入されたツールがRPAだ。”
上記のように東急住宅リース株式会社では、毎年約20%もの入居者の入れ替わりが発生しているようです。単純計算で約18,000件もの事務作業が発生しているのです。
この入力作業を削減するために同社が取り入れたのが、RPAツールの「Uipath」です。
この「Uipath」というRPAはニューヨークに本社を置くUiPath株式会社より販売されているものです。
日本では2017年より日本法人を設立しました。
その高い技術力が注目され、大手金融機関や広告代理店などへの導入されています。
その結果、日本国内で急速に実績を伸ばしています。
Uipathの基本操作に関してはこちらの記事も参考になります。
東急住宅リース株式会社では、このUipathを本格稼働をさせてから約6ヶ月で74個のロボットの開発に成功しました。
その事務業務の削減効果は月間5,000時間にのぼり、年間では40,000時間削減できる見込みです。
今後はOCR(光学的文字認識)を活用してデータ化したものとRPAを組み合わせて、活用範囲を広げることも視野に入れているようです。
いかがでしたでしょうか。
家を借りるということは、ほとんどの方が経験されることだと思います。
現状、良い物件に出会うためには時間もとてもかかります。
様々な企業がRPAを導入することにより、社員の提案の質が向上すれば、理想の住まいに出会える確率もグンと上がりそうですね。
参考ページ
https://www.uipath.com/ja/rpa/robotic-process-automation
https://www.uipath.com/ja/solutions/case-study/tokyu-housing-lease
https://rpa-bank.com/report/5415/?read_more=1
2019.04.05
先日、4月1日に「働き方改革」における、時間外労働(残業)の上限規制や、年次有給休暇(年休)の年5日取得義務化などを盛り込んだ改正法が施行されました。
これにより、社員の作業時間がより貴重なものになっているのではないでしょうか。
そこで、登録作業など単純な作業の時間短縮に大きく貢献するのがRPA(Robotic Process Automation)です。
このRPAはパソコン作業上の定型作業をソフトウェアによって自動化することが出来ます。
これにより、顧客リストの登録など、人の判断を必要としない作業を決まったルールに則り自動で行ってくれます。
そのため、ミスの回避や時間削減だけでは無く、単純作業に追われていた人材を育成し、更に高いレベルの作業へ回すことが出来ます。
すでに様々な企業が取り入れていますが、地方自治体でも取り入れたとの声も聞こえてくるほど、あらゆる場面でなくてはならないものになってきているのではないでしょうか。
しかし、一方で未だに導入していない企業も多いのも事実です。
実は、RPAは導入する段階で業務データやフローをある程度整備しておかなければ重大なエラーが発生することもあります。
個々の持つデータをある程度整備し、まとめておく必要があるのです。
そこで、株式会社ショーケース・ティービーは、業務効率化を促進するためGoogleスプレッドシートを使用して業務自動化を図るサービスを発表しました。
” 当サービスは、企業が大量に保有する業務ExcelファイルをGoogleスプレッドシートで一元化し、自動化プログラムのスクリプトを書き込みクラウド上で、管理できるようデータの最適化を行います。これにより個別で保有していたデータを関係者間で共有することが容易となり自動加工、編集処理により誤入力することもなくなり業務効率化を実現できます。
当社は業務自動化において、RPA導入を提案してまいりましたが、多くの企業様が、導入前の段階で業務データやフローの整備が必要なケースが明確となり、スムーズに自動化を進めることができないケースが多々見受けられました。
そこで、RPA導入前にGoogleスプレッドシートで必要なデータの最適化を行い簡単な業務自動化サポートをご提案するに至りました。
最適化されたデータを利用することで、スムーズにRPA導入を進めることが可能になります。”
上記のように、やはり導入前の段階でつまずいてしまうケースも多々あったようです。
Googleスプレッドシートはオンライン上で誰でも簡単に閲覧編集ができるので、個別に持っているファイルをやり取りする手間も省け、簡単に情報の統合が出来そうですね。
更に、同社は手軽なコストで導入できるということも強みにしているようです。
価格設定やサービス内容は以下のようになっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
これから様々な場面でRPAの技術が見受けられるようになって行くと思います。
今回、ご紹介したような導入前段階のツールも充実していけば、皆さんの生活の中にRPAがあたり前にある世の中になる日も近いのでは無いでしょうか。
参考ページ
https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/190402/ecd1904020500002-n1.htm
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000003483.html
2019.04.04
3月26日、富士通株式会社(以下富士通)は埼玉県庁の15業務に対して、自社開発のRPAツール「FUJITSU Software Interdevelop Axelute(インターディベロップ アクセリュート)」の導入を支援したと発表しました。
埼玉県がRPAを取り入れる理由
“埼玉県では、新技術の導入による県庁のスマート化に取り組んでいます。その一環として、事務処理を自動化するRPA(※)を導入し、定型的な業務にかかる負担を軽減することにより事務の効率化や職員が政策立案に集中する時間の確保を目指しています。”
このように埼玉県は積極的に新技術を取り入れる方針を掲げており、平成30年度に富士通の支援を受け15の業務でRPAを導入しました。
しかし、この15業務全ての操作シナリオを富士通が担当したわけではないようです。
15業務のうち7業務は富士通が作成し、残りの8業務を県の職員が作成しています。
では、一体このツールはどんなものなのでしょうか。
富士通のHP上ではこのように紹介されています。
“Windowsの操作を自動化し、業務を効率化するRPAツール
画面からのデータ入力やパソコンの環境設定など、日々の作業では単一操作の繰り返しが多くみられます。Interdevelop Axeluteは、これらの作業におけるキーボードからの打鍵やマウス操作を自動化し、人手によるミスを削減し、定型業務を効率化します。“
(富士通公式ページ より引用)
このように、様々な作業を自動化することによって、今までこの作業に時間をかけていた人員をより高いレベルの作業へシフト出来るようになります。
戸籍住民登録や各種証明の発行など、何かと入力作業の多いお役所仕事にはぴったりのツールではないでしょうか。
更にこのツールの特徴として、GUIで分かりやすい編集画面になっているという点があります。
(富士通公式ページ より引用)
図のように編集画面には操作画面が表示されるので、プログラミングの知識がなくても簡単に繰り返しや条件分岐などのシナリオを編集・作成することが可能です。
このように、簡単にシナリオの編集・作成が可能なので、短期間のうちに県の職員でも8業務分もの操作シナリオを作成することが出来たのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか。
埼玉県は昨年度にこのRPAツールを導入し、まず7業務で検証を行いました。
結果、作業時間を最大で92%削減できる効果を確認しているそうです。
4月からは更に独自に取り組んでいた8業務を加えて本運用を開始する予定です。
埼玉県のように、行政がどんどん新しいものを取り入れていくことにより、より良い住みやすい地域に発展して行くのではないでしょうか。
参考ページ
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1176585.html
http://www.pref.saitama.lg.jp/a0001/news/page/2018/0326-0101.html
2019.04.03
近年「働き方改革」と共に有名になりつつあるワード、“RPA”が市場に出回りつつあります。しかし、その実態をきちんと把握してうまく使いこなせている人はどれだけいるでしょうか。「RPAがあればもうこっちのものだ、ガハハハッ!」、そんな声がほんの少し耳を掠める今日この頃だからこそ、RPAの良いところも悪いところもひっくるめて皆様に理解していただきたいと思っております。
まず、RPAとは何ぞやという点から説明させていただきます。(耳にタコだという人は飛ばしてください)
PRAとは、Robotic Process Automationの略で、一般的なパソコン上の定型作業をソフトウェアによって自動化することです。例えば、営業の為に今月までの1年間の売上などのデータをグラフ化し資料化する作業。または人事が行うような、SaaS型サービスサイトへの何十人、何百人もの社員のアカウントを登録する作業や、毎月行う定型の報告や情報取得・提供など、人間の判断を必要とせず決まったルールに則ってPC上で完結する作業は自動化しやすい業務となります。一般的にRPAが可能といわれている業務としては、バックオフィス、情報収集、調査、電子取引、業務代行、マーケティングといった分野が挙げられます。
PRAがあれば何でも任せられるかというと、決して頭を縦にふれません。RPAを導入するには、まずそれぞれのRPAソフトが持つ機能を理解し、自動化する業務にやOS環境に応じてどのソフトが良いのかを選定し、導入のための費用や手間を考慮した上でプログラムを組み立てるか否かを決定しなければなりません。
以下、RPAを導入にするにあたっての思い当たる留意点をいくつか挙げます。
RPA導入に対し、いくら事業本部が乗り気でも現場ではあまり必要と感じていないケースがよく見受けられます。現場側は、業務を自動化することで、自分たちの仕事を奪われるという認識であるため、導入しようとしたときに反発を受けたり混乱が生まれたりすることがあります。
逆に、現在の業務量が多く、今の人員では人手不足といった場合に、PRAを導入することで現場の負担が減り、業務の細部まで自分たちでコントロールできるといったあるべき姿に繋がるのであれば現場の人たちにとって嬉しいことです。そしてRPAを導入するときには、自動化する作業を一番分かっている現場の人間が主体となりロボットを組み立てていくことが一番効率的です。バグやエラーが発生してロボットが停止してしまった場合、組み立てたのが本人たちであればすぐロボットを調整することもできます。
慣例で行っている業務の中には、そもそも取り組む必要のない業務があることも。RPAを導入するにしても、ソフト上でのロボットの開発が必要となってくるため、なるべくその手間を省きたいですよね。また、同じ業務をする場合でも人によってやり方が変わってくるでしょうし、どんなやり方が一番いいのかを部署内で話し合って決定した上で簡略化された手順で導入した方が効率的です。
ロボットを組み立てる上では、処理の途中にExcelなどの表計算を挟むことでロボットが複雑化するのを防ぐという手もあります。業務改善を行った上で簡潔な状態でロボットを導入することが望ましいでしょう。
例えば、事業本部で社内全体における定型の作業が数百個分あるとしましょう。同じことを繰り返すことが多いほど人的ミスが生じやすく時間もかかるため、RPAを導入することに意義があります。
これに対して、各現場で行うような、作業容量が少なく、違った種類の短い業務がたくさんある場合には、1つ1つの作業に対しロボットを組み立てたとしてもあまり工数削減の面で成果が出にくいことも考えられます。そこで、細かい業務を束ねて一つの処理ロボットに組み込んでおく、または急ぎでないものは、毎日の作業を月に1回に束ねてロボットに行わせるなど、効果の出る方法を考えて導入することもできるかもしれませんので、早々に諦めないでくださいね。
今日では多くのRPAソフトが存在します。各RPA製品にはそれぞれ仕様があり、製品によってできること、できないことがあります。何を導入するかは、ソフトの使い勝手や価格で利用検討するのはもちろんのこと、どういった作業をするかを現場レベルで確かめた上で選定した方がよいでしょう。
RPA製品にはPCやサーバーにインストールして利用する「オンプレミス型」と、インターネットに接続し、ブラウザ上でロボットを稼働させる「クラウド型」があります。
「オンプレミス型」は、ロボットにさせる作業がPCやサーバー上のアプリケーションを含むものになる場合はこちらを選ぶ必要があります。もう一つの「クラウド型」は、基本ウェブブラウザ上で完結する作業を行う場合に利用できます。※ローカル上のアプリケーションやファイルを操作する場合は別のプログラムを書くことで可能になる場合もありますが、そういった機能は製品一つ一つの仕様を確認する必要があります。
現在世に出ているRPA製品の大半がオンプレミス型となっています。AI Platformなど、オンプレミス型とクラウド型の両方のサービスを提供している製品もあります。
これは簡単ですね。自動化する作業をしているPCがWindowsかmacOSかLinuxか、どれになるかで使えるRPAソフトが限られてきます。
現在Windowsで動くものがほとんどで、その次にLinux、最後にmacOSとなり、macOSで利用するのであれば、HeartCore Roboくらいに限られてきます。そもそもmacOSで事務作業をするとしてもクラウド上のサービス上で行うことが多いと思われることから、RPAソフトのほとんどがWindows用で開発されています。
RPAの種類には、「サーバー型」と「デスクトップ型」に分類されます。自動化する作業がPCのデスクトップ上で行われる場合はデスクトップ型を利用します。日常のデスクトップ上で行う簡単な作業には、このデスクトップ型が向いています。しかしデメリットとしては、処理の種類によってその自動処理がPC端末を占有してしまい、同じPC上で別の作業を同時に行えないことです。
もう一つの「サーバー型」というのは、デスクトップ上での作業を必要としない処理で、複数のウェブサイト上の情報を取得してメールで送ったり、グラフ化したりするなどの作業を、PCの電源を入れずとも、PC画面を占有されずに実行することができます。また、サーバー上にアップした一つのロボットを何台ものPC上で同時処理させることもできます。バッチ処理など大量の作業を夜間に行わせるといったことにも向いています。
いかがでしたでしょうか。RPAを導入するにおいても、現場の状況や作業内容を深く理解していないと、本部側が勝手に現場に導入させても現場でうまく利用されず、余計なお世話と思われてしまうことにもなりかねません。現場の人が今の状態で行うべき業務を全て遂行するのが難しく、更にやりたいと思っている仕事に手が回らない、そういう状況には最適でしょう。また、導入する際には、現状の作業の進め方を見直し、効率化した上で、作業内容やインストールする環境を確認した上でどの製品を使うかを決める必要があります。製品から先に導入してしまい、この作業ができなかった、とならないように注意してくださいね。
2019.04.02
弊社では、RPAのプロジェクトを数多く実施しておりますが、少なからずのクライアントにおいてRPAの開発と並行して、現場担当者様へのトレーニングの依頼もお受けすることがあります。RPAというものの性質上、その哲学に「現場で業務改善を進められるようになる」というコンセプトがあります。そのために、UiPathを始めRPA各種ツールのUIは比較的プログラミング初心者でも取り組みやすい構成になっています。ただ、正直申し上げますと、このRPAツールは確かに、スクラッチでJavaやC言語でシステム開発するより数段簡単ではありますが、とはいえ初心者が明日からすぐできるかというとそこまでは容易くはないのが実情です。そこで弊社の様な会社にトレーニングの依頼が来ることになります。
弊社のトレーニングプログラム「RPA Lab」のご紹介
弊社では、今まで多くの企業様にトレーニングをしてきた実績を活かし、RPAの研修プログラムを開発しております。詳細は上記にリンクを貼っている弊社サイトで紹介しております。今回のこのブログでは、このトレーニングについての所見を述べたいと思います。
RPAのトレーニングをしていて、よく課題になるのは「受講者様がその研修を通じてどこまでのスキルを身につけるのを目標とするか」です。その際に重要となるは、RPAの開発工程というものをしっかりと理解することです。RPAの開発工程というものは、シンプルに分解すると以下になります。
ただ、現在PoC段階でほんの数種の業務のみを取り組む場合、ここまで一つ一つステップを踏む必要は無いかもしれません。
このくらいにシンプルでも、単純な業務であれば可能です。まずはこのレベルにおいて、初めてRPAの研修を受ける方にどこまでを期待するのか設計する必要があります。
受講者のスキルに合わせたゴール設計
研修のゴールを設定するには、まず社内の人材に一連のRPAの取り組み中で何を任せられるようになりたいか考える必要があります。完全にインハウスでRPA開発を進める場合、まず重要になるのは「最終的に誰に開発をしてもらうか」ということになります。RPAのプログラミングは先述したように、他のシステム開発と比べて比較的取り組みやすいものですが、とはいえ誰でもすぐにできるものではありません。自然、プログラマーとしての向き・不向きが関係します。社内で、自分でVBAをいじってエクセルのマクロを作っているような人は向いており、同じようにRPAも業務改善の延長線上なので取り組み易いかと思います。ただ、最初のPoCの段階ではそれで大丈夫なのですが、規模が大きくなると、サーバー上でRPAを回す話であったり、開発/テスト環境の整備/実業務環境との整合性確認など、細々とした業務が発生します。そのようなステージにいったら、いずれにせよIT部門のサポートは必要になります。
また、このような「開発できる」人材が対象部署では中々見つからない場合もあります。また、該当する方がいたとしても、日々の本業のほうに忙殺されており、この「RPA開発」の役目を担えないケースもあります。そのようなときは、やはり「開発」機能はIT部門のほうで引き取るといったケースが多いのが実情です。
そこで、現場部署の人材に求める事として、次に挙げられるのが「改修」となります。大がかりなシナリオの変更は難しいかもしれませんが、簡単なパラメータ変更であったり、RPAが作業するシステム/Web画面の少しのUI変更なら対応できるレベルです(UiPathで言うとセレクターを取り直す作業です)。簡単な改修であれば現場サイドのRPA推進リーダーが完遂できるようになることで、IT部門側の負担は大きく減りますし、何よりも改修が早く済み、その分その部署がRPAの恩恵に預かれることになります。特に、現場サイドの人材に研修プログラムを施す場合は、この「改修はできる」レベルの人材を如何に育てるかが重要です。彼ら/彼女らが、現場部署に1名ずつでもいれば、その部署のRPA化は非常に早く促進されます。
次に、「改修できる」レベルまで行かないまでも「目利き」ができる人を育てることも重要です。「目利き」とは自身や周囲が日々行っている業務の中でどのあたりがRPAに向いているか判断できる「選球眼」を持つことです。RPAの推進をインハウスで進める場合、専門のコンサルタントがいるわけでは無いですから、RPAの対象となる業務の選出は、必然、現場サイドからになります。その際に、現場サイドにRPAへの理解があり、向いているものそうでいないものの判定ができる方がいると非常に生産的になります。このような方が社内に育っていないと、現場サイドから幾つかRPAのアイデアが出てきたとしても、そもそもRPA化は不可能なものであったり、RPA化できたとしても人間の業務負担はさして減らないものが出て来る恐れがあります。
そのように現場サイドに「目利き」の能力を上げてもらうことは、実はRPAを推進する上で非常に重要なことです。RPAの研修というと簡単に「開発できる」ことを目標としがちですが、この「目利き」をさせるためだけでも現場の従業員が研修を受ける意味はあります。簡易的な研修でも構いませんので、この「目利き」を増やすための研修プログラムの実施は、ぜひ各社で取り組んでいただきたい活動です。
このように、社内の人材にRPAトレーニングを施すときには、まずは各受講者対象のゴール設定を予め想定していく事が重要です。ただ、研修により、各従業員がどの程度までスキルが向上できるのかは、実際に実施してみないとわからない事もあるかと思います。研修の結果、想定していたゴールに行かない場合、つまり想定していたスキルセットをもつ社内人材が確保できなかった場合、インハウスのリソースではなく、コンサルタントやエンジニアといた外部リソースの投入で補填する考えも併せて持つ柔軟性も大事かと思います。
今回はRPAトレーニングについての知見を紹介させていただきましたが、このような話をもっと相談したい方は、リードエグジビジョン ジャパン社主催で2019年5月8日~10日に東京ビッグサイトで開催する「AI・業務自動化 展」に弊社も出展しますので、是非相談の事前予約をしていただければと思います。
今回の展示会では、弊社アーツアンドクラフツがRPAの数々のプロジェクト現場で培った知見を来場者の方に御披露したいと考えています。アーツアンドクラフツでは、金融、不動産や自治体、教育団体、製造業や会計事務所、医療事務など幅広い業界でRPA化の取り組みにチャレンジしています。また、RPA以外にもOCR(AI-OCR含む)や、他の業務ツールと連携した取り組みも行っておりますので、ご興味あるかたは是非、下記のURLにアクセスしていただき、事前の面談申請をしていただければと思います。
アーツアンドクラフツ株式会社
AI・業務自動化 展(5月8日(水)〜5月10日(金)@東京ビッグサイト)
面談受付はコチラ
弊社以外にも数々のRPAやAIの事業者が参加する展示会となっていますので、興味ある方は是非参加をご検討されてはいかがと思います。
2019.04.01
昨年10月に株式会社イデア・レコード(以下イデア・レコード)がマーケティング支援を含む店舗型ビジネス向けの業務支援プラットフォーム「G.A.T.E(ゲート)」の開発およびテスト運営にあたり、株式会社コラボス(以下コラボス)と協力して実証実験を進めると発表がありましたが、ついに実証実験を開始したと発表がありました。
参考記事
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000017143.html
それでは、それぞれの会社の提供するサービスについて見ていきましょう。
“お席トットくんは、飲食店に特化した「クラウド型の予約管理システム」です。予約台帳としての機能はもちろん、予約ステータス管理機能、予約情報の共有、店舗の予約売上、予約獲得件数や各種グルメ媒体の費用対効果がリアルタイムで計測される機能などを備えています。
さらに、Google Maps API™ に対応したAPIの無償提供も開始。位置情報を活用した店舗検索やエリア・路線検索を、簡単に店舗のWEBサイトに組み込んでいただけるようになりました“
ワタミ株式会社(以下ワタミ)は2017年にこのシステムを導入し、かねてからの課題であった予約管理業務が改善され、来店予約の最大化へつながりました。
ワタミは他にもイデア・レコードの提供する飲食店特化型コールセンター「よやくるー」やSEO/MEO等の施策を行う「Popeye」等を展開しており、顧客の予約・購買およびオンラインのWeb行動データ等を蓄積しています。
今回、コラボスが提供するのは「DMP(Data Management Platform)」ですが、本来は以下のようなサービスをメインにしているようです。
“当社は、お客様相談室や製品問い合わせセンター等のコールセンターで利用されるシステムを、企業の皆様が手軽に利用できるよう、クラウドサービスという形態で提供しております。”
このクラウド型というところが重要で、ユーザーは自身で設備を持たずにネットワーク経由でサービスを利用できます。
なので、設備投資やメンテナンスという煩わしいことから解放されるという大きなメリットを得る事ができます。
さらに、このサービスは月額制なので、費用を気にすることなく繁閑に応じて減席や増席を柔軟に変動可能です。
なので、通常よりも費用を安く抑えられます。
上記施策により、現在の導入実績は600拠点だそうです。
このようなコールセンタークラウドサービスのパイオニアだからこそ、運営やデータ集積に関することを活用し、今まで統合することが難しく分析できなかったことを深堀りし、既存顧客の満足度向上だけでなく、新規顧客獲得のためのマーケティングが可能になる事でしょう。
いかがでしたでしょうか?
イデア・レコードは今回の実証実験により「G.A.T.E」を店舗型ビジネス業務支援プラットフォームとして成長させ、各種マーケティング分析など豊富な経験と知識が求められる業務についてのRPA化を目指しているようです。
現在、人材不足の売り手市場の影響か、一部の人材による悪質な行動により、不本意な形で話題をさらっている外食企業ですが、今後、この「G.A.T.E」が普及することにより人材不足解消が解消され、本来の業務に集中することによって、より良いサービスを提供してくれることでしょう。
参考ページ
https://www.collabos.com/about/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000017143.html
2019.03.29
RPAソリューションツールといえば、株式会社エヌ・ティ・ティ・データが提供する国内シェアNo.1の「 WinActor ®」やRPAテクノロジーズ株式会社の提供する「BizRobo!」がありますが、通信キャリアのソフトバンクもその1社で、「SynchRoid(シンクロイド)」というRPAソリューションを法人向けに販売しています。
ソフトバンクのHPでは以下のように紹介されています。
“「SynchRoid(シンクロイド)」は、ソフトウェアロボットが業務を自動化するRPAソリューションです。処理手順を登録するだけで、単純な事務作業や膨大な書類業務などを自動化し、業務の効率化、スピードアップ、コスト削減を実現します。”
従来のRPA開発画面は専門的なスキルが必要なものが多かったのですが、SynchRoidは開発画面をGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)で提供することによって、直感的な操作が可能となりました。 それによって、ITの知識が少ない人でも簡単にロボット開発などの幅広い業務に利用できるようになっています。 さらに月額600,000円の「ベーシックパック」の他に年額900,000円の「ライトパック」という2種類のコースが用意されています。
導入を検討されている方は試しにライトパックを使ってみてはいかがでしょうか。
ピップエレキバンなどで知られるフジモトHD株式会社では、人手不足により負担がかかっていた各部署の単純作業を自動化することによって、わずか4ヶ月で月間約220時間の業務時間を削減しました。
住宅設備機器大手の株式会社LIXILは建設大手5社が合併したことによって、システムの統合がIT部門の優先事項となり、現場毎のシステム改善が十分に出来ていませんでした。そこで、業務部門主導でRPAを活用できる運営体制を整えたことで、現場社員自ら必要なロボットを開発できるようになりました。 結果、導入1年以内で250名の社内RPA開発者を育成し、250種類のロボットが開発されました。
施設管理業務を請け負う株式会社日本ファシリティは、管理施設が増えるたびに事務処理が増加して、報告書の登録など社員の業務負荷が高まっていました。 登録作業は人が行うと1回約2〜3分かかることもあり、その作業は年間で約6万件発生していました。 そこで、事務処理を自動化することによって1回の登録は20秒程度になり、2,000時間以上の業務時間削減に成功しました。
いかかでしたでしょうか。ライトプランや直感的な操作性など導入しやすい「SynchRoid」はこれからもっと普及していくのではないでしょうか。
参照記事
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1903/22/news078.html
https://www.softbank.jp/biz/other/rpa/menu/
https://www.softbank.jp/biz/case/
2019.03.28
こんにちは、今回は、ある学校法人で成果が出たUiPathの活用事例についてご説明させていただきます。
学校法人RPA化対象の業務は、「財務フロントシステム登録業務」でした。
実のところ、今回紹介するRPA化の事例は、もともとRPAありきでの業務改善ではございませんでした。当初は、財務部にて各部門の経費を一元管理するための、専用のフロントシステム開発のプロジェクトでした。ですが、フロントシステムの評価・検証を進めていく中で、以下の問題が発生することが判明いたしました。
これらの問題についてフォーカスしていきます。
財務フロントシステムへの登録業務を行うのは人間で想定していました。もし人間が入力するとなると、業務フロー上、確認も含めると一件入力するのに10分程度かかることが判明しました。経理処理の業務で一件にこれだけの時間をかけることは業務時間内に行うことは難しく、現場から不満の声が上がっていました。
また、実際に入力する担当者の多くは派遣社員です。現場で入力方法との教育を行うとなると、教育するための時間が発生してしまいます。現場で教育のための時間を捻出することが難しく、問題となっていました。
どのような業務でも起こりうるのですが、人間が介在する業務にはミスがつきものです。お金を扱う業務であるため、入力するときにミスが起こらないようにすることは明白です。この業務を実際に現場で運用しようとした場合に、いくらマニュアルを作っても、部門間で業務の質が変わってきてしまいます。最悪、入力業務が属人化してしまい、担当者がいないと把握しきれない、という部門が出てきてしまうでしょう。もしそのような運用になってしまった場合、決まった人がいないと入力自体ができない、もしできる人がいなくなってしまった場合の引継ぎ等で他の業務が滞ってしまう可能性があります。
また、以上の問題は、間接的ではありますが、残業の発生や人件費コスト増になる要因であるということです。これらの問題に対応するだけでも現場の作業効率が大きく落ちてしまい、大きな負担となってしまいます。
上記の理由から、専用のフロントシステムを導入することによるメリットが薄くなっていたところ、RPAの技術を導入することで改善できるということとなり、RPAの検証をいたしました。複数あるRPAツールの検証結果から、UiPathが最もRPAシステムとして優れているとし、UiPathでRPAの開発を進めていくこととなりました。
今回の業務RPA化対象となった、業務フローについてのおおまかな流れは以下のとおりです。
これらのフローについて説明いたします。
まず、事務員の教育という部分で、新たにSAPの使用方法を覚えていただくのでなく、普段から業務で使用する機会の多い、Excelを使用して伝票を作成することといたしました。
伝票用のExcelはフォーマットを統一し、入力内容の簡易的なチェックもできるプログラムを組み込んでおります。ユーザーはこのExcel伝票に必要事項を入力していきます。完成したら、最後に印刷行うことでDB管理のための管理番号を付与しExcel伝票の名称も管理番号をもとにした名称に書き換わります。
作成されたExcel伝票を、各部門で指定されたフォルダに投入します。
投入する先は部門毎に予めフォルダ分割されていて、ユーザーは決まったフォルダにExcelの伝票を投入して作業完了となります。
ここからロボットの動作となります。
あらかじめ、ロボットの設定について説明いたしますと、ロボットはBORで動作するタイプで、orchestrator上で事前に起動時間を設定しております。
ロボットが起動すると、まず各部門のフォルダ見に行って、Excel伝票が存在するかどうかを確認します。次に、Excel伝票を見つけた場合に、その伝票を読み取る工程(4にあたります)の処理を行います。もしフォルダにExcel伝票がなかったばあいは、次のフォルダに移動します。この動作は、すべてのフォルダを確認し終わるまで続きます。
複数のロボットが同時に実行しているため、ロボットが同じフォルダを見に行って処理してしまうと、二重登録となってしまいます。その場合、別のロボットが処理中のフォルダを取得してしまわないように、排他制御をかけています。
取得したフォルダの中のファイルを、一件ずつ処理していきます。必要情報を読み取りSAPのブラウザ上に転記していきます。転記が終了したら登録し、次のファイルに進みます。
以上が業務フローです。このうち、3~5の処理をロボットで行うのですが、同様の動作を行うロボットを複数台配置し、ロボットに不具合があった場合に業務が停滞しないようにしています。
また、ロボットが、間違った情報をフロントシステムに入力してしまうことを防ぐために、以下の対策を行っております。
複数の工程で対策を講じることより、間違った情報が入力されることがないように細心の注意を払って運用しております。
運用管理については、担当者が常に一人常駐しており、ロボットが処理している途中にエラーが発生した際に、人力での対応を行っております。管理担当者については一人いれば十分で、難しい対応になる場合には担当の上長にエスカレーションして対応する業務フローが構築されています。
この業務のRPA化の成果としては、半年間運用した結果は、件数換算で約10万件、処理時間換算で約20,000時間の業務効率化となりました。また、実際に人間の手で行った場合の入力ミス等による訂正や、ダブルチェックの時間を考慮していないため、実際よりも多くの効果が出ていると考えられます。このRPA化で成果が出たため、今後も他の業務のRPA化を進めてくこととなりました。
当初はRPA化とは関係のないところでのプロジェクトでありましたが、実際に現場側の負担が検証されていたので、RPA化による効果が明確であったことが、成果の要因であると考えられます。
今年に入り、実際にRPA化した事例が数多く展開されてきています。RPAによる業務効率化の波は、今後もますます盛り上がっていくでしょう。
2019.03.27
この数年間、嫌でも「RPA」という言葉が耳にはいるでしょう。年間XX万時間作成に成功などのニュースが相次ぐ。RPAは現在日本の「人手不足問題」や「働き方改革」の対策にとても相性が良いとこと以外、「開発が簡単」、「導入するハードルが低い」、「ゼロ経験でもすぐ開発できる」というイメージもあるため、多くの企業が導入しているか、しようとしている。では、RPAの開発は本当にとても「簡単」でしょうか。多くの企業の中、「現場開発」、すなわち現場の従業員が直接開発するという導入方法を選んでいる企業もたくさんあるが、すべてうまくできたでしょうか。今回はいくつかの事例を紹介しながら、現場直接開発よくある問題を説明する。
RPA開発する前に、欠かせないのはRPAの仕様設計、あるいは業務フローの設計だ。つまり、業務を選定し、この業務をいかにRPA化すること。当然、現場の従業員は業務の流れや細かい作法などに一番詳しいので、普通に考えれば、仕様の設計にはとても向いているでしょう。もちろんこれも正しいことだが、必ずしもそうとは限らない。
ECサイト運用企業のA社は現場スタッフの開発とプロのエンジニアによる集中開発両方を展開している。当初の狙いとしては、現場が身近にある比較的に簡単な業務を開発し、プロのエンジニアはより複雑なものを開発することだった。現場開発案件中で、とても典型的なものがあった。業務の内容を簡単に説明すると、毎日(平日)対象顧客分のクーポンを作成し、配信を行うということで、流れは下記のようになる:
この業務の作業内容は一見シンプルなので、開発も簡単ではないかと思い、現場スタッフがこの流れを洗い出し、自らRPAの設計を行った。また、この業務は現状手作業により平日のみ行っているが、土日や連休分の業務は休み明けにまとめて作業している。本来なら休日問わず、毎日作業するのが好ましいので、「RPAならできるのでは?」と思って、現在のフローを変えて、RPAによる毎日実行というフローに変えた。
このように、現場のスタッフがすぐ開発着手にした。業務に詳しいので、開発仕様などにも柔軟に対応できた。例えば、今までは3日~5日分先配信分のクーポンを申請していたが、RPAは毎日稼働できると思い、毎日の朝に当時配信分を作成することにした。理由としては、3~5日分先のものを申請したら、作成と配信の日付が異なるので、RPAが開発や運用しにくいと思った。
ところが、いざ開発完了し、検証実験にはいると、トラブルが発生した。ある土曜日にRPAが稼働しなかったので、月曜日に来たら、スタッフが慌てて手作業で土曜日分のクーポン作成しようとした。しかし、過去分のクーポンを作成する前例がないので、クーポン発行システムに問い合わせて、とても手間をかけて、ようやく作成できて、追加配信を行った。そして、現場のスタッフたちは当初リカバリーについて認識不足のことに気づいた。平日はスタッフがいるので大丈夫だが、RPAの動作は100%の保証がない以上、万が一休みの日にとまった場合今までよりかなり複雑なやり方でリカバリーしないといけなくなる。そして現場スタッフが慌てて集中開発を担当しているエンジニアチームに相談にした。エンジニアチームはリカバリーの難易度を考慮した上の対策は簡単で、今までと全く同じロジックで、休日配信せず、平日のみ行うことで開発し直した。これにより、リカバリーの手順や難易度は今まで通りで、過去分のクーポンを作成する必要ないため、大きく負担をかけずに済んだ。
一見簡単なことだが、現場スタッフの開発経験が足りないため、いかに実現することのみを考えて、リカバリーの難易度などを考慮しなかった。実は現場で開発する前に、最初に上がった意見は今までと同じように休日RPA稼働しないようにしたかったが、日付の設定や実行項目特定などの部分に開発困難だと感じて、毎日稼働を選んだ。結果、一度開発したものが実装できず、開発し直しとなってしまった。
同じA社の別部署の現場スタッフがRPA開発にチャレンジをした。業務の内容は非常に簡単で、毎日特定のシステムにアクセスをし、そこから指定のパラメータを設定した上で、CSVファイルをダウンロードして、指定の共有フォルダに保存する。まさにRPAが最も得意な部分だといえるでしょう。
RPA化がスムーズに進められるよう、現場スタッフが工夫をして、下記の「指示書」(イメージを作成した:
作業日付 |
作業時間 |
格納先Path |
メール送信先 |
URL |
パラメータ1 |
パラメータ2 |
パラメータ3 |
03月10日 |
10:00 |
XX |
@ |
http |
XX |
XX |
XX |
03月10日 |
10:00 |
XX |
@ |
http |
XX |
XX |
XX |
03月11日 |
14:00 |
XX |
@ |
http |
XX |
XX |
XX |
「指示書」はExcelファイルとなり、作業に必要な情報は全て格納されている。RPAは実行時「指示書」を読み取り、内容を判断した上で作業を行う。しかし、この業務がダウンロードするCSVファイルには時効があるため、必ず規定時間にダウンロードしないといけない。多少のずれは許されるが、例えば10時ダウンロードする予定のファイルは14時にダウンロードすると意味がなくなる。また、週単位で「指示書」が作成されるため、同じファイルの中にある各行のデータの実行予定日も異なる。例として、3月10日ダウンロードするものもあれば、11日ダウンロードするものもある。
この状況に基づいて、現場スタッフが設計したロボットはまず毎日実行し、その後日付は当日かと判断する、その後また作業時間を判断する。この二つの情報に満たしている場合はダウロードを実行するが、それ以外の場合はスキップして、次の行を見るこのように繰り返す。ロジック図は下記のようになる:
とても分かりやすくてシンプルな設計になっていますので、開発もうまくできた。実装するある問題が生じた。
このロボットは作業時間の問題で、毎日複数回実行する必要がある。指示書は1週間分で1000行から2000行程度存在する。量がとても多く実行するには時間が必要だが、問題は10:00実行する予定のものは12:00までも終わらなく、規定時間を大幅に超過したため、意味なくなる。そして、またエンジニアチームに助けを求めた。
このロボットが一番時間を無駄にしているのは作業日付と作業時間の判断の部分にある。すでに気づいたと思うが、現場スタッフが作ったロジックだと、仮に指示書に1000行あって、作業日付と作業時間の条件に満たしているものは10行だけだとしても、1000行を全部チェックすることになる。とても効率よりとは言えない。そして、エンジニアチームが指示書を読み取る際に条件付けで読み取る機能を付けた。要するに、RPA稼働する時点で、日付と時間が処理対象になるもののみを指示書から読み取ることだ。処理対象が10行の場合は10行のみを処理するため、効率は大幅によくなる。
もちろんこの機能はA社がつかっているRPAソフトには標準装備されているわけではないが、経験のある開発者なら作れる。現場スタッフは経験が足りなく、効率よくないロボットを設計することになってしまった。
今回紹介した二つの案件は一見大したことがないかもしれないが、現場スタッフが開発時実際起きていることだった。業務に詳しい分、RPA開発経験が足りない場合似たようなことが起き兼ねない。現場開発する際にきちんと経験豊富な開発者にサポーターしてもらったほうがよいでしょう。
2019.03.22
予算や事業計画を作成する際に、損益計算書を作成し利益計画を立てますが、貸借対照表やキャッシュフロー計算書の予測表を作成することはあまりないと思います。損益計算書と比べ、より会計的な知識や、各事業部の動きを反映させる必要があるため作成されることが少ないようです。しかし利益計画のみでは、将来の黒字倒産や財務バランスの健全性などについて把握することはできません。ここでは、キャッシュフロー計算書を作成するための予測貸借対照表の作成方法を解説します。
貸借対照表とはBalance Sheet(略称:B/S)と呼ばれ、一定時点(月末や決算日など)の企業の財産及び債務などのストック情報がわかり、財務状況を把握することができる財務諸表の中の一つです。大きく左右に分かれ、さらに右側が2つのパートに分かれる構造になっています。
会社が事業資金・財産をどうやって集めて、どのような形で保有をしているかを表しています。事業資金・財産をどうやって集めたかを、負債・純資産で表し、どのような形で保有しているかを資産で表します。よって、「資産=負債+純資産」の関係が成り立っています。
損益計算書は利益の大きさで企業の経営状況を表しています。貸借対照表は「どんなふうに儲けているか」という利益の「質」を表しています。貸借対照表は経営の健全性を示す財務諸表と言えます。
資産とは、会社が集めたお金をどのような状態で持っているのかを表すもので、これらの資産は1年以内に現金化することが出来る「流動資産」と長期にわたり会社が保有することになる「固定資産」とに分けられています。
貸借対照表の資産は、原則として現金化しやすいものから順番に並んでいますので、上の段に「流動資産」、下の段に「固定資産」が表示されています。
負債とは、返さなければならない会社のお金を表すもので、他人資本とも呼ばれます。負債も資産と同じように、1年以内に返さなければいけない「流動負債」と1年を超えて返さなければいけない「固定負債」とに分けられています。
貸借対照表の負債は、原則として返済、支払期日の早い順番に並んでいますので、上の段に「流動負債」、下の段に「固定負債」が表示されています。
純資産とは株主が会社に入れてくれた資金や利益の積み上げを表すもので、負債と違い返す必要のないお金で、自己資本とも言います。純資産がマイナスであれば債務超過の状態であり、倒産のリスクが高いと判断されます。
純資産は株主のお金が関係してくる「株主資本」とそれ以外の「株主資本以外」の2つに分けられます。
貸借対照表は上記図1の通り、大きく左右に分かれた形をしていますが、月次の予測貸借対照表を作成する上では、勘定科目はすべて1列に並べた方が作業効率は上がります。(図2 予測貸借対照表のフォーム)
勘定科目名は直近の決算書や試算表を基に必要な勘定科目を配置します。
また、表の一番下にはバランスチェックの項目を設けることにより、貸借差額が0になっているかの確認が容易になります。バランスチェックの計算式は「=IF(資産合計のセル=負債純資産合計のセル,”OK”,資産合計のセル△負債純資産合計のセル)」のように簡単な計算式で問題ないです。
期首から作成を始める場合は、直近決算の貸借対照表の金額をエクセルフォームの繰越列に入力します。期中から作成を始める場合は、直近月の試算表の貸借対照表の金額をエクセルフォームの繰越列に入力します。
現金・普通預金勘定の予測残高は以下の計算式で求めます。
「現金・普通預金=負債純資産合計△現金・普通預金以外の資産勘定の合計」
売掛金、受取手形勘定の予測残高は以下の計算式で求めます。
「売掛金、受取手形=PL計画の売上高×売上債権回転率」
※売上債権回転率=売上高÷(売掛金+受取手形)
売上債権回転率は、過去のPL月次推移表などから計算します。事業がいくつかある場合は、セグメント別の回転率を求めた上で季節変動などを加味し、PL計画の売上高に乗じていきます。
棚卸資産勘定(商品、貯蔵品など)の予測残高は以下の計算式で求めます。
「棚卸資産=PL計画の売上原価×棚卸資産回転率」
※棚卸資産回転率=売上原価÷棚卸資産
棚卸資産回転率は、過去のPL月次推移表などから計算します。棚卸資産の種類がいくつかある場合は、種類別に回転率を求めた上で季節変動などを加味し、PL計画の売上原価に乗じていきます。
前払費用は、前払費用の項目ごと(補助科目)に計算します。
予測貸借対照表の「補助科目」欄に償却すべき項目を記載し、「項目1」欄には毎月の償却額を入力します。
各月の計算方法は、「前月の残高△項目1」となります。家賃は前払い契約の場合が多いので、その場合は毎月定額が計上されることになります。
前払費用は、別途エクセルなどで残高管理している場合もあると思いますので、その場合は、合計行に、そのエクセルから転記すればいいと思います。
期中で何か新たに前払費用が発生することも多いため、PL計画との整合性がとれるように補助科目や予測額を計上していきます。
仮払消費税は、PL計画や設備投資計画から計算します。PL計画の一番下の行などに以下計算式を入力します。
「=課税対象セル*(8/100)」
※税抜き経理で消費税率8%の場合
また、有形固定資産を取得する場合には課税仕入れが発生する可能性もありますので、設備投資計画からも仮払消費税額を拾います。
さらに、前期の消費税申告の状況によっては中間納付消費税が発生する可能性もありますので、その金額も加味する必要があります。中間納付消費税の金額がわからない場合は顧問税理士に確認してみてください。仮払法人税等についても同様です。
その他の流動資産(未収入金、立替金、仮払金など)については、過去の実績値から自社事業の特性や季節性を把握し、金額計上します。例えば、年末調整の還付未済金(立替金や未収入金などで仕訳処理されることが多いです)などは毎期年末調整終わりに発生しますので、その時期に計上していくことになります。
有形固定資産・無形固定資産の表示については、間接法を採用した方が残高推移は確認し易くなります。日々の経理は直接法でも結構ですが、予測貸借対照表作成上は間接法で表示することをお勧めします。
計上額は、設備投資計画を基に各月に予測額を計上します。減価償却累計額の増加額は、PLの減価償却費と同額になるように予測額を計上します。
投資その他資産(敷金、保険積立金など)は、オフィス移転計画があるか、どのような保険契約があるかなどの契約関係によって、予測額を計上していくことになります。オフィス賃借時の保証金(敷金)の償却額の経理処理も影響していきますので、賃貸借契約書や保険契約書などを改めて確認しながら進めることが重要です。
繰延資産(株式交付費、開発費など)についても、資本政策や投資計画を基に各月の予測額を計上します。
今回は資産科目の計上方法を中心に解説しました。次回は負債科目について予測額の計上方法を解説しようと思います。
2019.03.16
本記事では、オートメーションラボ株式会社が去年12月上旬にローンチリリースした請求書の会計処理の自動化を可能にしたサービス『sweeep』について取り上げていきたいと思います。今回は、代表の村山 毅さんにインタビューさせていただきました。
オートメーションラボ株式会社 CEO 村山 毅 様
まず、今回『sweeep』を開発しリリースしたオートメーションラボについて紹介したいと思います。CEO村山 毅さんは、オートメーションラボ株式会社を設立前は、バックオフィスを対象としたコンサルティングやシステム開発を行う会計系コンサルティングファームにて10年以上従事していました。そこでの経験から、バックオフィスの非効率さを改善したく、バックオフィスにおける自動化のコンサルティングを主な業務内容とする当社を設立しました。ミッションとして、“バックオフィス革命”を掲げ、RPAを使った業務コンサルティングを行っています。
オートメーションラボのプロダクトである「sweeep」について詳しく紹介する前に、経理部門における課題について述べていきたいと思います。経理業務の自動化を進めるなかの課題として挙げられるものの中の一つに、紙帳票の取り扱いが挙げられます。具体的に言うと、経費申請の領収書であったり、取引先からの請求書処理などが挙げられます。もちろん、本来請求書発行段階からデータ化したものを頂ければ問題はないですが、取引先は取引先の論理があり、請求書発行段階からのデータ化は不可能でした。つまり、経理の処理として、債務の計上を支払いにつなげなければいけませんが、それが紙媒体であるがゆえに経理部門に非常に負荷をかけているという課題が発生していました。この請求書の課題を解決するのが『sweeep』になるのです。
オートメーションラボが開発した『sweeep』は、請求書の会計処理を自動化するAI技術を搭載しており、請求書をスキャンすれば自動でOCR(Optical Character Recognition/Reader・光学的文字認識)によって情報を読み取り、仕訳データへ変換することができます。科目変換、会計データ作成、会計システム登録などの会計処理を行うことが可能です。スピードも100枚の請求書を処理するのにかかる所要時間はたったの3分間になります。
本プロダクトの強みとして、どのようなフォーマットの請求書でもAI技術によって読み取ることが可能です。従来のRPAのOCRバンドル機能では、ものによって文字化けが起こり得るため精度に課題がありました。さらに、企業によって請求書は異なるフォーマットを採用しているため、非定型の請求書をRPAが読み取っても必要なデータを抽出することは不可能でした。しかし、本プロダクトでは、従来から使われているアナログの各社各様の請求書を自動データ化することができます。
また、従来のOCRツールでは必須であり、尚且つ設定に長時間有していた帳票定義が短時間、尚且つ簡単になりました。本プロダクトを使用することで、読み込んだ請求書から勘定科目の情報を一度入力することによって完了できます。以下の画像のように、取り込んだ請求書を見ながら作業ができ、入力画面も決して難しいものではありません。さらに、一度入力してしまえば、以降は学習機能によって自動で行ってくれるので余計な手作業を必要としないのは本プロダクトの強みの1つでもあります。今まで経理業務と何ら変わりはないため、担当者も特に新しい技術を習得しなくとも対応可能になります。さらに、経理に馴染みのない人でも行えるようになりました。
このように、帳票定義が一度勘定科目を入力するのみで済む背景には、AI技術があります。AIがレイアウト定義をせずに請求書内の必要となる情報を自動判別できるようにするため、テキスト認識と標準的な請求書の配置に則った座標を組み合わせて学習させました。そうすることで、従来は必要であった帳票定義が短時間で容易に行えるようになりました。
さらに、本サービスは請求書に特化している強みとして、会計システムのフォーマットに変換することが可能です。汎用性に富んだ帳票を読み取れるサービスを展開する競合他社のように請求書を読み取りテキスト化までは同じですが、本サービスでは経理業務として必要となる勘定科目や課税・非課税などの会計に関わる情報の付加まで行います。他社の読み取りサービスを利用すれば、仕訳データへ変換するためのシステムを別途利用しなければなりません。これまで2つ以上のシステムで成しえていたことが、本サービスのみで請求書を読み取り仕訳データに変換することができます。
もう一つの特徴として、クラウドでサービスを提供しています。そのため、ソフトのインストールや環境設定、また初期費用も低コストに抑えることができます。クラウドということから、請求書をクラウド上にアップロードすることに懸念を抱く人は少なからずいるかと思います。しかし、セキュリティーには万全の対策を取っています。最近では、クラウドもセキュリティー面での信頼性は評価が確立されつつあります。例えば、売上1兆円以上を超える規模の企業でさえ、SaaS(Software as a Service)と呼ばれる必要な機能をカスタマイズして利用できるクラウド上で提供されるソフトウェアを利用しているようになってきています。さらに、個人情報や機密情報を扱う人事系の業務でもクラウドの採用が進んできています。現に、本プロダクトは、人材系、不動産、IT系や会計事務所などでも導入されている実績を持っているようです。
このように、非定型フォーマットの請求書に対応し、会計データと連携でき、クラウドで提供されているサービスは、国内では本プロダクトでしか体験できないサービスになっています。例えば、それは月次決算のリードタイムの短縮に繋がります。経理の月締めの業務は、月初の営業日に集まってきた請求書を数日で処理しなければなりません。請求書を届くまでは手の施しようがなく、請求書の到着が遅れたら成す術もなく決算の締めが遅れてしまいます。しかし、sweeepなら100枚の請求書を3分で処理してしまうため、決算早期化が実現可能になります。他社製品と処理スピードで比較してみても、本サービスでは1枚読み込むのに1.5秒以下、なおかつ帳票定義の簡略化、自動で会計システムへ取り込めるデータへ変換などスピード面の強さも持ち合わせています。また使用料も月額10万円からスタートなのも企業にとって嬉しいポイントなのではないでしょうか。
このオートメーションラボのサービスは「請求書」というカテゴリーに特化していますが、その市場規模はどれくらいでしょうか。日本国内で流通しているといわれる請求書の数は、月間5億枚。年間だと、単純計算でも60億枚にのぼります。年間の人件費コストは3兆円。請求書だけにフォーカスしても比較的大きい市場があります。さらに、請求書に関連する作業は、
など多岐にわたります。また、これが紙ベースだと、ファイリングや探し出すのに手間暇がかかりますが、デジタルだったらこのような作業時間を削減することが可能です。さらに、どの企業においても請求書を使っているので、ターゲットも全ての企業が当てはまります。このように、マーケットも大きく、ターゲットも業界関係なしの領収書を扱うすべての企業となっています。そのため、これからにも益々期待ができそうです。
今後は、SaaSのサービスやSAPなど基幹システムとの連携強化を視野に入れているそうです。さらに、あるRPAベンダーと協働でロボットを作る計画も動き出しています。
最後になりますが、このような請求書に特化したAI機能を搭載した『sweeep』の登場と普及によって、企業の経理部門の働き方に変化が起きるのもそう遠くはないのではないでしょうか。
参考
https://rpahack.com/sweeep?fbclid=IwAR3jdMRO2goqOHMpoRwZ4XLcdAxLWPybSXzIrqQR5eMVcejJpngnKMWxotg
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000040079.html
https://sweeep.ai/
https://marvin.news/5788
2019.03.15
RPA元年といわれた2016年から早3年。金融機関における業務効率化で高い実績を挙げたのを皮切りに、多くの企業で導入が進み、話題に事欠かないRPAテクノロジー。
一定の作業ルールを基に定型作業を自動で繰り返す「Class1」に対し、非定型業務の自動化を可能にする「Class2」の実現も、近年期待が高まってきています。
反面、多くの企業でRPAの導入が進む一方で、当初ロボットによる置き換えを期待されていた「自動化可能な定型業務」のうち、約20%しか自動化が達成されていないといわれる現状があります。
原因は、定型業務と言いながらも、部分的に人が介在するなどして作業ルールに収まりきらない「例外処理」が多く発生しているためであり、それによりRPAによる働き方改革、デジタルレーバーの実現を阻害されているのです。
こうした「例外処理」をRPA×AIの組み合わせで対応できるようにするのが、「Class2」での自動化。近頃は、このような高度化したRPAソリューション、いわば「自動化対象業務の拡大」が大きなトレンドとなっています。
「単純作業の業務自動化」を第一段階(Class1)とすると、AIの搭載はそのNEXT STEP、「経験・ノウハウに依存する業務の自動化」です。
ディープラーニングや自然言語・画像・音声処理を搭載することで、構造化されていないデータからの情報取得や、蓄積された情報からルールを作成した上での処理業務、はたまたナレッジをベースとした問い合わせ対応など、自動化領域がぐんと広がることになります。
一般的なRPAツールは、頭脳に当たるAI機能を本来有していません。
RPAツールベンダーの中には、積極的にAI機能を取り込んで製品をリリースしているところもありますが、すべての要件をカバーできるものではないため、自動化対象業務によって柔軟に組み合わせが可能なRPAツールとその業務にあったAI技法を選択することが必要です。
以下、自動化対象業務とそれに見合ったAI技法の組み合わせの例です。
より単純な作業、ルール化可能な業務については、ルールベースAIを用いて自動化が可能です。
ルールベースAIとは、判断を要する処理に際し、ある条件に対して行う処理を予め登録しておき、ロボットに対応させるものです。プログラムとしては、「If~than~」といった基本的なIf文形式のものが該当します。
If文やSwitch文を使用して場合に応じた処理方法を記述しておけば、状況に応じた判断を指定しておくことが可能に。加えてこうした構文に「else」を用いることで、条件に当てはまらない場合のアクションを選択することができるようになっています。
設定するルールの数が、Excelでテーブル化できるレベルであれば、マクロやVBAプログラムで簡単に作成が可能。こうした処理をRPAで実行する際は、RPAツールにキーボード・マウス操作のみを設定し、ルールのコーディングについてはExcel等の表計算ソフトに記述し参照するようにすれば、多くの判断を要するデータ処理が可能になります。
推論エンジンは、ルールベースを発展させた知識ベースのインプットを基にワーキングメモリを利用して推論を可能にしたものです。
あらかじめ可能な限り知識ベースにルール群を登録し、一方でワーキングメモリを独立させて、課題に関するファクトデータや特徴を表すデータを格納しておきます。こうすることで、知識ベースのルール群とワーキングメモリに蓄積された情報を推論エンジンが照合し、回答を吐き出すシステムです。
前述したルールベースAIのほぼ断定に近い回答から、推論エンジンではやや抽象的な内容の判断も可能になるのが特徴であり、事象に対する判断としてある種曖昧性・不確定要素を持たせることで、より人間らしい動き・思考を実現しています。
これにより、断定しにくい判断がつきまとう業務・処理についても自動化できる可能性が広がりました。
蓄積された知識を基に判断を要する業務は、最新のデータを常時リアルタイムで追跡・追加し、それらを判断材料としなければならないため、機械学習を用いることがあります。
一口に機械学習といっても、それは特定のプログラム/アルゴリズムを指すわけではなく、様々な技法があります。
たとえば、対象範囲の中で似ている性質の集合データを取り出す手法である「クラスタリング」。
Try & Errorを通じて「現時点で価値を最大化できる行動」を学習する「強化学習」。
さらに、最近画像認識やデータマイニングに用いられる「ニュートラルネットワーク」。
「ニュートラルネットワーク」は、その名の通り神経伝達の仕組みを倣った手法で、学習によりデータの相関性(シナプスの結合強度)を変化させ、問題解決能力を持たせています。それにより、多次元量のデータ(画像や統計など)を対象にした問題に対し、比較的軽い計算量で解を得られる特徴があります。
膨大なデータ(たとえば大規模チェーン各店の購買データ、ユーザーの移動データ、IoTの通信データなど)を学習・処理させるには、コンピュータ自体が自律的に処理をしなければなりません。
よく機械学習とディープラーニングが一緒くたに語られてしまうことがありますが、そもそも機械学習の多くは、いわゆる「教師あり学習」という人間が与えていたデータ処理の指示やパラメータによるアルゴリズムの調整などを必要とします。
つまり、データを処理させようとすると、まずコンピュータにデータ分類させるべく、それぞれの特徴の指示を必要としているのです。
その点、ディープラーニングは、前述した「ニュートラルネットワーク」(教師なし学習)を多層化して学習し、コンピュータ自身が特徴となるデータ・要素を抽出できるようになっています。これが自律型のAIであり、自動運転や音声検索など、ヒトの能力に依存していた画像認識や音声認識を必要とするフィールドで活躍する部分です。
本来、自己学習=自律を可能にするのに、コンピュータの膨大な学習時間や、処理のためのコストを必要としていましたが、コンピュータの処理能力の向上によって、近年実用化が積極的に進められています。
ディープラーニングの台頭は、ビッグデータ活用の存在感の高まりを意味し、各企業で従来活かしきれなかったデータを有効活用できる期待が集まっています。
RPAは、定型作業における自動化で、ヒトに代替する労働力(あくまで作業補完)として活用されてきました。そこに非定型作業におけるAIを掛け合わせることで、より高度な知的処理を可能にします。
特に、ビッグデータの分析・活用は、2020年以降も重要なキーワードになり、どの企業にもその実践が求められてくるでしょう。
ヒトがよりクリエイティビティの高い業務にシフトできること、或いは働き方改革、業務負担軽減で利用されることの多いRPAのテクノロジーですが、AIを組み合わせることで、事業機会の創出や新しい切り口によるマーケティングを可能にし、直接的に企業収益増大に貢献することも可能です。
これからRPAの第一歩を踏み出す際は、将来的に対象範囲の拡大を見越して、柔軟性の高い導入支援企業、RPAツールを選択していくのが望ましいでしょう。
2019.03.14
3大メガバンクがそろって新卒採用数を削減するとみられる2019年春。各社とも、急激な収益環境の悪化が顕著になり、各種デジタルソリューションによる業務効率化を推進しています。
こと業務効率化、RPAに熱心に取り組んできた金融機関での採用数削減に、「コンピュータに人間の仕事が奪われる」と考える向きも少なからずあるでしょう。
昨年末、全行あげて定型業務のRPA化を進めていた三井住友銀行は、本格導入が始まった2017年4月からの1年間で、のべ110万時間以上のPC作業の削減に成功したと発表しました。
今回はそんな三井住友銀行のRPAの取り組みと、活用されたプラットフォームUIPathについて述べていきたいと思います。
2019年春の新卒者採用数は、3大メガバンクトータルで2,300人ほどと、前年比3割減まで縮小する見込みです。3社に共通しているのは、事務作業・窓口業務を担う特定職の採用をかなり絞るという点であり、全体の採用数を大きく押し下げているといわれています。
そもそも就活生にとって高額な報酬とその安定性から、かねてから人気の高いシティバンクは、毎年1,000人以上の採用枠を設け、新卒就活市場を長らく牽引してきました。
もともと業界全体として、有名大卒の優秀な人材を早期に抱え込みたがる傾向が顕著であり、かたや膨大な事務手数を伴う業務の性質上、比較的単純な作業に労力を傾け、業務効率化の余白が大きかったのも事実。
そこに、折からのマイナス金利の影響で収益確保が困難になる市場環境と、定型業務を自動化するRPAの台頭が重なったため、業務効率化・省人化への流れにむかうのは、ある種自然であるといえるでしょう。
金融業界を志す学生にとっては、門戸が狭まりあまりいい知らせとは言えないものの、労働市場全体としてみれば、成長力の高いベンチャー、有力中小企業に能力の高い人材が流れ、生産性向上につながるとして期待する声もあります。
三井住友フィナンシャルグループは、17年4月からの3か年中期経営計画で、ITソリューション、デジタル技術を活用した生産性向上・業務効率化や、ペーパーレスを推進した次世代型店舗の展開を大きく掲げていました。
マイナス金利の状況下では、新規事業の拡大は急務。従来の業務を効率化し、新規事業に注力できる体制を構築することを目的に、切り札としてRPAが用いられました。
18年9月時点で、同社が稼働させているソフトウェアロボットの数は、実に約1,000体。
導入から半年でここまで急速に推進できたのは、RPAプロジェクト時に秘訣としてよく云われているように、トップダウン&ボトムアップの両軸で対処できたからだといわれています。
トップマネジメントを中心とする、RPAプロジェクトチームを発足し、本社の1フロアに実に150人もの外部の「専門家たち」を招集。集められたのは、大手コンサルティング会社複数社、RPAツールを提供するUIPath社、AI-OCRソフトを提供する日本IBMなどのITコンサルティング・エンジニアです。
課題解決のために複数社のコンサルタントを取り入れることは、往々にしてあり得ますが、同社では、より効果的な施策を打ち出すこと、チームの定着を図ることを目的として、部門や業務区分での担当分けを行わず、それぞれに「市場営業部門」、「リテール部門」、「ホールセール部門」、「国際部門」に対するRPA活用提案を求めました。
単年の投資対効果のより高い提案を採用し、その施策の実施主体を提案した企業に委ねるというものでした(いうなれば社内コンペ)。各社は競い合ってRPAの活用提案を行ったため、対象業務も多岐に渡ったばかりか、非常に投資効果の高い内容を多く提案が行われたのです。
その上で、RPA導入に連関する情報共有は企業の枠を超えて行われる環境づくりをしたために、同時にプロジェクトメンバーの定着を図ることにも成功しています。
トップダウンで強力にプロジェクトが推進される一方で、ボトムアップ施策も積極的に進められてきました。
その一つに、行員向けのRPA研修制度の整備があります。行員が自らRPAツールを駆使し、ロボットを開発し、各部署で主体的に業務改善が進められることを狙ったものです。
そこで役立てられたのが開発ツール「UIPath」が備える録画機能です。開発画面の「録画」ボタンを押した上で、Webブラウザを操作すると、一連の操作を自動的に記録し、動作手順に役立てる機能です。
行員は、普段何の気なしに体が覚えている操作を、録画機能を使うことで簡単に「業務の見える化」が可能になり、業務を見直すことに繋がりました。こうして各種研修プログラムを重ねた結果、行員自らロボットを開発する土壌が整い、現在までに約500体の開発に成功しています。
もちろん、打ち手がことごとく成功したわけではなく、実際に何度もロボットが停止したり、思うように動かなかったりする事態も発生。しかし、Try&Errorを繰り返し、事態に対処するようプログラムを変更し続けたことで、最適かつ効率的なロボットの活用を可能にしました。
三井住友銀行では、RPAの活用をより拡大し、今後業務量が増加しても、ロボットに割り当て自動処理できるような仕組みを作るとして、20年3月には、累計で300万時間の余裕創出を目指すとしています。
【三井住友銀行がRPAを導入した主な業務】
営業担当がその当日に訪問する顧客について、金融商材の運用レポートを始業前にロボットが作成するように設定。ロボットが各営業担当者のスケジュールから訪問先の情報を収集し、他方で社内管理システムからその顧客が運用する商品にまつわる情報も収集。これらを総合的にひとつにまとめ、顧客に提示するレポートを自動生成できるようになりました。
従来、人力で数十分かかっていた業務を削減し、余った時間でよりよい提案ができるよう内容の検討に使う時間を創出することに成功したとしています。
同社のある部署では、社内管理システムから販売実績データを取得して、1件1件その内容を精査する業務を行っています。その業務は、膨大かつ単純な流れ作業同然であったため、重要な業務ながら担当する行員のモチベーションは下がりやすいものでした。
そこで、ロボットに流れ作業(思考を要さない確認作業・照合の部分)を担わせ、最終的な精査および定型的でない照合の部分を行員が行うようにしています。
加えて、行員はロボットのコントロール・モニタリングを行い、ロボットが適切に処理できているか、どの観点に基づいてデータを精査しているのかを逐次管理させた結果、現場からより効率的なロボットの配置や、業務量の増加による追加ロボット開発の提案が行われるようになり、モチベーションの向上に一役買うことにもなりました。
こと主に地方銀行とのコミュニケーションを担う部署において、人手不足が特に大きな課題でした。それにより、地方の企業が海外進出を図る際に必要な、地方銀行からの海外送金依頼をしぶしぶ断っていた現状があります。年々拡大傾向にある海外送金依頼は、手数料収受が期待できる案件であったにも関わらず、受け入れができない状態が続いていたのです。
この事態の解決に、RPAが取り入れられました。
この業務に必要な技術だったのが「AI-OCR」。行員が複合機でスキャンした海外送金依頼書を、OCRツールに読み取りさせ、データ化する業務をロボットに担わせ、さらにそのデータを勘定システムに転記する行程を組み込みました。通常は、参照する依頼書の書式・構造は統一させなければうまく読み取りができませんが、AI-OCRを活用することで正確性を向上。
こうして、依頼を受け入れられるキャパシティを確保することに成功しています。